表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題シリーズ3

好きだった人:砂

作者: リィズ・ブランディシュカ



 一年前まで好きだった。


 陸上部にいた先輩。運動場で、一生懸命に走っているあの人。


 けれど、今はもう好きじゃない。


 恋が冷める音は、どんな音かと聞かれたら、それは音もなく崩れていく砂の音だと思った。


 実際の音はないけれど、かすかにサラサラと流れ落ちる音が、聞こえてしまう。


 先輩の諦めた声が聞こえてきた時、それが恋が冷める時だったと思う。


「馬鹿だったんだ」


 彼は言う。


「馬鹿な夢を見ていたんだ」


 そして否定する。


「俺のやっていた事は無駄だったんだって分かった」


 私は悲しくなった。


 あんなにもがんばっていたのに。


 毎日夕暮れまで走りこんでいたのに。


 他ならない先輩がそれを「馬鹿だ」と否定していて、悲しくなった。


 一年前、事故で引退した先輩はーー陸上部だった先輩はすっかり変わってしまった。


 もう走る姿を見ることはない。


 前だけを見つめていたまっすぐな目も。


 頑張り続けていた情熱もどこかに消え去ってしまった。


 好きだった人は、もうどこにもいなくなってしまったのだ。


 先輩に憧れて、陸上を始めた私は、いつももう存在しない人の背中を追いかけながら運動場を走っている。


『この乾いた土のトラックが、この恋のようにサラサラと今すぐ崩れ落ちてしまえばいいのに』


 って、そう思いながら。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ