第107話 いざ館内へ!
午前9時30分、私たちは博物館に到着した。まずは入館マナーの確認。
私は生徒たちに、丁寧に語り掛ける。
「じゃあ、みんな、今回は博物館で地元のことを学ばせて頂くんだけど、博物館っていうのは多くの人が利用する公共の場所でもあるから、みんなが気持ち良く使えるようにしっかりマナーを守ろうね。まず、当たり前だけど、静かに見学すること。展示物にも触らないでね。それから飲食は禁止、他の人の邪魔をするのはNGね。博物館では、みんなの1人1人の行動が大切になります。ルールを守って、多くのことを学びましょう!」
「はい!」、生徒たちの元気の良い返事を聞いて、私は安堵の息をついた。
入館マナーの説明を、分かりやすく、そして飽きられないようにするのはとても難しいからだ。
普段の授業なら、ジョークを飛ばしたり、余計な雑談をしたりしてその場を盛り上げることができる。
けれど、校外で学習をさせて頂く場合には、手短に説明を済ませなければならない。
そして、ルールの説明と言うのは大概退屈だ。私も学生時代、そのような話をされるのは正直苦痛だった。
けど、生徒たちはいつもと違う環境への緊張感があったこともあり、私の話を真剣に聞いてくれていた。
そして、いよいよ入館だ。
館内に入ってすぐのところで、施設の方の説明を受ける。
「皆さん、ようこそ浜森市立歴史博物館へ。わたくし、館長の臼田と申します。ここでは、この地域の縄文時代から近代までの歴史を学ぶことができます。たとえばこちらに展示している土器は、およそ3000年前のもので、当時の人々の暮らしがわかる貴重な資料です。実際にこの地域で発掘されたものなんですよ。」
「また、江戸時代にはこの地域が宿場町として栄えていた記録も残っています。ここにある古地図や旅人の日記などを見ると、当時の交通や経済の様子が想像できますね...」
館長の臼田さんの話を聞き終えると、いよいよ展示を見学する時間だ。
生徒たちは、5グループに分かれて、展示を見学する。私も生徒たちを見守りながら、館内の展示作品を鑑賞する。
縄文土器、弥生土器、石器や骨角器などの古代・原始時代の道具、武具・刀剣・瓦や領主や藩に関する古文書・絵図などの中世・近世の出土品や資料、学校や郵便局、工場などの昔の写真や道具、そして昔の町並みの模型や、当時使われた日用品・看板などの近現代の資料。
今年で28歳になった私にとっても、これらはとても興味深い。
気が付くと、私はそれらに我を忘れるほど見惚れていた。