告白
24世紀 『会社』の一室 素顔のサエキがソファで眠っているところにガムランが入ってくる。ガムラン、向かい側の椅子に座るとサエキの顔をじっと見つめる。 気配に気づいたサエキが目を開ける。
「うわあ!」
「おはよう」
「何で黙って俺の顔を眺めてるわけ? チュウでもされたほうがまだましだ」
「俺とサエキさんが築き上げてきたこの素晴らしい友情も今日で終わりだと思うと寂しくてな」
サエキ、寝ぼけた顔で眼鏡をかけると、不思議そうにガムランの顔を見る。
「……何を言ってるんだ?」
ガムラン、笑う。
「結婚、おめでとう」
「……ありがとう」
「テクノロジーと相性が悪いとか言いながら、うちの最新型ロボットと結婚しやがって」
サエキ、頭を掻きながらあくびをする。
「その相性とは若干意味合いが違う気がするな」
ガムラン、立ち上がると窓辺へ行き外を眺める。
「ヨウコさんとローハンはちゃんと『天使』やってる?」
「お前のやり方にはいまだに腹を立ててるみたいだけどな。当分かかわらないほうがいいぞ」
「なんだ、まだ怒ってるのか。すべてヨウコさんのためを思ってやったことなのにな」
「それにしちゃ、危なっかしいことばかりやらかしてくれたじゃないか。リュウにヨウコちゃんの頭を撃ち抜かせるなんてめちゃくちゃだ。危うく手遅れになるところだったんだぞ?」
「でも、あの時は俺の出してやったヒントのおかげで切り抜けられただろ?」
「ヒントをくれたのはキースだよ。お前があいつを強制終了しろって言ってきた時にさ」
ガムラン、サエキを振り返る。
「あの時、サエキさんはフギンを強制終了しなかった。俺の指示にそむいてね」
サエキ、気まずそうな顔になる。
「ありゃ? バレてたの?」
「フギンがどれだけヨウコさんの周りを未練がましくうろうろしてても、出入りを禁じるどころか親身になって相談に乗ってやってさ、最後には二人の仲まで許してやった。あいつがそのことで、どれだけサエキさんに感謝してたか知ってる?」
ガムラン、サエキに向き直るとサエキの顔を見つめる。
「おかげで俺はいまだにサエキさんに頭が上がらないよ」
「はあ? どうしてお前が?」
ガムラン、サエキに向かって深く頭を下げる。
「サエキさん、ありがとうございました」
戸惑った様子のサエキにガムランが微笑む。
「まだ、わかりませんか?」
「お前……もしかして……」
サエキの顔色が変わる。
「……キース? キースなのか? まさか……」
ガムラン、笑う。
「そう、僕はキースです。やっと気づいてくれましたね」




