表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学教師園崎凛  作者: finalphase
第3章 中学1年生3学期編
123/129

第123話 買い出し!

 私はその日、近くのスーパーマーケットに買い出しに来ていた。


学校にいる時の私は、職務を全うするため100%教員として振舞っているけれど、プライベートでは割とリラックスしている。


もちろん、1人の大人としての自覚を持って、子どもに見られても恥ずかしくない行動を心掛けてはいる。


けれど、少なくとも学校に入る時よりはその意識が低いこともまた事実だ。


今日も寒いから、鍋を作ろうと思う。


私は一人暮らしだから、自分で食べたいものを作ることができるのだ。


白菜 、 玉ねぎ、大根など、必要な野菜を買い物かごに入れる。


その時、後ろから声をかけられた。


「園崎先生じゃないですか。こんなとこで会うなんて奇遇っすねー。」


驚いて振り向くと、桐谷蒼の姿がそこにあった。隣には三宅拓哉の姿もある。


2人は、買い物かごを手にしている。


「桐谷君と、三宅君じゃない。」


「先生は何してるんですか?こんなとこで。」


桐谷が純粋な疑問をぶつける。


「見ての通り買い物だよ。」


「そっか、そうですよね。大人になると買い物も料理も1にんでしなきゃですもんね~。大変だ。」


神妙な面持ちで1人で勝手に納得したように頷く葵。


「桐谷君たちも買い物?」


私の質問に彼は元気よく答えた。


「そうなんすよ。親に頼まれちゃって。全く人使いが荒くて困っちゃいますよね~。」


「そのくらい文句とか言わずにしてやれよ。いつもお世話になってんだからよー。」と拓哉。


2人を見ていると、文化祭での漫才を思い出す。ボケと突っ込みのバランスが取れた非常に良いコンビだった。


突然、葵が真剣な顔になって尋ねた。


「先生よ~、俺もいつかは自立できるのかな~? 料理とか、洗濯とか、仕事とか、全部1人でこなせるか不安だぜ。」


「きっと大丈夫よ。今はまだ難しいかもだけど、少しずつ慣れてけばできるようになるわ。」


「先生、お時間を取ってしまってすみません。俺たちはこの辺で失礼します。」


そう言うと、葵は拓哉と共にレジに並んだ。


私は一安心して、買い物の続きをした。


教え子との遭遇は、予想外の出来事だったが、無事に乗り切れて良かった。対応によっては、学校での私のイメージが崩れてしまいかねないから。こういうところも教員という職業の難しさだと思う。


 買い物を終えて、夕日が沈む美しい街並みの中、葵と拓哉は歩調を合わせていた。


「なぁ、拓哉。園崎先生って、案外凄い人なのかもな。」


葵のその言葉に、拓哉は暫く考え込んでから頷いた。


「ああ。俺もそう思う。立派な大人だよな。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ