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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
序章 追放重戦士編

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35/58

35. バラン・ガタッタ全滅

 サブルトラック商会支店付近。

 大通りをとぼとぼと歩く『バラン・ガタッタ』の姿があった。 

 ザルツブルグ騎士団の冒険者専用牢。通称、反省部屋に一週間ほど拘留されたのち、解放された『バラン・ガタッタ』だが、特定の職人への執拗な勧誘を迫り、特定の冒険者への暴行を行ったがためにギルドから謹慎処分を受けてしまった。


 それこもれもぜんぶリックのせいだ。そう思うグランは奥歯を噛みしめる。

 反省部屋にいた頃にリックがS級になっていたことを知った。それも『バラン・ガタッタ』のS級認定がリックのS級昇格ありきだったこともそのついでに知った。


 ふざけるな、とグランは思った。

 同じ冒険、同じ依頼、同じ報酬、同じ食事。同じ鍛錬。すべて同じ経験を積み重ねてきたはずなのにリックだけが昇った。グランたちは足踏みをしているというのに。

 同じ道を歩んでいたはずなのに。


(本当に、同じ道を歩んでたか?)


 グランがリックとの記憶を遡った時、冒険関連以外で関わったことが一切なかった。冒険帰りの食事や物品購入なら同行していた。だが、個人的には関わっていない。

 あくまで冒険者として、だけ。


(俺のいないところで、あいつはなにをしていたんだ?)


 グランの背筋に冷汗が滲んだ。考えもしなかった差を理解しようとしている自分に。そして、それを理解してしまったら過ちを認めてしまう気がして思考が止まる。


「大丈夫です、グラン。私たちのペースでいけばS級になれますよ」

「ミア……そうだな。俺たちならS級になれる。きっと」


 そう、S級になれる。グランは信じている。リックのことなんて考えていられない。どうせ半年もしないうちにS級リック・ガルートンなんて話題にもならなくなる。

 その時が『バラン・ガタッタ』の一大チャンスだ。

 持ち直したグランは、背を向けたリックを振り払って前を向いた。

 瞬間、目前に迫っていたサブルトラック商会支店の外壁が爆発音とともに崩壊した。


「な、なんだ!?」


 土埃の中から現れたのは実現不可能とされる五メートル以上のゴーレムだった。


「なんでこんな街中にいるんだ!?」

「知らないわよ! 敵ってことでしょ!」


 コルクとデミは慌てて武器を構えた。

 ゴーレムは地面を踏み揺らしながらグランたちのほうへと走ってきた。グランたちは即座に戦闘態勢に入ったが、ゴーレムは彼らを一瞥すると立ち止まった。


「おやおや。これは『バラン・ガタッタ』の皆さん」

「まさか、オッサムなのか? ちょうど会いにいくところだったんだ」

「そうですか。ですが、残念ながら今日でおわかれになりました」


「は? いったいどういうことだ! これからの装備の点検や購入はどうなるんだ! お前と専属契約するために前の職人と解約までしたんだぞ!」


「それは私の知るところではない。それに、ギルドを仲介しなかった君らが悪い」


 オッサムは淡々と冷たく突き放した。グランは奥歯を噛みしめながら口を開く。


「そもそも一介の商会がどうしてそんなバカでかいゴーレムを所持しているんだ!」

「役立たずには教えんよ」

「なんだと!」


「あのリックの邪魔をしてほしかっただけなのに、数時間で騎士団に捕まりおって、抑止力にもならんかったわ。おかげでゴーレムの完成もギリギリになってしまった」


 オッサムは重い溜息をついて言葉を続ける。


「私なりにリックという男を高く評価しているのですよ。彼の努力には目を見張るものがありますからね。ホント、足踏みだけやってるようなあなたたちと違って」


 オッサムの言葉は、『バラン・ガタッタ』メンバー全員を怒らせるのに十分だった。だが、さらに煽るようにオッサムの言葉は続く。


「本当に『バラン・ガタッタ』というパーティは、嫉妬で追放したくせに、リックすら張り合えないほど弱い。なんと滑稽か。そんな貧弱な足では蹴落とすより先に貴様らが落ちてしまうな。いや、蹴る前にすでに折れているか、なんと無様なパーティなんだ」


「これ以上、俺たちを侮辱するなぁッッ!」


 グランは叫んで剣を抜刀し、オッサムに肉薄する。それに続くようにして『バラン・ガタッタ』のメンパー全員がその後に続く。


 怒りを込めた一撃が、S級認定されたパーティの一撃がゴーレムに叩き込まれた。だが、その装甲に傷一つつけられず、逆に衝撃が反射してグランはのけ反ってしまった。

 そして、グランが態勢を整える前に、ゴーレムに捕まれてしまった。


 ふん、とオッサムの鼻を鳴らした。グランを建物に叩きつけ、足元にいたコルクを踏み潰し、棒立ちのデミを掴んでミラが展開した〈バリア〉に叩きつけ、血塗れになった〈バリア〉ごとミラを蹴り飛ばした。


 建物を乗り越えてどこかへと消えていった〈バリア〉に一息ついたオッサムは、


「噂どおり口ほどでもなかったな。書物の語りに出るだけ無駄な登場人物だ」


 そう吐き捨てて、ケーブルを引きずりながら門へと向かった。

 少しして、警報がザルツブルグに鳴り響いた。


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