第113話 新たなカップル誕生!?
九条慶翔が転校してきてからというもの、水野真理の負担は半減した。
優等生の模範のような存在である彼女は、クラスメイトに世話を焼くことが多かった。
困っている人がいれば助け、喧嘩をしている生徒がいれば仲裁に入り、クラスの誰もがやりたがらない仕事は積極的に引き受けた。そんな真理のことを不憫に思った慶翔は、彼女の学級委員長の仕事を良く手伝うようになっていた。
真理も彼の存在をとてもありがたく思い、2人の距離は次第に近づいていった。
「あの2人最近良い感じだよね。」
「もう付き合ってるのか?」
2人に関する噂は、瞬く間にクラスに広まった。
ある日、慶翔はふとした疑問を真理にぶつけた。
「そう言えばさ、水野さんって、彼氏とかいるの?」
一瞬沈黙する真理。頭脳明晰で、頭の回転が速い彼女が他人の問いかけに対して1秒以上沈黙することは珍しい。
「いないよ。」
彼女は冷静にそう返した。
「へぇ。意外だね。モテそうなのに。」
慶翔は静かにそう言った。
真理は彼の真意を測りかねた。彼が純粋な気持ちでそのようなことを尋ねたのか。それとも、自分のことに興味があるのか。
頭の中で考えを巡らせ、一瞬のうちに結論を出した。
九条慶翔は純粋な気持ちでそのようなことを尋ねたのだと。
だが、表には出さなかったが、彼女自身は慶翔という男子に対して興味を抱きつつあった。
入学当初から人より大人びていた真理は、なかなかクラスメートと波長が合わなかった。クラスメートと一緒にいる時間は、子どもの世話をしているような感覚になることも度々あった。彼らと上手く関係を築くために、彼女自身が波長を合わせることが多かったのである。
でも、転校生の慶翔という男は自然体でも波長が合う。
それに、学級委員長の仕事も良く手伝ってくれる。シンプルに性格や容姿も好みだった。
完全無欠の優等生として周囲から認識され、誰からも頼りにされている真理は以前よりある種の孤独を感じていた。
クラスの学級委員長としてみんなから頼りにされていると思うと、そこそこのプレッシャーになった。弱音を吐ける人がいないということも悩みの1つだった。
要するに、彼女は心のどこかで甘えられる存在を欲っしていたのだ。
慶翔なら、その役割を果たしてくれるように思えた。
いくら学業優秀、スポーツ万能で大人びていると言っても、まだ13歳の中学生であることに変わりはないのだ。
自分の気持ちに気づいた真理は、暫くしてから慶翔に告白した。
その日から、彼らは付き合い始めた。
クラスの中に、新たなお似合いカップルが誕生したのである。