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電気羊飼いと天使の卵  作者: モギイ
第二幕
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ローハン、人助けをする

 ルークの学校 迎えに来たローハンがルークを連れて歩いている。


「おとうさん、帰りにアイスクリーム食べて行こうよ」

「寄り道したらおかあさんに怒られちゃうよ」

「黙ってればわからないだろ?」

「ヨウコは俺が嘘をつくとすぐに気づくんだ。きっと超能力か何かあるんだよ」

「おとうさんが嘘つくの、下手すぎるんだよ。スーパーロボットのくせにどうしてそんなに尻に敷かれてるの?」

「敷かれてないよ。わかった、今日だけだよ」


 突然、後ろの方で叫び声があがる。ローハン達が振り返ると、若い男が女の子を羽交い絞めにしているのを人々が遠巻きに見ている。


「おとうさん、あれ、ルーシーだ。あいつナイフ持ってるよ。助けてあげてよ」

「最近おかしいのが多いなあ。薬でもやってるのかな? 人質がいちゃ俺一人じゃ難しいな。ウーフを呼ぶよ。車で待ってるんだ」


 ウーフ、不機嫌そうに通信で答える。


『学校の敷地内は犬は立ち入り禁止だろ? 特に大型犬は児童に危害を加える可能性があって危険なんだぞ』

『今回はいいんだよ。すねてないで早く来いって』

「おとうさん、ウーフ、何て言ってる?」

「来るってさ」


 次の瞬間、ウーフがフェンスを飛び越えて入ってくる。


「よう、ルーク! 今日は弁当、残さず食べたか?」

「ウーフ、人前でしゃべっちゃ駄目だって! ルークは動かないで。ここにいるんだよ」


 ローハンとウーフ、人ごみに紛れて男の方に歩いていく。


「正面からあの男の気をひいてよ。俺はこっそり後ろから回るから」

『あいつをやっつけるのか? 楽しそうだな。噛んでもいい?』

「なるべく怪我はさせないほうがいいよ。犬のくせに笑うなってば。ものすごく怖い顔しろよ」


 ウーフ、男の前に飛び出すと、うなり声をあげながら男にじりじりと近づく。男、驚いてルーシーに向けていたナイフをウーフに向ける。


 ローハンが背後から男に近づき、側頭部に肘打ちを食らわせる。くずおれる男の腕からルーシーを引き離すと、子供達から歓声があがる。


「ルークのロボットがやっつけたそ」「ロボット、かっこいい」


 ローハン、呆然としているルーシーに話しかける。


「大丈夫? おかあさんは来てるの?」


 ルーシーの指差す先を見ると、ステファニーが駆け寄ってくるのが見える。


「ヤバい! ウーフ、行くよ」


 ローハン、ルーシーをステファニーに引き渡すと、慌てて走り出す。ルークも慌てて後を追う。


「ローハン? ちょっと待ってよ」

「急いでるんだ。また今度ね」

「おとうさん、どうして逃げるのさ?」

「目立つとおかあさんに叱られるんだよ」

「もう遅いよ。この学校の人、どうせみんなおとうさんのこと知ってるじゃないか」

「ステファニーはもっとマズイいんだ。二度と近づくなって言われてるのに、しゃべったなんてバレたらおかあさんに殺される」

「ナイフ男は怖くないのにおかあさんは怖いんだね」

「ルークはそうじゃないの?」

「うん。俺もおかあさんの方が怖いや」


        *****************************************

                                               

 その晩 キッチンでローハンとヨウコ、お茶を飲みながら話している。


「なるほど。だからさっさと帰ってきたんだ」

「うん」

「警察官があんたを訪ねて家まで来るんだもん、驚いたわ。ステファニーまで泣きながらお礼に来るしさ。電話が鳴りっぱなしだよ」

「ごめん」

「謝ることじゃないでしょ。人助けしたんだから」

「ヨウコは俺が目立つと嫌がるだろ?」

「人助けは別でしょ。残って事情聴取、受けてこればよかったのに。現場からいなくなるから騒ぎが大きくなるんじゃない。あ、でもローカル紙の取材は断っておいたわ。しばらく学校にはサエキさんに行ってもらったほうがいいかも」

「そうだね」

「ローハンの格好いいところ見逃しちゃったなあ。今日は無理してでも一緒にいけばよかった」


 ヨウコ、ローハンの首に両腕をまわす。


「なんだ、心配して損したよ。叱られると思った」

「この場合は仕方ないでしょ? ルーシーが無事でよかったじゃない。そうだ、校長先生がウーフはこれから学校に入っても構わないって言ってたわよ。感謝状をくれるって」

「ほんとか? そんなに喜んでもらえるんだったら血祭りにあげとけばよかったな」

「それは冗談ってことにしとくからね。帰り際に警察の人がどうして子供たちがローハンの事を『ロボット』って呼ぶのかって聞いてたわよ」

「なんて言ったの?」

「実はうちの人、ロボットなんです、って言ったら笑ってたわ。ウーフとセットでスカウトしたいぐらいだってさ」

「転職しておまわりさんになろうかな」

「あんたが制服着て歩いてたら女ばっかり寄ってくるでしょ? だめよ」


 ウーフがテーブルの下からヨウコを見上げる。


「俺も牧羊犬よりもクールな警察犬の方がいいなあ」

「それじゃ警察にバイトに行ってくる? バイト料、出るのかな?」

「容疑者を逮捕するときにだな、警官が容疑者の権利を読み上げるだろ? あれ、やってみたいんだ」

「『あなたには黙秘権があります』ってやつ? そんなの犬から言われたくないなあ。やっぱりあんたは羊の面倒見てるのが一番いいんじゃない?」


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