第103話 指導案作成!
10月23日、私たちのクラスは浜森市歴史博物館および周辺の文化財施設に校外学習に行く。
校外学習とはその名通り、学校の教室を離れて、博物館、工場、自然、農園など、実際の社会や自然の中で体験を通して学習を深める活動であり、普段の授業では得られない実体験を通じて、知識を習得するだけでなく、協調性や社会性、自立性などを育むことを目的としている。
私は今その指導案を作成しているところだ。
指導案と言うのは、業を行う教師が、授業の目標、内容、方法、評価などを具体的に記した計画書のことであり、業をどのように進めるかを事前に明確にし、効果的な授業を行うために作成されるもので、いわば授業の設計図ともいうことができる。
まずは今回の校外学習のねらいを考える。
地域の歴史や文化に直接触れ、郷土への理解と関心を深めること、公共の場でのマナーや集団行動の大切さを学ぶこと、体験的な学びを通して主体的に考える力を養うこと、という3つを目標とすることにした。
次に、実施日、対象、行き先、移動手段、引率教員、実施時間の欄を埋める。ここはそんなに難しくない。
そして、いよいよ本題。
事前学習、事後学習、評価の観点を考える。
事前学習では地域の歴史について知るために、授業の中で地域史を学び、ワークシートを作成させる。事後学習では、校外学習で学んだことを踏まえ、校外学習新聞を作らせる。
因みに、今回の評価の観点は、積極的に学びに取り組んでいたか(関心・意欲・態度)、学んだことを自分の言葉で説明できているか(思考・判断・表現)、地域の歴史や文化について理解できたか(技能・知識)の3つである。
教員は通常、どの教科であってもこのような指導案を作成する。私は国語の教員だから、いつもは国語の指導案だけを書いているけれど、今回の校外学習は総合的な学習の時間の一環として行うので、担任である私が計画を立てる必要があるのだ。
校外学習において特に気を付けることは、安全管理である。
当日の交通状態や生徒の体調の確認を徹底する。
また、トイレの場所も忘れてはならない。
私は指導案を書き終わると、大きく息を吸って深呼吸をした。
大学の教育学部時代は指導案を書く作業はとても大変だと感じていたけれど、今ではだいぶ慣れてきた。
けれど、指導案の出来が良かったからと言って、授業が上手くいくとは限らない。
寧ろ想定通りにならないことが多いくらいだ。
今度の校外学習は、担任になってから初めてのものだ。
私は無事なくそれが終わるか不安を感じながらも、生徒たちと地域について共に学習できることを心の底から楽しみにしていた。