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電気羊飼いと天使の卵  作者: モギイ
第一幕
26/256

ローハンの妹

 居間でサエキとヨウコがソファに座ってテレビを見ていると、ローハンが部屋に入ってくる。


「サエキさん、ハルちゃんが来たよ。今、ゲートのところにいる」


 サエキ、急いで立ち上がる。


「俺が出てくるわ」


 サエキ、ヨウコ達を振り返る。


「俺、イケてるかな? どっかおかしいところない?」

「いつも通りって言う意味だったら大丈夫よ」


 サエキ、うきうきと出て行く。


「女の人なんだ」

「うん。ハルノって言ってね、俺と同じ頃に作られたんだ」

「ニンゲンモドキなのね?」

「だからその呼び方はやめようよ。ハルちゃんは優秀なんでウサギさんのアシスタントしてるんだ。最初のうちは一緒に講習受けたりしてたし、俺の妹みたいなもんかな」

「ドラミちゃん……」

「え、なに?」


 サエキ、ハルノを連れてはいってくる。


「ヨウコちゃん、この子、ハルノっていうんだ。今日は遊びに来たんだって」


 ハルノ、ぺこりと頭を下げる。


「こんにちは。ガムランが許可をくれたので遊びに来ちゃいました。ずっと21世紀を見てみたかったんです」

「遠いところからいらっしゃい。今、お茶を淹れようと思ってたとこなの。ハルノさんは何を飲みたい?」

「紅茶をいただきます」

「何か入れる? ミルクとレモンならあるけど、24世紀でも入れるのかしら?」

「レモンがいいな」


 キッチンに向かうヨウコに、ローハンがついて行く。


「やっぱりニセ人間だけあって、めちゃめちゃかわいいわね。アイドル歌手みたい。サエキさんの好きそうなタイプだわ。あの子、20代前半よね」

「誕生日は俺と数日違いだと思うけど。俺の外見の年齢はヨウコに合わせてあるからさ」

「そりゃ、申し訳ないことしたわね」

「ほんとにそう思ってる?」

「思ってないよ」

「思ってないこと言うなよ」

「なんでついてくるのよ? せっかくハルノさん、来てくれたのに」

「かわいい子といると誰かがヤキモチ焼くから」

「妹分なんでしょ?」

「本当はヨウコと二人きりになりたかったの」


 ローハン、ヨウコを後ろから抱きしめる。


「そりゃ無理だわ。ハルノさんも来たから」


 ハルノ、おずおずと部屋に入ってくる。


「すみません。お邪魔でしたか? キッチンを見てみたくて」

「ううん、全然。好きなところ見てもらっていいよ。あれ、レモンないや。ローハン、裏から摘んできてくれる?」

「了解」


 ローハン、出て行く。


「やっぱり24世紀とは全然違うんでしょ? 博物館に来た気分にならない?」

「基本的なところはそれほど変わってないんですよ。不思議なくらい」


 ハルノ、缶切りを手に取ると不思議そうに眺める。


「私は24世紀には行けないんだって。サエキさんが写真を見せてくれるぐらいかな。ガムさんが見せても無難だって判断したのだけだから、あんまり面白くないんだ」


 ローハン、戻って来るとヨウコに手を差し出す。


「ヨウコ、ほら、カマキリあげる」

「カマキリ? うわ、持って来たの?」

「この間、カマキリを見つけたらグッドラックだって、クリスばあちゃんが言ってたからさ」

「だって、見つけたのはあんたでしょ?」

「あ、そっか」

「良かったね。きっといい事あるよ」

「俺はヨウコにあげたかったのにな」

「レモンは?」

「忘れてた。はい、カマキリ」


 ローハン、ヨウコの手にカマキリをとまらせる。


「どうすんのよ。これ?」

「幸運のかけらぐらい残ってるかもしれないよ。レモン、取ってくる」


 ローハン、急いで出ていく。


「ねえ、ヨウコさん。あの人、いつもあんな感じなんですか?」

「うん。変でしょ」

「信じられない」

「どうして?」

「だってあの人、私と同じ(モデル)なんですよ。外見はずいぶん違うけど」

「じゃあ、あなたもきっと凄い人なのね」

「え?」

 

 ヨウコ、ハルノにお菓子の皿を渡す。


「これ、むこうに運んでもらっていい? すぐ、お茶もっていくね」


       *****************************************

                                               

 玄関、一同がハルノを見送っている。


「今日は急に来ちゃってごめんなさい」


 サエキ、嬉しそうに笑う。


「いつでも遠慮なく来てよ。向こうまで送ってこうか?」


「ううん、一人で大丈夫」


 ハルノ、ヨウコの方を向く。


「ヨウコさん。ローハンがあなたのことを好きなのは、そう刷り込まれてるからなのよ。分かってるんでしょ?」


 ローハンが慌てて口を挟む。


「ハルちゃん? なんで急にそんな事言うの?」

「あまり調子に乗って尻に敷かないでくださいね」

「ハルちゃん、やめなよ」


 ヨウコ、うなずく。


「うん、わかったよ」

「ヨウコ? わかったってどういう意味だよ?」

「気にさわったらごめんなさい。じゃあ、失礼します」


 ハルノが出て行き、ローハンがいそいでヨウコの肩を抱く。


「ヨウコ、俺、尻に敷かれてるなんて思ってないからさ。ヨウコになら何をされても言われても平気なんだよ」

「そうなのよね。そこが問題なんだわ。ドラミの言う通りじゃない」


 ヨウコ、ローハンの腕を振り払って部屋に入る。


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