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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
一章 白き聖女編

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58. 仕事終わりの一杯

 ザルツブルグに帰還したリックたちは発生した〝白漂領域〟の報告を済ませた後、同じく依頼の報告と人造人間(ホムンクルス)の受け渡しを済ませたハルトとともに晩飯を食べることになった。


「ぷはぁ! 大将! もう一杯!」

「あいよ」


 竜骨ラーメンの汁を飲み干したカンナはもう一杯を注文した。鼻歌まじりに六杯目を重ねて次のラーメンが来るのを待つ。そんな姿を、ありえねぇ、って顔でハルトは見ていた。


「お前さん。けっこう食うんだな」

「そうかなぁ? 確かに最近食べる量は増えたけど、今日は領域にいたからじゃない?」

「まあ確かに、領域にいるだけでも体力は消耗するからな。にしてはだ」


 やはり納得のいかないハルト。ザルツブルグの一杯のラーメンの量はブルース地方以外では麺大盛り二杯分の量に相当する。それを六杯食べておかわりしている時点でカンナの胃袋は異常であることはわかる。エリナも沈黙を貫いているが、彼女もすでに八杯だ。


「ザルツブルグにいない間、こっちの常識を忘れたのか?」

「忘れてねぇよ。カンナちゃんが霞むくらいの量食ってるお前を見ればな!」


 カンナが霞んで見えるくらいにリックは食べている。今の時点で一九杯だ。


「大将。ネギチャーシュー丼超大盛一つ」

「あいよ」


 リックは締めの一杯を頼んだ。


「見てるだけでお腹いっぱいだ」


 溜息まじりにハルトは頬杖をやめて椅子に寄りかかる。


「そういえば、ハルトはパーティに顔は出したのか?」

「あ? ああ。脱退したぞ。ついさっきな」


 未練がないのか、ハルトはどうでもよさそうに答える。


「わ、わりとあっさりと抜けたな。グランがうるさいぞ」

「知らねぇよ。あんな小物。俺はアイツのことを一度も仲間だと思ったことねェよ」


「酷いことを言うんだな。そんなに俺がいいのか?」

「たりまえだろ。俺はお前と冒険がしたいんだ。あいつらじゃない。だから未練もない」

「ふっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」


 優しく微笑み合うリックとハルト。そんな二人を竜骨ラーメンを食べながら、やりとりを見ていたカンナは「なんだろ。この妙な生あったかさは」と呟いた。


「そういえば、俺がパーティを追放されたことを誰から聞いたんだ?」


「ああ。アメリアちゃんだよ。教えてくれたおかげで二度手間にならずに済んでよかったぜ。知らずにパーティに顔を出してたら簡単には抜けれなかっただろうしな」


「そうなのか。あとでアメリアにはお礼を言わないとな」

「言うのは俺のほうだろ。つーか、さっきしてきた」


 ハルトとはザルツブルグに向かう道中からの付き合いだ。『バラン・ガタッタ』が結成される前から、リックは一時的なパーティを組んで迷宮探索や依頼をこなしていた。程なくして、同時期に知り合っていたグランたちとリックはパーティを組むことになった。当然、居合わせたハルトもその時に勧誘されたのだ。


「あの、ハルトさん。あの子はどうなったのですか?」


 さきにラーメンを完食したエリナは、ハルトが保護した人造人間(ホムンクルス)のことを訊いた。


「あの子なら無事に保護されたぞ。今後は制御装置の摘出手術と、同族の先輩さんから直々の身の回りに必要な教育を受けてもらう感じになるだろうな」


「そうですか。よかった」


 人造人間(ホムンクルス)の女性を気にかけていたエリナは、ほっ、と息を漏らした。あんな話を聞いたのだから当然の反応なのだろうが、自分と重なるのだから気が気ではなかったのだろう。


 エリナの様子を伺い、心配がなくなったハルトは頬杖をついた。


「今日はお二人さんに無理させちまってすまんかったな。イレギュラーの発生後だっていうのに俺のおつかいにつき合わせてしまって」


 ハルトは自分が引き受けた依頼に同行してもらった二人を気遣う。


「いいよ。全然気にしてないし」

「私も、色々と勉強になりましたから」


 カンナとエリナの二人はなんとも思ってなさそうにそう返した。


「ならよかった。なら、今後ともよろしくな。困ったことがあったらなんでも言ってくれ。相棒(リック)と一緒に解決してやるからよ」

「気をつけろ。たまに頭を抱えたくなるような案件を持ってくるぞ」


 恰好をつけるハルトの横で、チャーシュー丼を完食したリックは躊躇なく相棒の悪癖をばらした。だが、当の本人は最初から聞こえなかったかのように無視した。


「そういえば、リックはパーティを組んでるのか?」


「いや、組んでない。カンナとは専属契約してるが、基本的に単独で動いてる。今はエリナの面倒を見てるから単独とは言えないがな」


「いいね。そのほうが気が楽で。固定だとしがらみができるからなぁ。ああ、もちろん。リックの冒険についていくぜ」

「その時は頼りにしてる」


 リックはデザートの杏仁豆腐を食べながらそう言った。


「んじゃ、のちのち、都合がついたら迷宮でも挑みにでもいくかね」


 ハルトはそう言って、だらんと椅子に寄りかかる。そんな寛いでいる彼を、ラーメンを待つカンナは見つめ、その視線は椅子の下に置いてある機械仕掛けの武器に向かう。


「ねえねえ。ハルト」

「んあ?」

「その機械仕掛けの武器、見せてもらってもいいかな。ずっと気になってて」

「ああ。いいぞ」


「へぇ、これが。ハルトが使ってる機械仕掛けの武器、中身はこんな感じになってるのか」

「……ん? あ? はぁ!? いつの間に!? いや、なに勝手に解体してんだ!?」


 テーブルに整列する自分の武器の部品を見たハルトは慌てふためく。


「へぇ。あの丸鋸の正体は流動金属だったんだねぇ。魔力を通すことで丸鋸に変形するようになってるのかぁ。どうりであーなるわけだ。錬金術でしか作れない特殊合金。これを作った人は凄腕の職人だ」


「ちょい! 聞いてんのか!?」

「あっ、ごめん。つい、気になっちゃって」


 申し訳なさそうに苦笑いするカンナだが、解体作業は進めている。


「ちょっ、やめーや。とっとと戻してくれ!」

「えっ、いいじゃん。ちょっとくらい。これくらいなら戻せるよ?」

「いや、ドワーフのおっちゃんに怒られるのが嫌なんだ!」

「あっ、ちょっと! ハルト! 素人がそんな無理やり押し込んだら――――」


 パキンッ。


「「あっ」」


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