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5. 準備と手術

アクセスありがとうございます。

 リックは次に、カンザリーナという武器商人の店に訪れていた。

 金髪碧眼の二十代後半の男性。サングラス、黒いコートを身に纏い、フェルトハットを被った胡散臭い雰囲気を漂わせている武器商人だ。


 リックは依頼で何回か面識があったせいか、すんなりと店の中へ通され、カンザリーナが見せたいという銃が入った木箱の前まで案内される。

 すでに木箱の蓋が開けられており、銃の姿が見えるようになっていた。


「これは最新技術を盛りに盛った魔導軽機関銃。名は〈ヴォルグ04〉。魔力障壁を応用した五〇口径の魔力弾を発射します。銃弾モード、爆破魔法付与擲弾モード、榴弾モード、と豊富。発射速度も変更可能で、単発、三点バースト、六〇〇発、一五〇〇発とあります」

「盛りすぎだ。頭に入ってこねぇよ」


 リックはツッコミを入れつつも銃を見つめる。

 銃は全体的に光沢を抑えた銀色の銃。だが、銃身は見えず、はたから見たら銃の形をしたゴツイ置物である。照準器の周囲には、レバーのようなものが上がり、照準器の下には、なにかをはめ込むようなスペースが存在していた。


「銃口が見えないが。それにこのレバーはなんだ? この隙間と関係があるのか?」

「実際に持ってみるとよろしいかと」


 リックは言われるがまま銃を持った。すると、商人が黒い部品をリックに手渡した。


「それは魔力を貯め込むカートリッジです。そこに隙間にはめこんで、レバーをおろすとカートリッジが自動的に押し込まれて固定されます」


 説明を受けながらリックはカートリッジをはめ込んでレバーをおろした。


「セーフティを解除してください」


 リックがセーフティを解除した瞬間、フレームが上下に展開して銃身が現れた。


「これは……」


 なかなかに心躍らせるような仕掛けがある銃だった。リックが感心する中で、グリップのところにもマガジンらしきものが差し込まれていた。


「グリップを強く握りしめ、魔力を送ってみてください。弾丸が装填されます」


 リックが魔力を送ると、ぐん、と一気に魔力が持っていかれて標準器の下の小さな画面に六八九と弾数らしき三桁の数字が表れた。送る魔力を制限してこの弾数。手から伝わる、まだまだ魔力を入れられると。余裕が軽く四桁はいく勢いだ。


「では、試しに撃ってみましょうか」

「そうだな」


 目と鼻の先にある試射場に案内されたリックは、片手で魔導軽機関銃を構える。設定は最大発射速度一五〇〇発になっていたため、そのまま発砲する。

 連射される魔弾。反動は普通の軽機関銃より少なく、照準がぶれることはなかった。


「ふむ。いいな」


 ロマンというロマンをぶち込んだ銃。自分の鎧と良い勝負とリックは心を掴まれた。


「それ、両手、両手用……ま、まあ、人それぞれだ。ちなみに弾速を変えたい場合は一度、セーフティに戻してからしかできないから気をつけてくれ」

 カンザリーナは片手だけで軽機関銃を撃った事実に動揺しながらも平常運転に戻った。


「これをもらおうか」

「まいど! リック様には依頼で世話になっていますから、五五〇万ユルドのところを、今回はカートリッジとバッテリー込みで三〇○万ユルドでいかがでしょうか」


 その金額を聞いてリックは愕然とした。


「予算、オーバーだ……」


 リックは手に持った銃を見ながら肩を落とす。べつの銃にするかと諦めかけたときだ。


「よろしければ、そのままの値段で分割払いと言うのはいかがでしょうか?」

「……。いいのか?」

「もちろん。それで折り入って相談なんですが……」


 カンザリーナはリックの耳元まで近づき、


「この銃を使うところを生中継してる配信か、依頼で使用してるところを見せて欲しいのです。いわばこの銃の宣伝をしてほしいのですよ。約束してくださるならば、さらに二〇パーセント引きに致します。悪い話ではないと思いますが」


 耳元で囁くようにして個人的な依頼をリックに申し込んできた。


「……。いいのか? 聞くだけだと俺だけが得してるように感じるが」

「いいのですよ。リック様はこれから大きな成果を出すでしょうから、それを見込んでの相談です。投資ですよ、投資。いかがですか?」


 話を聞くだけだと、ギルドを通さない指名依頼だ。だが、銃を配信で披露するだけの簡単な条件で最新式銃を格安の値段で購入できるということ。

 リックは悩んだが、最終的には物欲が勝ち、「約束しよう」とその相談を承諾した。


「まいどありがとうございます。今後もなにとぞご贔屓に。銃はそのまま持っていきますか? それともお届けに参りますか?」

「なら、〝セキネツ武具店〟に届けてほしい」



 ――



 リックは最後に、借金をして〝ディストピア人口魔眼移植院〟にきた。

 黒髪と褐色肌、琥珀色の瞳と眼鏡が特徴的なダークエルフの女性が経営する施設だ。

 名前はルールー。


「リック君がこの施設に来たのはいつぶりだい?」

「片目をやったときじゃないか?」

「あれから四年くらいか。あんなに頼りなさそうなイケメンだったのに今やA級冒険者。立派になったもんだ。そんなリック君はどんな魔眼が欲しいのかな?」

「〝透視〟の魔眼だ」


 透視の魔眼は、物体で隔てた向こう側のものを見ることができる。例を挙げるなら、伏せたカードの柄、壁に先、衣服、生物の内部、女子風呂、などなど。


「わかった。多分、わかってるとは思うけど一様。魔眼とは言えど、天然と違って人口の魔眼は複数の術式を刻み込めるけど力が弱い。大きな山の向こう側までは見れないからね」

「わかっている」


 人口の魔眼は天然と違って細かい芸当はできないし、効果範囲も狭まる。リックが求めている魔眼でできることといえば数メートルの範囲から物体を透かす程度だ。まあ、リックの欲しい効果は得られているため、そこは問題はない。


「それじゃ、始めるわよ」


 ルールーはそう言ってリックの手足を椅子に備え付けられた拘束具に縛られた。

 嫌な予感がしたリックは、不安から生唾を飲んだ。


「そう言えば、魔眼の移植手術はどんなものなんだ?」

「大丈夫。痛いのは一瞬だから」


 満面の笑みを浮かべるルールーはゴム手袋をして、リックの目に指を突っ込んだ。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――ッッッッ!」


 リックは幼少期ぶりに大泣きした。


読んでくださりありがとうございます。

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