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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
序章 追放重戦士編

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11. 治療院 ‐バラン・ガタッタ視点‐

アクセスありがとうございます。


 とある治療院の個室。『バラン・ガタッタ』のメンバー一同が安静にしていた。

 冒険者アリナ率いるパーティがザザン討伐に出陣する前に、『バラン・ガタッタ』のパーティが討伐に出向き、ザザンが率いていた賊にすら敵わなかった。


 防御を捨てた正面突破。だが、現実はそう甘くなく、防御手段がない彼らは良い的にされ、旧砦の入り口にすら辿り着けずに全員が負傷してしまった。

 今は仲良くベッドに入り、おとなしく大画面のスクリーンに生中継されていたザザン討伐の結末を見て奥歯を噛み締めていた。


「クソッ! どうしてリックだけであのザザンを倒せたんだ!」


 物理防御だけが取り柄の重戦士。リックが多少逸脱したステータスを持っているからといって、パーティも組まずに単独で冒険はさすがに不可能だと高を括っていた。

 だが、徒党を組んで挑んだザザンが、たった一人の重戦士によって倒されてしまった。


「パーティから追放さえすれば、あいつは目立たなくなるはずだったのに!」


 グランは拳をベッドに叩きつけた。リーダーでもないリックがパーティの顔になるのを恐れ、追放してただのどこにでもいる重戦士に成り下がるはずだった。


 いつも飄々として、出世欲もない。ただの重戦士。ただの大食いの出稼ぎ冒険者だ。

 それが、リック・ガルートンだった。

 どこにでもいる冒険者のはずだった。

 そのだったはずだ。


「なんでまだそこに立っているんだよ! たった一人でッ!」


 追い出したはずのステージに、平然と立っていた。自分たちが浴びるはずだった称賛をリックだけが受けている。その事実が腹立たしい。誰よりも前に出てパーティを引っ張ってきたのは自分だ、とグランは自負している。


「俺たちが浴びるはずだった称賛をぜんぶかっさらいやがってッ! 許せねぇ!」

「気に食わねぇぜ。俺たちといたから目立ってたくせして」


 同じ映像を見ていた戦士のコルクはそう吐き捨てた。盗賊団の魔術師に丸焦げにされ、一命を取り留めた彼はミアの神聖術のおかげで元気だ。


「まったくよね。私たちがいなきゃ注目もされなかっただろうに」


 魔導狙撃銃で撃たれたデミは四肢欠損と胸に風穴が空いたのにもかかわらず、ミアの神聖術のおかげで五体満足にまで回復した。まだ治癒による疲労が残っているため、安静にしている必要はあるが、明日にでも復帰できそうである。


「あんな男、放っておけばいいのですよ。もうすでに『バラン・ガタッタ』のメンバーではないのですから。いずれ注目はなくなり、ただの冒険者となるでしょう」

「それは神託か?」

「いえ、事実を述べただけですよ」


 まるで女神のような笑みを浮かべるミアに、グランは安堵の息を漏らす。


「そ、そうか。ならいいんだ」


 話題がなくなれば自ずとリック・ガルートンは普通の冒険者として消えていく。焦る必要なんてなかった。パーティから追放された時点でリックは終わってるも当然なのだ。

 ミアの言葉のおかげで、グランは楽になった。

 焦ることが馬鹿馬鹿しくなったグランは言葉を続ける。


「リックがいなくなって以降、ミアには負担をかけすぎてすまんな。もっと高火力アタッカーとして一発で仕留められたら良かったんだがな」

「良いんですよ。今までがぬるかったんです。どんどん頼ってくださいね」


 ミアは優しい笑みを浮かべながらそう言った。


「さすがは聖女様だ。頼りにしてるぜ、ミア」

「頼りにしてるよ。ミア」


 神聖術は神様から譲り受けた奇跡の力だ。魔を打ち払い、傷を癒し、希望をもたらす力。その力を扱えるミアは、神様から聖女として選ばれている。

 聖女の肩書は神聖術師にとって名誉なことだ。そして、聖女にしか使えない神聖術も多くある。神様の加護がついた彼女はS級冒険者にも匹敵するほどである。


「そういやぁ、ハルトのやつどこほっつき歩いてるんだ?」


 すると、コルクがもう一人いるメンバーの名前を口にする。


「野暮用があるって言ってたな。あいつの自由奔放さには呆れるしかない」

「そのうち帰ってくるさ。あいつはパーティの要をなるんだからな」


 グランが話すメンバーはリックと交流があった。まだリックを追放したことを知らせてはいないが、戻ってきたときに伝える予定である。

 交流があったとはいえ、あいつもリックのことが心底憎かったに違いない。とグランは思いながら、ミアがみんなに剥いてくれた果実を受け取って食べた。


「それでグラン。退院したらちょっとお話があるのだけど、いいかしら?」


 ミアからの相談。それは夜のお誘いだった。

 聖女に好かれるとか最高だな、とグランは思いながら「いいぜ」と答える。


「相談ってなに?」

「ちょっとしたスケジュールの調整ですよ」

「ふーん」


 ミアはそう言って誤魔化した。デミはそれ以上の詮索はしなかった。

 彼らには、リックなど、もうどうでもよくなっていた。

 優秀な人材がそろっているパーティなのだから、なにも問題はないと、グランは思った。


読んでくださりありがとうございます。

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