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中学教師園崎凛  作者: finalphase
第2章 中学1年生2学期編
102/133

第102話 誕生日!

 その日、私はクラスに入る前にいつもと違う雰囲気を感じた。


得体が知れないけれど、妙に実感がある勘。


そう。いつも騒がしい教室の中から、生徒たちの声が聞こえないのだ。


何か問題があったのではないかと心配になりつつ、恐る恐るドアを開ける。


学級運営が順調な時ほど、気が抜けて新たなトラブルが起こりやすくなるのだ。


けれど、今回の私の不安はとても良い意味で裏切られた。


「先生、お誕生日おめでとうございます!」


生徒たちが一斉に言った。


黒板には、チョークでおめでとうという文字とケーキのイラストが描かれている。


クオリティから察するに、かなり時間をかけたことが伺える。


「みんな、ありがとう。」


私は目を潤わせて生徒たちにお礼を言った。


だが、その時1つの疑問が頭の中に浮かんだ。


「何で、生徒たちは私の誕生日知ってたんだろ。私がこのクラスに来た時最初に行った自己紹介は誰も聞いてなかったのに...」


「先生、今なんで私たちが先生の誕生日知ってたのか気になってるでしょ?」と佐紀。


「うん。」


「私たち、いつもふざけてるように見えて先生の話ちゃんと聞いてるんだよ。」、彼女は勝ち誇ったような表情で言った。


「いや、佐紀は先生の誕生日何て覚えてなかったぜ。覚えてたのは真理だし。」、真由が冷静に突っ込みを入れる。


「因みにこの絵は天使エンジェルと梨華が描いたんだぜ。」とまどか。


なるほど確かに、1学期の集団絵画でも彼女たちの絵は際立っていた。


「みんな、本当にありがとう!」


私は改めて教え子たちにお礼を述べた。


「じゃあみんな、前の授業では、説明的文章を『段落ごとに要約』する練習をしたよね。今日は、その続きをしたいと思います。

文章の中にある“筆者の主張”と、それを支える“理由”を見つけることが今日の目標です。じゃあ、教科書の142ページを開いてください...」


その日の授業はいつも以上に気合が入った。


本当は、いつどんな授業でも最高のパフォーマンスをしなければならないのだけれど、毎日そのモチベーションを保つことは案外難しい。


生徒たちからのサプライズは、かなりの励みになるのだ。


「園崎先生、今日凄い張り切ってるね。」


授業中、真由が佐紀に話しかける。


「そうだね。先生、可愛いとこあるよね。結構単純?」


真由が彼女にいたずらっぽく微笑んだ。


「ほら、そこ私語は控える!」


私が注意をすると、彼女たちは明るく「すみませ~ん。」と答えた。


それはとても爽やかなコミュニケーションだった。


色々なことがあったけれど、もう1年3組は、私の自慢の生徒だ。

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