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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
序章 追放重戦士編

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22. 商会の手先

アクセスありがとうございます。

 リックとカンナの二人は、冒険者を武器で殴打して倒した。

 大した冒険者ではなかった。リックが盾で軽く殴ったらすぐに気絶した。おそらく、C級以下の冒険者だろう。F級のカンナにすら反応できずにやられた。


「リック。これ見て」


 戦利品を漁っていたカンナが、見覚えのあるバッチを見せてきた。


「これって、あれだよね。サブルトラック商会の」


 リックはバッチと、ついでにギルドカードを確認して頭を抱えた。


「ちょっと、きな臭くなってきたな」


 アクダミ草の件だけなら、まだ偶然と思える。アクダミ草だからだ。

 しかし、ザルツブルグの冒険者ではない、サブルトラック商会のバッチを持った冒険者が正規の手続きをせず、不正に採掘をしていたらもう偶然とは言えない。


 そもそも、商会といった組織がレイテコル鉱山山脈の資源が欲しい場合、ギルドを通して冒険者に依頼を出す形となる。横流しを防ぐため、外から来た冒険者はギルドで登録を行う必要がある。ほかの依頼を受けるにしても、必ずギルドを仲介するようになっている。


 ギルド登録をしても、ザルツブルグの平均は他国より高いため、既存の等級からワンランクダウンからの始まりとなる。そのすぐに指名依頼をすると組織がらみと思われる。

 今回の場合、ギルドの仲介なしで、無登録で、無許可での採掘。スリーアウト。そして、違法製造の無人機ゴーレムつき。


 盗掘という、大きな証拠がそろっている以上、サブルトラック商会はザルツブルグでなにか企んでいるとしか思えなかった。


「前回のアクダミ草の件と良い、俺たちは面倒なことに首を突っ込んだようだ」

「ザルツブルグの冒険者なら避けて通れないよ、こんなの」

「乗りかかった船だ。やることをやるしかない」


 リックは溜息まじりに信号拳銃を取り出し、手紙を入れた青の信号弾を空へ発射した。大きく上がった魔力光弾は青い煙を伸ばしながら、上がり切ったと同時に、鳥の形となった光がギルドへ向けて飛んでいった。これで近くの高台から見張る山脈警備隊にもいき、ギルドにも通達される。


 青の信号弾は、お尋ね者や盗人、違反した冒険者を捕らえたときに使用する。おもに移送が困難な人物、人数が多いときに使われる。


「よしっ、あとはこいつらの仲間も捕まえるか」

「腕が鳴りますなぁ」

「カンナは後ろで待機だ」

「はい……」


 さすがに洞窟にいる冒険者まで弱いとは限らない。F級のカンナを前衛に立たせるわけにはいかない。本人もそれは自覚しているようで、引き下がってくれた。


「それじゃ、いくか」


 照明魔法で明かりを確保して、リックたちは洞窟の中へ入った。

 洞窟内部に入ったと同時にリックは異変に気づく。鉱山山脈の洞窟では、入り口からでも魔結晶という、魔力が結晶化したものが生えているだが、それが根こそぎ採られていた。


「酷い……こんなに採掘したら、洞窟内部が弱くなる」

「これは、早急に対処しないとな」


 魔結晶は純粋な魔力の結晶体。人類にとって欠かせない資源だ。それは魔結晶が採れる環境も一緒である。豊富な魔力があるからこそ結晶化する。そして、その場に固定された魔力が環境全体に行き渡らせ、安定させているのだ。


 迷宮は深層から魔力を汲み上げている。魔結晶はその汲み上げる力を手助けしている。それがごっそりなくなると、迷宮は弱体化し、魔結晶の生成速度も低下する。そうなると魔物が枯渇した魔力を補うために迷宮の外に出てきてしまうこともあるのだ。


 ザルツブルグでは安定した魔結晶を供給するため、結晶の再生を阻害しない程度の採掘に留めている。そのため商業ギルドが簡単には手出しできないようにしている。


「リック。誰かいる」

「ああ」


 一層を下りたところで、採掘する音が聞こえてきた。あまり採掘が進んでいないようで、取り返しがつかないことにはならなそうだった。


「おい! そこの二人! どうやってここまできた!」


 リックたちに気づいた盗掘どもがそう叫んだ。


「どうやって、お仲間さんを倒してここまで来たんだけど?」


 カンナが飄々とそう言うと、冒険者たちがツルハシを放り投げて武器を手にした。


「お前らの仲間がサブルトラック商会のバッチをつけていたのを確認した。どういう関係なのか洗いざらい話してもらうぞ」


「ふんっ、ヤダね」


「否定しないってことは関係はあるようだな」

「テメェらを殺せばいい話だからな! 捕まえられるもんならやってみろや――」



 リックはまず、啖呵を切った冒険者に盾を使った高速悪質タックルを喰らわせた。スキルを一切使わない打撃だけで冒険者を一瞬で気絶させた。


「まずは一人」

「テメェ! よくもやってくれたな――」


 怒号を上げた冒険者も魔力を消費しない形だけの〈シールドスラッシュ〉で沈める。武器を使わず、大盾だけで冒険者たちを一掃していく。


 カンナは言われたとおり待機し、リックの戦いを「ほぇぇ」と声を漏らしながら傍観していた。彼女を狙う輩もいたが、距離を詰める前にリックによって阻止された。


「さて、残るはお前らだけのようだな」

「クソが!」


 盗掘をしていた冒険者は総勢一四名。ものの数分で一二名がリックによって倒され、残りはB級はありそうな二人が残った。


 じりじりと詰め寄るリック。それに対して奥歯を噛みしめて後ずさる冒険者たち。この時点で適うはずがないとわかっているのに、彼らは降参することはなかった。


 一気に倒してもよかったが、リックは相手の切り札を警戒して慎重に対応する。

 冒険者はなりふり構わず、スキルを使用してリックに斬りかかる。

 だが、リックは容易に防ぎ、冒険者を蹴り倒し、最後の一人に目を向ける。


「この野郎! コケにしやがって!」

「そんなつもりはない。だから、神妙にお縄につけ」


 リックは大盾から片手戦斧を取り出し、威嚇するように突き出す。

 その時だ。突然、地面が揺れだした。


「なっ、なんだ!?」

「……、」


 大きな地震にダウンしていた冒険者たちが騒然とする中、リックは冷静に周囲を確認する。リックはこの地震は前にも経験したことがあった。この揺れは自然のものではない。

 それはリックが追放されるきっかけとなった依頼、そこで遭遇した岩竜が起こす揺れと一緒だった。いや、確実に岩竜が近づいてきている。

 その予想は、当たることになった。


 ドゴォン、と地面を粉砕して這い出てきたのはリックの予想どおり岩竜だった。


「なっ!?」


 だが、その竜を見たリックは驚愕した。確かに岩竜だ。岩竜だが、そもそも岩竜と呼ばれる竜は成竜として若い個体のの呼び名だ。

 現在、リックの目の前にいるのは、さらに千年以上は生きている岩竜だった。


読んでくださりありがとうございます。

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