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電気羊飼いと天使の卵  作者: モギイ
第一幕
8/256

ヨウコの息子

 カフェの近くの駐車場 ローハン、ヨウコを一台の車の前に連れてくる。


「ほら、これが俺の車だよ」

「未来のスーパーロボットの車にしてはえらく古いわねえ」


 ローハン、ムッとした顔になる。


「もう、それやめてよ」

「ごめん。本当に気にしてるんだ」

「24世紀じゃ人間相手に『ロボット』って言葉を使うと、中傷行為になるんだよ。訴えられても文句は言えないぐらいのね。君に悪気がないのはわかってるけど」

「これからは気をつけるよ」

「ヨウコって俺の思ってたのとずいぶん違うんだな」

「サエキさんにも言われたわ。知り合う前から好きになっちゃってるなんて、ずいぶんと損な話よね。それでも付き合いたいの? 考え直す?」

「ヨウコはね、想像してたよりずっといい感じだよ。もっと品行方正で優雅で上品な女なんじゃないかと思ってたんだ」

「つまりその反対だって言いたいわけね」


 ローハンが近づくと、車のロックが解除される。


「こんなに古いのにオートロックがついてるの?」

「ヨウコ、こんな車好きだろ?」

「うん、レトロな感じがかわいいね。ピカピカにリストアしてあるけど、燃費が悪いんじゃない?」

「燃料なんていらないよ。ちゃんと24世紀風に改造してあるから」

「……空を飛んだりしないわよね」

「え、飛んだほうがよかったの? しまったなあ。二、三週間、待ってもらえる?」

「ううん、このままでいいから」


  ローハン、助手席のドアを開けて、ヨウコを乗せる。次に自分で乗りこもうとして頭をぶつける。


「いたっ!」

「あなた、背が高すぎるんじゃないの? 何センチあるのよ」

「186cm」

「ええ? もっとでかく見えるけど」

「俺、ヨウコと違って顔が小さいからそう見えるだけだよ」

「……もうちょっと低くても良かったんじゃないの」

「これがヨウコのタイプなんだよ」

「本人の前ですごい自信ね」

「ヨウコの深層心理を分析した結果こうなったの」

「並ぶと私がすごく小さく見えるじゃない」

「そういうの、気にするの?」

「しないけどさ」

「ほらね」

                                               

 運転しながら、ローハンが助手席のヨウコに話しかける。


「この車のすごいところはね」


 ローハン、急カーブの直前でハンドルから手をはなす。


「何してるの!」

「手離し運転が出来ちゃうところなんだ」

「ぎゃあ!」


 車は無事にカーブを曲がる。


「足もいらないよ」


 ローハン、両足を持ち上げる。


「信号、赤! ブレーキ踏んで、ブレーキ!」


 車が無事に止まる。


「びっくりしただろ」

「したわよ! 死ぬかと思った」

「ヨウコは心配性なんだね」

「そういうのは心配性って言わないの!」

「俺なら目をつぶってても運転できるよ。外部カメラがあるからね」

「それは実演しなくていいからね。頼むから普通に運転して」


        *****************************************


 学校につくと、迎えに来ている父兄がローハンに注目する。


「うわ、浮いてるなあ。あんた、もうちょっと普通の外見にできなかったの?」

「ヨウコがそのほうがいいって言うんだったら変えてもらおうか? 俺はかまわないけど」


 ヨウコ、ローハンをちらりと見る。


「……やっぱりそのままがいい」

「そうだ、皆さんに自己紹介しよう。『ヨウコのパートナーです』って説明した方がいいよね」

「やめてよ。笑顔で挨拶しといてくれればそれでいいわよ」

「ほら、でもシングルファーザーっぽい人もいるよ。ヨウコが狙われないように、しっかりアピールしておかないと」

「誰にも狙われたためしがないから大丈夫だって。それより自分の心配しなさいよ。シングルマザーのほうが圧倒的に多いわよ」

「じゃ、手をつないどこうよ」

「やめてってば。恥ずかしい」


 授業終了のベルがなって子供たちが教室から出てくる。ヨウコ、自分の息子を見つけて声をかける


「おーい。ルーク!」

「おかあさん」


 ローハン、前に出てルークに挨拶する。


「こんにちは。ルーク」


 ルーク、警戒したようにローハンを見る。


「誰、この人?」

「おかあさんのお友達。ローハンっていうの」

「ふうん」

「挨拶くらいしなさいよ」

「……こんにちは」


 ルーク、ローハンから目をそらしてヨウコを見上げる。


「今日は歩きなの?」

「ローハンの車に乗ってきたの」

「ふうん」

                                               

 帰りの車の中、ルークが後部座席に不機嫌そうな顔で座っている。


「今日からローハン、うちに泊まるからね」

「この人、新しい彼氏なの?」

「そうよ。格好いいでしょ」

「そう?」

「ちょっと、あんた、さっきから失礼じゃない?」


 ローハンが慌てて割って入る。


「いいよ。ヨウコ、気にしてないから」


        *****************************************

                                               

 ヨウコの自宅のキッチンで、ヨウコとローハンが話している。


「俺、嫌われてるのかなあ」

「ただの人見知りだと思うけど。コーヒー入れるわ。その辺座ってて」

「ヨウコの家、今見ると何でも床においてあるんだね」

「散らかってるだけよ。それって嫌味?」

「ちょっとルークと話してくるね」

「無理して仲良くならなくていいよ。そのうち慣れるからさ」


 ローハン、立ち上がると部屋から出て行く。


        *****************************************

                                               

 ローハン、ルークの部屋のドアの隙間から中を覗く。


「ルーク、ちょっといい?」

「なに?」

「ルークは俺のこと、気に入らないみたいだね」

「おかあさんのこと、いじめただろ」

「どうして?」

「昨日、おかあさん、泣いてたよ。どうせお前が泣かせたんだろ」

「泣いてたの? 俺のせいで?」

「泣いてないフリしてたけど、下手だからすぐわかるんだ」

「ちょっと誤解があっただけなんだ。もう仲直りしたから大丈夫なんだよ。心配かけてごめんね」

「……本当かなあ」

「本当だよ」

「おかあさんを泣かさないように俺が見張ってるからね。もし泣かせたら追い出すよ」

「分かったよ。泣かさないって約束するからここにいてもいい?」

「約束だよ。破るなよ」


 ルーク、ローハンを睨む。


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