第108話 周辺施設見学!
「園崎先生、凄い楽しそうだよね。子どもみたい。」
秋田健が、斎藤るなに話しかける。
「そうね。いくつになっても好奇心旺盛そう。って、あんたなんで私に話しかけるのよ。秋田県は、秋田にいなさいよね。ここは京都東県なんだから。」
京東県は、私たちが住んでいる県で、海はなく、辺りが山に囲まれている。
「その呼び名は辞めろって言っただろ。同じグループなんだから、話しかけるのは当然だろ?」、健がため息まじりに言葉を返す。
「それもそうね。」、るなは意外にも素直に呟いた。
その会話を聞いて、私はハッとした。
「やばい。展示物を見ることに没入しすぎた。生徒たちは大丈夫かな...」
慌てて辺りを見回すと、館内のルールを守って展示物を見守っている生徒たちの様子が目に入って、心底安心した。
10時50分からは、博物館周辺の周辺文化財施設を見学する。
まずは、杉影古民家。臼田さんから簡単な説明をして頂く。
「この古民家は約150年前に建てられた農家の住宅です。屋根は茅葺きで、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる工夫があります。昔の人の知恵ですね。因みに、茅葺きというのはススキ、ヨシ、ワラなどの植物を束ねて屋根を覆う伝統的な建築工法のことです。」
「囲炉裏は暖を取るだけでなく、煙で虫を寄せ付けない役割も果たしていました。皆さんも座ってみてください。」
私たちは、臼田さんの話を興味深く聞いていた。
全員が囲炉裏に座らせてもらったあとは、篠塚遺跡を実際に見て、更に篠塚城跡・史跡公園 を散策する。
「この城跡は戦国時代のもので、当時の武将結城 忠房が築いたものです。ここから町全体を見渡せるように設計されていました。」
「残っている石垣や堀の跡を見ると、当時の防御の工夫がよくわかります。」
生徒たちと、そして私は真剣に彼の話をメモする。
前半戦が終了して、私は再び安堵の息をついた。
この後は昼食休憩。
少しばかり気を休めることができる。
因みに、生徒たちは弁当を持参しており、当然だが出したゴミは持ち帰りだ。
「ねぇ、ここ凄いね。篠塚城跡って実際に見るとあんな迫力あるんだね。私、大好きなんだよね、結城 忠房。」
日和が捲くし立てるように沙織に話しかける。
「結城 忠房って何した人なの?名前は聞いたことあるけど。」
首を傾げる沙織に、日和は流暢に説明する。
「結城 忠房ってのは、室町末期〜戦国中期に16世紀前半に関東で生きた武将でね、関東管領の権威が失われる中、旧勢力の再結集を主導したのよ。それから、独立志向の豪族たちを説得し、関東東部に"結城同盟"を築いたことが有名ね。」
目を輝かせている日和に、沙織は冷静に突っ込みを入れた。
「あんた、そんなに歴史好きだったんだ。」