3. 友人と決断
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「お前は今後どうすんだ?」
「どうすればいいかな。もとは実家のために出稼ぎで始めた冒険者だからな」
「お前の家は貴族なんだっけか。家族思いでいいこったな」
リックは、ガルートン家の五男として生を受けた。元は側室の子であったが、産んですぐに他界した母を思い、正式なガルートン家の子として育てられた。現在、リックが冒険者になってすぐに父が他界し、長男がガルートン家を継いでいる。
「没落貴族さ。上手くいっていない領地経営の資金調達のために俺は冒険者なった。優しかった父のために毎月仕送りをしていたが、父が亡くなり、当主が兄になってから、仕送りがギャンブルに使わていたことを知ってな。それ以降、仕送りをやめた」
「リックの思いを踏みにじってたわけか。つれぇわな」
「そうでもない。もともと義母と長男とは仲が悪かったからな。ほかの兄弟も折り合いが悪かったから成人して早々にあの家を出たみたいだし」
すると、ことっ、とハマベガイの味噌汁のおかわりミニサイズを、バーテンダーが涙ぐみながら「どうぞ」と置いてくれた。リックは「ありがとう」と言って食べる。
「仕送りをやめて以降、目的を失った俺は、だらだらと冒険者をやってきた。これを言うと、あいつらのことをとやかく言えないがな」
「んじゃ、なんで今も前に進もうとしてるんだ? 普通、そうなったら歩みを止める」
「それは、ただの重戦士で終わりたくなかったからだ」
リックが冒険者となって新しく生まれた目標。重戦士にできる以外のことをできるようにしたい。そんな思いから、五年前からこつこつと魔法を勉強し、スキルを習得してきた。
すべては仲間のためだった。もうそれらを活かす機会は失われたわけだが。
「リック。お前はおそらく〝ハイスペッカー〟かもしれない」
酒を一口飲んだケイがそんなことを言った。
「ハイスペッカー? なんだそれは?」
「最近、聞くようになった特定の冒険者の呼び名さ。そいつらの主力職業は逸脱したステータスを持ち、三つ以上の職業を主力と同等の力を発揮する。お前もそれに該当する」
「どんなところがだ?」
そんな冒険者がいるんだな、とリックはその話に興味を持つ。
「重戦士っつうのは、防御特化だが魔法系に弱い。攻撃は強いが命中率は低い。とくに移動速度が遅いことだな。装備が重量があるし、そのこともあって精密な動作も苦手だ」
ケイがそう前置きしたところで言葉を続ける。
「一方でリックは、防御特化で魔法防御も高く、攻撃も特化レベルで強く命中率も高い。そしてなにより、魔剣士レベルの移動速度を誇り、精密な動作も得意とする。それにあわせてあらゆる耐性、複数の職業。魔法が使えるなら魔術師クラスの魔力総量だろうな」
「第三者から改めて言われると、俺って結構異常なステータスだったんだな」
貪欲に強くなることを求めてきたリックは、基準とか比較とかをしてこなかった。友人の話を聞いて自分のステータスが逸脱していることがわからないほど馬鹿ではない。
だが、本当に自分がそれに該当するのかリックは疑問に思った。
「本当に当てはまるのか? 複数職業と言っても俺は五年の月日をかけてるんだぞ?」
「時間は関係ねぇ。〝ハイスペッカー〟の条件は、逸脱したステータスの主力職業のほか、複数の職業を主力レベルで使えることだ。それともう一つ……」
ケイがそこまで言って申し訳なそうに言葉を続ける。
「なあ、これはマナー違反だけどよ。〝可能性の走り書き〟はどれくらいあんだ?」
「……十数個ほど」
それを聞いてくるということは〝ハイスペッカー〟の条件に入っているんだろうな、と思いながらリックは答えた。すると、ケイは「なるほど」と呟いた。
「それを聞いて確信に変わった。お前は正真正銘の〝ハイスペッカー〟だ」
ケイはまっすぐな眼差しでそう言った。そして、一口酒を飲んで口を開く。
「そこで俺からの提案なんだが。単独活動していかないか?」
「え?」
突然のケイからの提案にリックは驚いた。
「べつに単独じゃなくてもいい。仲間を集めるのもいい。そしてあのパーティをギャフンと言わせてやれ。お前ならきっとできるさ。なんせ『高機動』『高火力』『高防御』の容姿以外の三高を持ってるんだからな。おっと、前のパーティに戻るとかなしだからな」
「……。言われなくても、前のパーティに戻るとか気まずくて居づらいだろ」
「それはよかった。それで目標だが、冒険をしながら見つけらばいいさ」
「そうだな……」
リックは少し考えた。目的も目標は失った。だが、重戦士の冒険者という自分はいる。
なら、今は一人で活動してもいいな、とリックは思った。
「決めた。俺は一人で頑張ってみるよ。縁があれば仲間も集めようと思う」
「そうか」
「色々とありがとな。利益なんてないだろうに」
「いいってことよ。お前がいなきゃ酒が進まねぇのよ」
「そうか」
リックはそう短くそう言ってミソスープを飲み干して兜を被った。
「おい? どこにいくんだ?」
「善は急げだ。これから準備する」
「ちょ、ちょ待てって! 今日は一緒に酒を飲む、って約束だろ!」
「今度、俺がおごってやるよ」
引き留めようとするケイに、リックは店の出口に立つ。
「そうかい。お前の活躍楽しみにしてるからなぁ!」
ケイの声援に、リックは微笑して店を後にした。
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