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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
一章 白き聖女編

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50. 対面と相談

 朝食を終えた後、リックとエリナの二人はセキネツ武具店に向かった。

 道中、やたらと注目された。


 とくに男どもがすれ違うたびに、エリナに視線を向けていた。その美貌と肉感が男の目が釘付けになるのは無理もない。

 だが、やけに熱い視線だとリックは思った。当の本人は気にした素振りもなく、ただ道をまっすぐ見据えてリックの三歩後ろに下がり、それを維持しながらついてきている。

 これも寺院で教え込まれたのか、と考えるとリックは頭が痛くなりそうになった。

 そんなこんなしているうちに、セキネツ武具店に到着した。


「よっ、ボルト」

「おっ、リックじゃないか」


 店に入ってすぐ、カウンターで退屈そうにしているボルトに挨拶した。


「カンナはいるか?」

「ああ、いるぞ。ちょっと待っててくれ」


 ボルトはそう言うと、工房の入り口から「おーい、リックが来たぞ!」と大声でカンナを呼んだ。どうやら朝から作業中のようで、金属を叩く音が工房に響いていた。


「おっ、リックじゃん。おはよ」


 一際大きい金属音がやみ、工房からカンナが顔を出した。


「おはよ。今日はカンナに用があってきたんだ」

「もしかしてボルトが言ってた女の子のこと?」

「そうだ。紹介するよ。昨日から面倒を見ることになった。エリナだ」


 リックはそう言って、後ろにいるエリナを前に出して紹介した。


「初めまして。エリナ・クラークロンドと申します。よろしくお願いします」


 エリナは礼儀正しく頭を下げる。緊張とかそう言ったものが感じない平坦は声音の自己紹介。カンナは彼女を見た途端、大きく目を見開いた。


「デッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ」


 カンナの目は見事に胸のほうにいった。


「えっ、それ、自前? 天然、なの?」


 動揺しながらもカンナはエリナに近づき、その迫力のある豊満な胸を指差す。


「はい。齢一八にして、ここまで成長しました」


 淡々と答えるエリナの肩を、カンナはがしっと掴む。


「ねぇ。初対面で申し訳ないけど。おっぱい。揉んでみてもいいですか?」


 胸に釘付けのカンナはそう言った。「ちょっ、おい」とリックが止めようとしたが。


「はい。構いませんよ」


 エリナは淡々と了承してしまった。


「では、いただきます」


 いただきますじゃねぇよ。とリックは思う傍らで、カンナは生唾を飲み込みながらエリナの豊満な胸を優しく揉み始める。


「これが巨乳!? 今まで見た中で最大サイズの巨乳なの!? すっ、すごいよ! こんなに大きくて柔らかい! それなのに押し返してくる弾力もある! うお、重みも段違い!」


 初対面の人の胸を揉みしだいて、捏ねまわしたり、持ち上げたりして堪能するカンナ。それを見ることしかできない男性陣の身にもなってほしいものだ。


「あの、ところでお名前は?」


「あっ、自己紹介がまだだったね。私はカンナ・ウォールマン。セキネツ武具店で魔導具を専門に製作してる職人だよ。リックとは仕事仲間でも友人でも仲良くやらしてもらってます。どうぞよろしく! 困ったことがあったらなんでも聞いてね」


 明るく元気に小さく敬礼しながらカンナは自己紹介をする。


「そのときには、ぜひお言葉に甘えさせてもらいます。よろしくお願いします」

「そんな堅苦しくしなくていいよ。仲良くやっていこ」

「はい。仲良くさせていただけるのはとても嬉しいです」

「ん? うーん。まあ、いっか。よろしく」


 細かいことはいいか。という感じに、胸を揉みしだきながら自己紹介を終えた。


「自己紹介が終わったところで、カンナに頼みたいことが――――」

「エリナちゃん! 胸の間に腕を挟んでみてもいいかな!」

「話聞けよ」


 リックの話なんて無視してカンナはエリナから「いいですよ」と了承をもらって下から腕を入れた。そして、二つの肉を伸し退けながらカンナの手が深い谷間から生えた。


「うあぁ、腕に柔らかい感触が……それにあったかい」


 幸せそうなカンナはなにか思いついたように胸から腕を引き抜いてリックに振り向き、


「ねぇ、リックも触らせてもらったら?」


 エリナの背中に回ってそう提案してきた。

 蚊帳の外だったリックは突然の提案に、ぎょっ、と驚いた。


「いや、俺はいい」


 昨日の記憶が呼び覚まされたリックは顔を反らして遠慮した。

 カンナは、「そう?」となぜか残念そうに肩を落とす。その前に、エリナの了承なしでその提案は非常に良くないとリックは心の中でツッコミを入れた。


「大丈夫です。リックさんは私から触れさせましたので」

「あっ、そうなんだ」

「はい。今は誠実でありたいと遠慮していますが、触れたときは大変喜んでおられました」


 赤裸々に語るエリナを横目に、


「へぇ、リックの旦那もいい思いしてんだな」


 と店番中のボルトから野次が飛んでくる。


 ボルトはあとでしばく、と思いながらリックは視線を戻す。


「話を戻すけど、カンナに頼みたいことがあるんだ。ちょっと来てくれ」


 手招きしてリックはカンナとともに店内の隅に移動する。


「それで、用件はなにかな?」

「エリナのことでカンナにお願いしたいことがあるんだ。迷惑をかけるかもしれないが」

「それはいいけど、どうして?」

「言いづらいんだが。エリナはおそらく、旧時代の宗教のシスターかもしれないんだ」

「えっ!?」


 思わず大きな声が出てしまったカンナは咄嗟に口を塞ぐ。エリナとボルトの視線がこちらに来たが内容までは伝わってないことを確認して、愛想笑いだけ返して話を戻す。


「旧時代の宗教ってホントなの?」

「正確にはどうとも言えない。本人も宗教観とかその辺もろもろの自覚がないようだが、彼女の言動を見るにそう見ていいと思う」


 旧時代の宗教。約七百年前、大災害後にあったとされる宗教のことを差す。実際のところいつからあっていつから消えたのかは不明だ。だが、その悪名は今も轟いている。


 現代の宗教には、無名の神、と言われる神を信仰を主体とする組織である。

 世界に現存する脅威に抗うために人類へ、魂に刻んだ不思議な力と〝天啓の白書〟とスキルブックと、今もなにかしらの形で与え続けている技巧の神がおもに崇められている。


 世界のどこかには、神族と言われる権能を持つ種族がいるらしいが、組織的なものを持っておらず、いても少数派でひっそりとしているらしい。


 そこで問題を起こしたのが、偽りの神を崇めた宗教団体だ。


 非主流派、別宗教を異端と決めつけ、死か改宗を強制。人間以外の種族を下等な存在として奴隷化。武装集団を結成しては、虐殺、強制改宗、略奪、性的暴行とやりたい放題やったそうな。これにキレたのはほかでもない技巧の神だった。


 偽りの神の名を語った罪は重く、当時の神託を受けた聖女の手記には、神のガチギレ文が書かれている。ちなみに、偽りの神を語った宗教は徹底的に討伐されたらしい。

 そんなことがあって、名のある神を崇める少数派の宗教は肩身が狭いらしい。


 今も探せばいくらでも悪行が出てくる。それが〝旧時代の宗教〟だ。


 その宗教の教育も過激も過激。都合のいい道具、もしくは従順なしもべを作るための強制と強要だったとされる。エリナはその被害者なのは明白だ。


「そっかあ。とすると種族の問題とかどう?」

「ここに来るまでにいろんな種族と出会ったが、これといった反応はなかったな」

「そうか……」


 カンナは少し考えてからエリナに振り向き、


「ねぇ、エリナちゃん。エルフってどう思う?」


 直球で訊きやがった。リックが「ちょっ!?」と驚いている間に、エリナは少し考えるようなしぐさを見せて口を開く。


「ここに来て初めて見ましたが、耳が長くてとても美しい種族だと思いました」

「ほかには?」


「ほかにと聞かれましても、容姿以外ですとみなさんとあまり変わらないです。個人で性格は大きく異なるとは思いますが、どうしてそのようなことを聞くのですか?」


「いや、外に出たことないって聞いたから、他種族はどう見えてるのかな、と思って」

「そうですか。なら、今言った言葉が私のすべてとなります」

「そっか。それじゃ問題なく暮らせそうだね。教えてくれてありがとう」

「いえ」


 カンナはエリナから再びリックに視線を戻して小声で話す。


「大丈夫だったね」

「お、お前……躊躇なさすぎだろ」

「まあ、いいじゃん。これで問題は解決できたんだしさ」


 冷汗をかきながら見守っていたリックにとっては心臓に悪かった。向こう二人は「なんの話をしてるのでしょうか?」と言うエリナに、ボルトは「さあ?」と呑気に答えていた。


「それで、なに。私にしてほしいことがあるんでしょ?」


 そう言うカンナに、リックは少し考えてから口を開く。


「そうだな。おもに女性としての認識と常識。あと貞操観念も教えてもらえると助かる」

「どうして貞操観念も?」

「昨日の夜。お礼と称して体を差し出された」


 カンナは大きく溜息は吐き、


「そのまま童貞もらってもらえばよかったのに」


 呆れた様子でそう言った。


「うるせぇ。こっちには自分なりの矜持ってものがあるんだよ」

「ふーん。なるほどねぇ。まっ、そういうことにしときましょう」


 意味ありげな反応のカンナに、リックは溜息を吐いて言葉を続ける。


「エリナは男に体を差し出すのを当たり前だと思ってる。あのまま放置すると対価とか関係なく、ただねだるだけで平気で差し出すぞ」

「うわっ。それはヤバいね。わかった。とりあえず一般常識を教えればいいんだね?」

「頼む」

「りょーかい」


 カンナは軽く敬礼をして快く引き受け入れてくれた。一度でもついた評判と値札は消えない。それがないようにしないといけない。


 ひとまずカンナとの用事が終わり、リックはエリナとボルトのほうに目を向ける。


「昨日買った装備だけど、あれから違和感はあるか?」

「そうですね。激しく動くと胸のほうが少し違和感があります」

「ちょっとゴメンよ……ああ、胸部のサイズが合ってないな。ブラのサイズも見直したほうがいい。今つけてるのはちょっとキツいんじゃないか?」


「はい。ボウルからはみ出たパン生地みたいな感じになってます」

「なるほど。装備は機能を増やしてまとめるようにして、ブラは布面積の多い奴にしたほうがいいな。それと太めの肩紐でノンワイヤーの……いや、オーダーメイドで作ったほうが早いな。良い服屋を知ってるんだ。そこを紹介しよう」


「ありがとうございます」


 ボルトはエリナの装備を確認しながらそんなやりとりをしていた。


「女性ものの装備に熱心になるのはいいけど、傍から見たら変態だからねぇ」

「うるせぇやい! 見えないところの気遣いは必須項目だろ!」


 平然と仕事をこなしているボルトは、体の一部だから大事にしてほしい、という理由で巨乳の悩みを解決しべく日々研鑽を積んでいる。ちなみにボルトは、低身長合法ロリ中年エルフにしか興味ない。逆にナットのほうが少し危ない。


「あっ、そうだ。リックに聞きたいことがあったんだ」

「なんだ?」

「これなんだけど」


 カンナはタブレットを持ってきて、リックに画面を見せた。

 タブレットには一枚の写真が表示されていた。


「……白い、本? 〝天啓(てんけい)白書(はくしょ)〟とはちょっと違うみたいだな」


 それは浅草色の縁の白い本だった。そして、目のような模様が描かれていた。


「以前〝白漂領域(ヴァイスフィールド)〟を消滅させたじゃん? その時に出てきた代物らしいんだけど、数日前に誰かによって持ち去られたらしいんだよね」


「それはいいが、なんで俺たちにこの情報が回ってきたんだ?」


「アメリアが言うには、もし見つけたら知らせてほしいんだ、って。得体のしれない代物だから、問題が起きたとき、リックに対処してもらう可能性があるかもって」


「そんなにヤバいのか。とりあえずはわかった。俺も市場を見るときは警戒しておこう」

「お願いね」


 目の模様が入った気味の悪い白い本。タブレットに映るその本はいったいどんな効果を持つのか気になるリックだったが、触らぬ神に祟りなし、とその好奇心を振り払う。


「そういえば、これからどうするの?」

「これからエリナとともに冒険へ向かうつもりだ。カンナはどうする?」

「うーん。今回はやめとく。新しい武器も製作途中だから」

「わかった。また寄るよ」


「おっけー。じゃあさ。仕事が終わったらみんなでご飯いこうよ。エリナちゃんともゆっくりお話ししたいからさ」

「わかった」


 ボルトと装備のことで話がまとまったのを確認して、リックはエリナを連れてセキネツ武具店を後にした。今日の晩飯は肉料理かな、とリックは独り思うのであった。




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