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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
一章 白き聖女編

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47. 冒険者登録

 ギルドに来たリックたちは、アメリアに頼んで冒険者登録の手続きをした。


 冒険者登録には、登録を申し込むだけでギルドカードが発行される。まあ、記入欄に書けるだけ書いていたほうが、リックが指名して担当官になるアメリアの負担は減る。


(文字はちゃんと書けるんだなぁ)


 淡々と記入しているエリナを眺めるリックはそう思った。


「リック君が女の子を連れてきたと思ったら面倒を見てるなんてねぇ」


 リックの依頼完了の手続きをしてきたアメリアが言った。


「いく宛もなさそうだったからな。俺自身なにか目標があったわけでもないしな。一人や二人、成り行きで面倒を見ても平気さ」


「つまり、いつもどおりお人好しを発動させたのね」


 アメリアは飄々と言うリックの発言を一蹴した。


「書き終わりました」


 すると、記入を終えたエリナがアメリアに書類を提出した。


「はい。確かに受け取りました」


 アメリアは一通り書類を確認した。


「確かに。それではエリナ・クラークロンドさんに‶天啓の白書〟をお渡ししますね」


 そう言ってエリナに差し出されたのは、タイトルのない白い本だった。


「これは……」

「‶天啓(てんけい)白書(はくしょ)〟。自分自身に備わるステータスを可視化し、潜在的、あるいは積み重ねてきたものを力として引き出すことのできる代物だ。ステータスブックとも呼ばれる」


 リックは白い本の正体を言った。


「あ、ちょっとリック君。それ私の仕事だから取らないで!」

「ああ、すまん」


 アメリアは咳払いをして、


「ではエリナさん。説明を始めますね」


 本について説明を始めた。


 エリナは‶天啓(てんけい)白書(はくしょ)〟の説明を淡々と聞いていた。技巧の神、そう呼ばている無名の神が世界に配ったとされる魔導書。元から人々の魂には、神様によって不思議な力が刻まれており、魔導書を手にすることで力を得て、自分を強化していける。


 よくわからない宗派のシスターには、名前もわからない技巧の神を受け入れられるものか心配だったが、なるほど、と言って普通に受け入れて頷いている。


「この時点での白書はなんの変哲もない魔導書ですが、魔力を通すことで魔導書の術式と繋がってステータスを書き出します。そして、あなたと魔導書は同化し、自分の意思で本を出したり、消したりできます。では、やってみましょうか」


 アメリアはそう言って火ばさみで挟んだ‶天啓の白書〟をエリナに渡した。

 その一連の流れを不思議そうにエリナを見ていた。


「〝天啓の白書〟の所有者は未使用の白書をさわれないんだ」

「あっ、そうなんですね。てっきり潔癖なのかと思ってしまいました」


 リックがそう言うとエリナは納得した。


「こんな綺麗な人にそんなことするわけないじゃない! 続けるよ」


 アメリアは弁明しながら咳払いをして、話を戻した。


「それで、白書のここが旨味なんですが、自分の意思で自分自身を強化できることです。〝天啓の白書〟を所有後、経験値というものが溜まっていきますので、更新することで経験が自分の力に反映されます。すると、スキルの発現、習得した技の可視化。あと努力次第では新たな職業(ジョブ)が発現したりします」


 エリナは白い本を眺めながら、


「かなり便利な物ですね」


 率直な感想を言った。


「意外とそうでもない。経験値を稼ぐだけなら力はついていくが、スキル習得は努力の結晶だ。〝可能性の走り書き〟という解読不可能な言語が薄っすらと浮き出るんだが、それがあるかないかで今後の活動に雲泥の差が生まれる」


 白書は確かに自分を簡単に強化できる。しかし、それは冒険、鍛錬や修練、といった過程や経験を積み重ね、試練の乗り越えてきた者にしか与えられない。


 ただ歩いているだけでは力は得られない。


「そうなんですね。軽率なこと言ってしまい申し訳ありませんでした」

「べつに謝んなくていい。俺だって最初はそう思った。多分、誰もが思うことだ」


「そう、ですか」

「ほら、そろそろ〝天啓の白書〟を使用しよう」

「わかりました」


 エリナはそう言って、〝天啓の白書〟に手を乗せて魔力を送り始めた。

 数秒後、白書は光り出し、独りでに本が開かれ、ページがめくられていく。本から無数の光の粒子がエリナの周囲を取り囲む。そして、光は集約していってページが止まった。


「成功のようですね。それが、あなたのステータスとなります」

「これが、私のステータス……」


「エリナさんは元シスターと聞きました。とすると、この時点で職業(ジョブ)が発現します。多分ですが、‶神聖術師〟が発現してると思います」


「……。はい。ちゃんと職業(ジョブ)の欄に〝神聖術師〟と記されています」


 エリナは自分の白書を眺めながらそう答えた。


「よかった。買った装備が無駄にならなくて」

「山勘で買うくらいなら女性ものの服でよかったでしょうに」

「いや、シスターなら神聖術師が出てもおかしくないと思って」


 実際リックは、シスター繋がりで神聖術師の装備を買った。だが、買って少ししてから思った。ほかの職業が発現してもおかしくなかったな、と後悔した。


「だとしても、場合によっては治癒術師とか魔術師を発現したりするんですから、最初っから神聖術師のガチ装備を選ばなくてもよかったんじゃない?」


「発現したからいいじゃないか。なにもそこまで言わなくたって」

「女の子に必要な物を全然わかってないと言ってるの。どうせ稼ぐ手段しか考えてなくて生活に必要な物を買ってないんじゃないの?」


 話の趣旨かわってね? とリックは思うが、その通りなので目を逸らす。


「それは……ね?」


「ほら、やっぱり! 替えの下着とか、私服とか買ってないんでしょ。なにが面倒みるよ。ちょっと待ってて。もうすぐ退勤だから必要なもの買い物いくよ!」


「いや、もう夜に……」

「まだ間に合うから準備する! そのクソダサい服装を引き千切られたくなかったね!」


 段々とボルテージが上がっていくアメリアに、肩身が狭くなっていくリック。さすがにお気に入りの『鉄人』を破られたくはないので素直に従うしかなかった。


 その傍らで、エリナは自分の〝天啓の白書〟を眺めていた。





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