後悔
あーあ。鼻提灯なんか作っちゃって。
あんたの幼い顔が一層若く見えるね。
まるで赤ちゃんにもどったみたい。
それはさすがに言い過ぎかな。
でもね。それぐらい幸せそうに寝てたの。
最近忙しかったでしょ?
大人になってからさ。
時間なんて一瞬で、気づいたらもう三十路。学生の時だって一瞬だったけどね、それとこれとはなんか違うというか。時間がどんどんと消費されてってるような。
上手く言い表せないけど。
懐かしかったよね。
うちらで無敵だー!って青春してたの。
誰も彼氏なんて作れなくて告白しては振られて慰め合って。誰かが抜け駆けとかして喧嘩しちゃって。最後は絶対仲直りするんだよね。
なんで忘れちゃってたんだろうなー。
今まで思い出す時間も無かったから。
大人ってやだなぁ。老いて死ぬだけなのに何のためにがんばってるんだろ。
あぁ、やめよ!そんなこと考えてたらきりないよ。
うちね。今すごく幸せなんだ。これでも。
結婚して先日初めて子供を授かったの。
この子のことを二人でどんな名前にしようとかどんな風に育てようとか考えて胸をドキドキさせる。
これ以上何もいらない。何も願いたくない。
だってなんかとられそうで怖いもん。
でも、もしもう一つ願うならあんたのことかな。
心配なの。
身を滅ぼしそうというか。うちが大学の時突き放したせいだよね、きっと。
立ち直ったって言ってたけどさ、そんな風に見えなくて。妙に引っかかるというか。
ごめんね。本当はそれだけ伝えたかったんだ。長文読んでくれてありがとう。
大好きだよ。
***
なんで。
なんで。
ねぇ。
なんで私の幸せなんて願ったの。
自分のことだけでいいじゃん。
それで事故に遭うとかほんと笑える。
こんな手紙ひどいよ。
こんなもの残していかないでよ。
幸せなんて一瞬なんだよ。
これ以上無い幸せだったよね?
他人なんか気にするから死ぬんだよ。
傲慢に他人の幸せまで願うから。
お節介なんだよ!
私のことなんかほっといたらよかったのに...。
意地でもお礼は言わないから。
...でも最後ぐらい話したかったな。