30. 『ザルツブルグ騎士団一番隊隊長』
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漆黒の長髪。片目を眼帯で隠した黒曜の瞳。頬に傷跡が残る端正な顔立ち。手頃なサイズの膨らみを持ち、太腿が魅力的な女性だ。刃のような鋭い雰囲気を漂わせ、白縁の黒の制服に身を包み、一振りの剣を携えていた。
それは誰もが恐れおののく存在だった。
元S級冒険者、ザルツブルグ騎士団一番隊隊長アマンダ・キューロッジだった。
「久しぶりだな、リック。窃盗犯を捕まえてくれた以来かな?」
「ご無沙汰しております」
リックとアマンダは、数年前からの知り合いである。ひょんなことから都市に潜伏していた大犯罪者を偶然居合わせたリックが張り倒し、逮捕に協力したのがきっかけだった。以来、都市の治安維持のため、たまに指名依頼として駆り出されることがあった。
「リックがS級だと!? パーティを追い出された奴がどうして!?」
「私が推察するに、最初から決まってたんでしょうね。大方パーティを追い出されたことでそれが遅れた。最近になって昇格したのはデカい功績を上げたから」
驚くグランにS級の内部事情を知っているアマンダが経緯を話す。元S級とはいえ、気安く話していい内容ではないはずなのだが、本人は気にも留めてない。いや、むしろ隠す話でもないのだろう。だが、いちよう犬猿の仲になっているところに火種を投下するのはいかがなものかと、リックは思った。
「あの、アマンダさん。あんまりこちらの事情を話さないでもらえると」
「おや、当たってたみたいだね。ギルド長のことだから、パーティを追い出された冒険者をすぐにS級昇格できないから頃合いを見計らってたんでしょうね」
アマンダはそう言って愉快そうに微笑する。彼女は楽しそうだが、リックは若干の焦りを感じていた。なにせ在籍していたパーティメンバーと軋轢がある状態で酷い事実に、グランたちがどう感じるのか簡単に想像できる。
「リックがS級昇格で、俺たちはS級認定ってだけで……どういうことだ、リック!」
当然、グランは怒り心頭だ。壁作ってすぐにこの情報はまずかった。
「待てグラン。話せばわかるはずだ」
「ふざけるな!」
剣を抜いた状態で足を鳴らして詰め寄ってくるグランの前にアマンダが立ちはだかった。
「どけ女! 俺はリックに用があるんだ!」
「すまないが、私はグラン……いや、『バラン・ガタッタ』メンバー全員に用がある」
「あとにしろ!」
「いや、今すぐだ。君たちには暴行、未登録武器所持ならびに使用、あとはストーカーで現行犯逮捕する。大人しくお縄につけ」
「なに!?」
アマンダが罪状を述べると、グランたちの表情が一変する。
「見てたぞ。無防備な彼にトマホークをぶつけたのを。それに、来る途中、女性が冒険者に追われてる、って通報があった。会話も聞いてたから言い逃れはできないぞ?」
「くっ!」
「おっと、逃げられると思わないことね。私は魔剣士だ。スピードなら負けないぞ」
アマンダはそう言って、リックに振り返る。
「いちよう君たちは被害者になるけど、騎士団本部に一日過ごすのは嫌だろ? 問題がなければ、この件はこちら側で預からせてもらうけど、それでいいかな?」
「とても助かります」
「じゃぁ、いっていいよ」
「今度、差し入れもっていきます」
「良い酒を頼んだよ」
アマンダに手を振られながらリックはカンナの手を引いてその場から去った。
「おい待てリック、話はまだ終わって――」
「話なら私が聞くよ。もちろん、本部でだが」
「冗談じゃない! こっちは話をしたくて!」
「剣を抜いた時点で会話は終了している。神妙にお縄につけ」
「クッソがぁ! 迷宮が怖くなって冒険をやめた臆病者がでけぇ口叩くんじゃねぇぞ!」
怒りで我を忘れたグランは、アマンダに剣を向けて肉薄した。
刹那、剣が振りかぶられたと同時にアマンダの回し蹴りがグランの横腹に深く突き刺さった。グランの体は投げ捨てられた人形のように無造作に転がった。
一撃でグランの意識は途切れ、地面に突っ伏したまま動かなくなった。
「他愛ないな。……迷宮恐怖症に陥っても、私はS級に変わりないんだぞ。グラン君」
ぽつりと、アマンダは意識を失ったグランにそう言葉を投げた。
「隊長。メンバー全員の逮捕が完了しました」
アマンダの部下がそう通達した。すでに現場に到着していた一番隊の部下は、アマンダの攻撃を合図にパーティメンバーを瞬時に拘束した。攻撃のすきを一切与えずに。
「ごくろうだった。これより本部に帰還する。相手はA級だ。輸送には十分注意しろ」
アマンダは気絶したグランを捕縛した後、部下にそう伝えた。
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