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電気羊飼いと天使の卵  作者: モギイ
第四幕
182/256

恋人発覚

 翌朝 キースと並んでホテルから出て来たヨウコが、落ちつかな気に周囲を見回す。


「パパラッチに見られてないかな?」

「目撃情報を流しまくっておいたから、今頃は市内のホテルを張ってるよ。朝から鬱陶しいのは嫌なんだ。滞在先がバレると面倒だから、電車で市内まで出てそこからタクシーに乗ろう」

「ハリウッドスターってボディガード付きのリムジンで移動するんじゃなんだね」

「庶民的でいいだろ?」


 キース、ヨウコを見てニヤリと笑う。。


「今日は面白いことになるよ。帽子とサングラスだけは何があっても身につけていてね」


        *****************************************


 ヨウコとキースがタクシーで撮影所の入り口に乗りつけると、待ち受けていた報道関係者が車を取り囲む。


 ヨウコが不安そうに窓から外を覗く。


「うわ、凄い人だよ。昨日私を連れてきたからこんなに集まってるんだよね?」

「そうだよ。デビューしてから13年間、一度も女性関係を認めたことがなかったからね。恋人報道は何度もあったけど、毎回ガセだっただろ?」


 キース、ヨウコの顔を見て笑う。


「今回は本物だよ」

「だからって私が一緒にいちゃまずいでしょ? 私だけこのままホテルに戻るよ」

「だーめ、さ、行くよ」


 キース、ヨウコを車から降ろすと肩を抱いて歩き出す。


「そんなにくっついちゃダメだって」

「どうしてダメなの?」

「こんなことしてていいの? ほら、海外の記者まで来てるよ」

「面白くなるって言っただろ? ヨウコさんは笑顔でいてくれればいいよ」


 リポーターたちがキースに口々に声をかける。


「ミスターグレイ、その女性は?」


 キース、愛想よく笑顔で答える。


「僕の彼女なんですよ。きちんと紹介したいところだけど、今はまだ話せないんだ。今から仕事なので失礼します」


 キースとヨウコ、そのまま歩いて建物のロビーに入る。


「人妻だってのに公認になっちゃったわよ。マスコミには絶対に写真を撮られるな、って言ったのはあなたでしょ?」

「顔を隠してればどこの誰だかわからないだろ? ああ、面白かったなあ」

「何を考えてるのよ? キースらしくないよ」

「またヨウコさんの『キースらしくない』か。生まれて初めて彼女ができたんだから、みんなに知ってもらわなくっちゃね」

「私が誰だかバラすわけにはいかないのに?」

「僕の正体だって誰も知らないんだ。同じことだよ」


 キース、いきなりヨウコを抱き寄せるとキスする。


「うわ、びっくりした」

「報道陣にサービスしてみたよ。ガラス越しだけど見えたかな?」

「すごく楽しそうだね」

「ヨウコさんは楽しくないの?」


 ヨウコ、笑う。


「楽しいよ。週刊誌とタブロイド、買い占めないとね」

「正面から撮られたのはピンボケにしておいたよ。そのサングラスと帽子じゃ、たいして美人じゃないな、ってぐらいしかわからないだろうけど」

「キースさあ、最近失礼じゃない?」

「たまには僕にも本気で怒ってみたらどうなのさ? ローハンなら間違いなく叩かれてるのになあ」


 部屋に入るとミカコが近づいて来て頭を下げる。


「おはようございます。今朝は大変な騒ぎですね」


 キース、無邪気に笑って見せる。


「そうですか? ミカコさん、今日もお綺麗ですね。日本の撮影所は勝手がわからないので、ミカコさんがいてくださって本当に助かってます。今日もまたお願いしますね」


 ヨウコ、ミカコに聞かれないよう『通信』でキースに話しかける。


『うまいわねえ。無邪気な外国人って感じが出てるわあ』

『俳優やってるだけあって演技は得意なんだよ。ヨウコさんは明日はもう来ないほうがいいね。今日は楽しんで帰ってよ』

『じゃ、私、ここで見てていいのかな。頑張ってきてね』


 キース、ヨウコにキスするとぎゅっと抱きしめる。


「じゃあヨウコさん、また後でね」

『人前でやりすぎだってば! ミカコがひいてるじゃない』

『このくらいやっとけば付きまとわれずに済むだろ? 報道陣は五分でまいちゃうから、帰りはラーメンを食べに行こうよ』


 キースとミカコが一緒に立ち去ると、ヨウコが宙に向かって話しかける。


「ローハン!」

『はーい』

「今朝はずいぶん静かじゃない。車を降りたあたりから覗いてたでしょ?」

『ホテルを出るまでキースに締め出されてたからね。おとなしく締め出されておいてやったよ。キース、楽しそうだな。あんなに浮かれてるの初めて見たよ』

「……あのさ、最初に言っとくけど、私、キースと寝ちゃったからね」

『そこまで漕ぎ着けるのにずいぶんとかかったね。で、どうだったの?』

「……普通、感想を聞くのかなあ? 一応は夫でしょ?」

『なんて言って欲しかったの? ええ、ヨウコ、俺というものがありながら何考えてるんだよ、って?』

「……いまさらよねえ」

『だろ?』

「昔はチュウでも大騒ぎしてたのにね」

『いつの話をしてるんだよ? ヨウコは俺に遠慮なく憧れのハリウッドスターと不倫してくれればいいんだからね』

「やだなあ、その言い方。……でも、ありがとう。子供たちは元気にしてる?」

『うん、おかあさんにかわいがられて楽しく過ごしてるよ。こんなに甘やかされちゃ戻ってからが大変そうだな』


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