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電気羊飼いと天使の卵  作者: モギイ
第一幕
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サエキの計略

 翌朝の土曜日、ヨウコが目覚めて隣にローハンがいなのに気づく、慌てて部屋から出るとキッチンでローハンが朝食を作っている。


「おはよう。勝手にいろいろ使ってるけどいいよね?」


 ヨウコ、ほっとした顔でローハンに歩み寄る。


「よかったあ。ローハンに会ったのが夢だったらどうしようかと思ったわ」

「昨日も同じようなこと言ってたね。ヨウコ、あんまりよく眠れなかったみたいだけど」

「え、わかった?」

「ごめんね。今晩はソファで寝るよ」

「あのさ、すぐに慣れると思うから一緒に寝ようよ。あんた、馬鹿でかいからソファじゃ窮屈でしょ?」

「いいの?」

「ローハンはこれからずっと私といてくれるんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、今からはそのつもりで付き合おうよ」

「……ヨウコって俺のこと好きなんだね。あまりに態度が悪いから、どこまで本気なのか不安になってたよ」

「どうして余計な事いうのかな? 好きでもない男を家に連れ込むほど落ちぶれちゃいないわよ」

「やっぱり素直じゃないなあ」


 ローハンがヨウコを抱きしめているところに、入ってきたルークが声をかける。


「ふうん。約束は守ってるんだね」


 ヨウコ、慌ててローハンを突き飛ばす。


「うわ、いつからいたの?」

「今起きたところだよ。あれ、目玉焼きとサラダ? 今日はトーストだけじゃないんだ。珍しいなあ」

「どうしてみんな余計なことしか言わないの?」

                               

        *****************************************

               

 キッチンのテーブルでヨウコとローハンがコーヒーを飲んでいる。ルークは後ろのソファでテレビを見ている。


 ローハンが顔を上げる。


「あれ、サエキさんが来たよ」

「どうしてわかるの?」

「外にカメラを取り付けておいたんだよ。入ってくるように伝えるね」


 しばらくして、サエキがドアを開けて入ってくる。


「おじゃまします」


 ルーク、鬱陶しそうにサエキを睨む。


「おかあさん、この人、誰?」

「ルーク、まずはこんにちは、でしょ」

「こんにちは」

「サエキさんっていうのよ。ローハンのお友達」

「なんだ」


 ルーク、立ち上がって部屋を出て行く。


「すごい敵意を感じたぞ。俺、嫌われてる?」

「あの子、ローハンが気に入らないのよ。私を泣かすんじゃないかと疑ってるみたい。いつものパターンだからさ。そのうちに慣れるでしょ」

「そうはいかんだろ。信用できない男と同居だなんて、ルークだってかわいそうだ。俺が話してくる。ローハン、ついて来い」


 サエキ、ローハンを連れて部屋から出ていく。


        *****************************************

                                               

 ルークの部屋の前、サエキがドアをノックするとドアが開いてルークが顔を出す。部屋の棚にはロボットの人形がたくさん飾ってある。


「何の用?」

「ルークはロボットが好きなんだね」

「うん」

「それじゃあ、すごい秘密を教えてあげる。ここにいるローハンはね、君のおかあさんを守るために未来からやってきたスーパーロボットなんだ」


 ルークとローハン、驚いた顔をする。


「何言ってるの? おじさん、頭、おかしいの?」

「ちょっとサエキさん。俺、ニンゲンだってば」


 サエキ、にやりと笑う。


「おかあさんに似て口が悪いな。今、証拠を見せてあげるよ」


        *****************************************

                                               

 ヨウコがキッチンでそわそわしていると、ルークが走って入ってくる。


「おかあさん、ローハンってスーパーロボットなんだね!」

「ええ!」


 後から入ってきたサエキがルークに話しかける。


「これは俺たちとルークとの秘密だよ。分かってる?」

「うん、分かってる」


 ヨウコ、訝し気にサエキの顔を見る。


「どうやってそんな事、信じさせたのよ? また頭の皮、切ったんじゃないでしょうね」

「まさか。プレステのゲームをクリアしてみせただけだよ」

「おかあさん、凄かったんだよ。画面も見ないのに一回もミスしないんだよ」

「そりゃすごいわ。あんた、器用なのね」


 ローハン、赤くなる。


「褒められちゃった」

「ロボットはおかあさんがすごく好きなんだって。ずっとうちにいてもらってね」


 ヨウコ、小声でローハンに話しかける。


「えらい気に入られようね。でもロボットなんて呼ばせておいていいの? あんなに嫌がってたのに」

「その言葉は聞くだけでも鳥肌が立つんだけどさ、仕方ないだろ?」


 サエキが笑う。


「ルークに気に入ってもらえるんだったら、たいした事じゃないだろ。この時代じゃロボットっていうと格好いいんだよ。知らないのか?」


 ヨウコ、ローハンの前に、コーヒーのカップを置く。


「ほら、コーヒー、温め直しておいたよ」


 ルーク、驚いた顔をする。


「あれ、ロボットなのにコーヒー飲むんだね」


 ヨウコ、笑う。


「スーパーロボットだからなんでもできちゃうよ」

「おかあさんもロボットが好きなの?」

「うん、スーパーロボットだから大好き」


 ローハン、また赤くなる。


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