妹ガチャに成功しました
親ガチャ、国ガチャ、とギャンブル依存の偶然信者はガチャガチャと運命を呪う他責思考をやめないが、SSR妹ガチャを引き当てました。
うちの妹が可愛いすぎる。小学生だけどな。
街衢を歩くと、その嬌羞で、おっと、もはや自分でも分からない言語を駆使しようとするほど、妹が可愛すぎてたまらん。
妹ビバ妹っ!
血がつながっているってサイコーだ。
だって、妹とその友達の濃厚な百合百合しい素晴らしい健全な仲が見れるのだから。実妹は愛でるもの。
「いいか。男はオオカミなんだ。女の子同士だけで遊ばないといけないぞ。ただし、兄は例外だ」
と言い続けてきた甲斐があった。
ブラコンで甘える少女と少女の濃密な庭園を特等席で見れるわけだ。ユリの花園を遠目に見れるのだ。ただし男は挟まらない。
「お兄ちゃんなんか大嫌いです。変態っ」
ガハッ、どうしてこうなった。
俺は、俺の天命にしたがって、妹を見守り続けていただけなのに。
妹が反抗期になってしまった。もう中学生だしな。
中学生なんて来なければいいのに。
第二次性徴なんて余計なことを。兄は異性じゃない。兄とはお風呂も大丈夫なんだ。
妹も社会の一般常識を超えられない一般的な妹ということだ。
俺は結婚前夜まで一緒にお風呂に入る覚悟だったのに。妹はその十年以上前に、否定してくる。
「常識に囚われるな。常識人間になったら、世間と結婚する世間体人間になってしまうぞ。裸なんて保育園から見ている。兄を信じろ。ちょっと胸が膨らんで、毛が生えても、兄は妹に欲情しない」
「視線がイヤらしい」
「主観だ。主観にすぎない。兄は妹を微笑ましく見ているだけだ。いままでも兄から触ったことはないはずだ」
「お兄ちゃん、大事なのはーー」
「お前の気持ちだ」
「じゃあ、お風呂禁止、お布団も禁止。だって、キモいもん」
「ごはぁっ!」
俺は吐血した。
どうしようか、妹ガチャに成功したのに、妹が俺を愛してくれない。
グラビアアイドルもビックリなスレンダーな肉体なのに、色気づいている。妹好きとロリコンは違うのに。
ああ、妹分が足りない。お兄ちゃんで充電する自称妹がありならば、兄も妹で充電したい。
だが、シスコンとロリコンは共存していると思うな。
シスとロリには三途の川より深い違いがある。妹かそれ以外か、とロリかロリ以外かーー妹は永遠だ。しかし、ロリとは永遠ではないのだ。シスコンは成長過程にも愛を感じる。未成熟でホルマリンしたい幼形成熟変態犯罪者予備軍とは違うのだ。ロリは刹那、シスは永遠。
閑話休題。
こうして、俺は架空の妹に目覚めーーないっ。
よくよく考えれば、妹の友達は俺の妹とも言える。
論理的な矛盾はない。妹論理的に正しい。妹増殖炉もんじゅ様に従う。
「で、俺は妹を三人増やしたってわけ」
「遺言はそれでいいの?」
「わかった。わかったから、ナタをおろそうか」
妹を説得しないといけない。
FBI並みの交渉力で人質を解放させるように。
「友達の友達は友達。つまり妹の友達は妹だろう」
「遺言はそれでいいの」
妹は繰り返す。
「我が人生に一変の悔いなし。妹のビンタは兄の恥だ。さぁ、ナタでやれ」
「お兄ちゃん、おもちゃのナタでは死ねないよ」
「俺に砂糖菓子の弾丸をくれ」
「人はね、金平糖では、死ねないよ」
「水中毒といってな、人は水でも死ねる。よって砂糖でも死ねる」
なぁ、ソクラテス、論理的にモーダスポネンスだよな。無知の知とは、まだまだ妹という神秘を解き明かせない俺の原罪。
あるところに、お兄ちゃんと妹がいました。兄は妹を愛でに家の中に、妹は家の中で遊んでいました。すると、桃は川を流れていき、子供がいなくても、末永く二人は幸せな生活をしました。
「お兄ちゃん。き・ら・い」
妹は満天星もビックリな笑顔を見せた。
俺はその笑顔に天路歴程して、さながらスエズ運河の水を得た魚のように、干からびる前に押し流された。
兄は、死んだ。
兄は死んだので、お姉ちゃんにジョブチェンジーーしようとしたら、妹から、「わたしに姉はいません」と存在否定された。
兄は、生き返った。
三途の川の水を相対性理論を理解して走り抜けて戻ってきた。
まぁ、まだまだちょっと兄離れをしただけで、カレシを抹殺して欲しいと言ってきたわけではない。
妹にカレシができたら、その瞬間、兄はヤッてしまうよ。
兄は妹たちの日常だけを求めているのです。男は不要。妹に触れるものに兄罰を。
まぁ、まだ兄が下着を選んでいるうちは、妹も反抗期と思春期の狭間の緩衝地帯で非武装化しているラインラントの兵のようなものだ。
兄として、妹の衣類はすべて把握している。兄として。プライバシーを無視するから過保護と呼ぶのだよ。もちろん、GPSも無断で五箇所にくっつけてある。兄は妹の行動を統計データにとって、おかしなところに行かないか、日々チェックに忙しい。まぁ、データ分析は基本、夜。怪しげなところに行けば、ブザーでスマホが鳴るからな。
GPSだけでは不安だろう。そう、盗聴器もセットしてある。しかし、これはあくまで緊急時のみの使用。小学生だって盗聴器で警察の情報を盗む時代だ。必要がそれを要求するのだ。犯罪か犯罪じゃないか、それは心のあり方による。悪用する気がないなら、無罪に違いない。そこに愛があれば、赦される。
えっ、盗聴器だけでいいのかって。おいおい、いくらなんでも盗撮は良くない。女の子を盗撮とか、ホント犯罪だかんね、怒られるかんね、カンネーの戦い。
まぁ、妹の部屋に監視カメラを設置した時期はあったけど、さすがに本人も数日でブチ切れた。
録画したデータを永久に保管するように、パソコンのメモリを気にした話をしただけなのに。
愛ゆえに話が長くなった。本題に戻る。
妹とミュウミュウする話に。
問題は、妹をもっと同性だけと遊ぶようにするにはどうしたらいいかということだ。
兄は嫌われても、百合は好きでいて欲しい。
ということで、バスケをさせるか、バンドを組ませるか、将棋をさせるかと、百合展開系小学生ラノベチックなのを参考にするんだが、ダメだっ、現実は男の影がチラつく。
俺の第六感が、叫ぶ。
女の友情より、恋愛が勝利する展開を。
「妹よ、何かやりたいことはないか」
「旅に出たい」
おいおい、小学生が可愛い千尋の谷にダイブしたいとか言っている。ライオンは実妹を谷底に落とすらしい。
「一人で自分を見つめ直したい」
なんだか妹が悟りを開きに、どこかに出家しそうなことを言っているのだが。まだ間に合う。考え直せ。
俺はおもむろに懐をまさぐり、万博500円記念硬貨をかかげる。
「妹よ。これでコンビニまで旅に出なさい」
「はーい」
うんうん。うちの妹は可愛いなぁ。
妹のお出かけを見送ったあと、俺はすることがない。妹の洗濯物も妹の部屋の掃除も終わっている。妹の夕飯も準備し終わったし。
さて、そろそろ始めますか。
今まで隠してきてないが、俺には妹というガチャSSRと幼馴染というガチャBマイナスがいる。
もちろん、妹ができることを見越して、幼稚園児の俺は異性の幼馴染を作った。賢いだろう。聡明な麒麟児だった。今となっては凡人よ。
異性の幼馴染は、妹との時間を作るのに使えるのだ。なんて便利なコマなんだ。妹というクイーンのためのビジョップだよ。
だが、しかし。
最近、俺のシスコンぶりの可怪しさに気づきはじめている。ただ妹のポスターを天井に貼り付けているだけで怪しんでいるぐらいだ。兄なら普通のことなのに。
「我が幼馴染よ。どうしたら、妹に異性を近づけずにすむと思う」
俺は妹のいない間に、幼馴染を部屋に連れ込んだ。正確には、今勉強中と言った彼女を椅子ごと家に運んできた。
「無理。ここは日本だから」
「なるほど。海外移住を視野に入れろと。俺にはない発想だ。さすがだな」
「兄捨て山に捨てて来られるよ」
「兄はいつでも妹のステーションさ」
「あのね。知ってる?過保護は、生き物を殺すんだよ」
「わかってる。いつか妹も銀河の果てでロボットに乗って戦うような舞台が待っているって」
「待ってないけど。妹離れしなよ。もう高校生でしょ」
「まだ高校生だ。大学は実家から通う。絶対だ。妹と離れたくない」
「あなたの妹でなくてよかった、心から」
「本題に戻る。異性がいると百合の間に挟まって、さぁ大変。一輪の花が散るような絵面でバッドエンド」
「大丈夫大丈夫。わたしも経験ないし。今はハラスメントの時代だから」
「しかししかし、妹の魔性の魅力に一般男子の理性なんて花吹雪に使われる紙吹雪より軽し。ルパーンダイブで、襲われることしきり」
「あなたの眼鏡は壊れてます。安心して」
だめだ。こいつ、世間の怖さを理解していない。
女性は今、世紀末の荒野を歩くように学校という牢獄に通っているのに。
全くモテないやつはこれだから。
妹に視線を向けるオオカミの数を数えてみろ。今までで97000人はいたぞ。妹に視線ハラスメントをする世の男の数よ。見るな、視線がイヤらしい。妹と194000の瞳。
「俺が、俺が、女子だったら、揺り籠から女子トイレから更衣室まで付いていって異性から守るのに」
「あなたの世界では女子トイレに異性がいるの」
「ああ、奴らはどこにでもいる。Gのように」
「安心して。変態は逮捕されるから。あなたも」
幼馴染が俺を変態と同じ扱いをしている。
当然だな。
客観的な視点からシスコンは、いわれなき差別を受けてしまう悲しきポリコレの最底辺。妹萌えとは、遺伝子に引き裂かれる二人の恋人の前世。ああ、シスターよ、どうしてあなたはシスターなの。
「妹だけど愛さえあれば関係ないよね」
「愛は免罪符にはならないから」
さて、わからず屋な幼馴染のツンデレ無感情キャラは放っておくとして、俺は妹と妹の友達と兄の三点倒立な関係のあり方について、あるいはゴーリキーについて、どん底から考えるように、ホモ・サピエンスの最後の人類は兄妹でも愛を成就できると固く統計的リスクの相対性を鑑みるが、中空構造の兄の思考は、妹の「お願い」という絶対的な天上の意思に跪く合理性を捨てれないステレオタイプな新星なのだ。
曰く、妹を愛さない兄などいない。
古事記にも、そう付け足した。
俺が、小学生の時に。
「それで、話は逸らすがーー」
「あ、会話する気があったんだ」
幼馴染は、俺のBGMで学業する逞しい精神を身につけていた。崇高な、あまりにも崇高なーー。
「俺、妹系百合文学を書いている世界でただ一人の思想の持ち主なわけじゃん」
「売れない作家だね」
「兄、妹、禁断の百合ーー完璧じゃないか。お兄ちゃんへの愛を百合に転換していく、その止揚、アウフヘーベンがニッチなブルーオーシャンでシャチのようにサメをトリンケンするのだよ」
「それでも、現実の妹は、現実を選ぶけどね」
「フィクションは現実を超えれないというのか。妹は、いつまでも永遠の乙女でいてほしいのに」
「諦めなよ。妹もいずれ兄離れして、自分のパートナーを見つけるの。わかる、あなたには一生できないけど」
幼馴染が俺のパートナーを永遠葬った件について、剣を持って語らいたいが、百合文学は百合の可能性を秘めるものを攻撃してはならないという百合三原則に囚われているため、ただ、幼馴染を妹百合文学の末席にリアルに写実して我慢するのみ。
「やはり、バトルが大事だな。戦闘美少女こそ、百合の繭。強くて可愛い、よって、男は駆逐される。魔法少女ものに男は不要。ただし、兄は除く。家族だから」
「現実に、そんな可愛く戦う女子はいないんだよ。戻ってこーい」
百合加護の百合籠を求めても、みんな現実にやられてしまう。妹なんていない、現実にやられてしまって、ということ。
「しかし、現実で百合ができないなんて誰が言った」
ああ、女の子同士が戯れる、その大人数アイドルのようなてぇてぇを求める彷徨えるもの。
「シスコンで百合好きってキモいなぁ」
「シスコンの延長に百合があるのであってキモい同列にしないでくれたまへ。俺は妹が無生物を好きでも構わない」
しかし、やはり健全に生きるためには、愛が必要なので、同性という深い深々な親友枠を許してあげようという兄心なのだ。
「兄ガチャはハズレだったね。可哀想に」
「男子三日合わざれば刮目してみよ、という言葉があってだな。人は、成長するのだよ。SSRレアだって大切に育まないと、ただのコモンになってしまうんだ。平凡な兄でした。恥の多い人生でした。しかし、妹のために、筆をとって、男子高校生百合作家という世界で唯一のポジションを得た、俺の成功物語について」
「それを読まされて、批評させた幼馴染への感謝はないのかな」
「幼馴染に、最敬礼っ」
女心というものを、完璧にマスターしました。フェミニズムと騎士道の中道を行くように、その細い道を、理解して、優しさと弱さとのグラデーションの中を、繊細な言葉という糸で紡ぎながら。
「いかん、妹が戻ってくる。得ることのない無意味な会話をしてしまった」
「わたしの時間を奪っておいて、今度、印税の半分をもらいます」
「俺の雀の涙の印税から、さらに奪おうと?」
「さっさと、売れるジャンルで書けば、BLとか」
「それが売れると思いたくない」
おれは、幼馴染のイスを抱えて、妹が帰ってくる最終段階をギリギリにかけぬけて、幼馴染を馴染みの家にペイバックして、自宅にキャッシュバックした。
「お兄ちゃん、子猫飼っていい?」
妹が、捨て猫を拾える優しさに目覚めようとしていた。しかし、ここは、捨て猫逓増の法則を教えて諦めてもらった方が良い気もする。
兄としては、妹の願いは絶対なのだが、しかし、常に真なる臣下は、欄干に首をつるされることになっても忠言のために諫言をすることを辞さない。猫は増えるですよ。
しかし、よくよく考えるとペットを飼うと結婚しなくなると聞く。
仕方ないにゃー、そのつぶらな瞳に惑わされる愚かな男を演じてあげようか。
「1匹だけだよ」
「うん」
さて、両親を説得するという兄としての最大の役目を果たしに行こうか。
もし拒否されたら、妹を誘拐して、日本一周旅行に行こう。印税万歳。
さて、シスコン妹系百合ケモナー文学を上梓しようか。
誰もいない荒野を切り開く一条の光の芒。
いい妹は兄を育てるのだ。
兄ガチャに成功したと、思わせてあげよう。ブラコンにいつになったら、なってくれるかなぁ。