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word9 「女子アナ 風呂」①

 いや…………。


 待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て――――――――。


 翌日も俺の脳内ではこの言葉が連呼された。


 ずっと頭を支配する、何でも見ることができるらしい「画像検索」と「動画検索」のこと。余りにも神機能過ぎて……いつまで経っても理解が追い付かない。


 だって検索の幅が広がるどころの話じゃないぞ。今まで思っていた黒いパソコンのスペックの10倍以上に進化した。


 何でも見ることができるって、それは流石に無しじゃないか……。俺は既にかなり無しなことをしているにもかかわらず引いてしまった――。


 

 オフィスの中でちらりちらりと、右へ左へ視線を移す。ファイルをめくっている者、キーボードを叩いている者、トイレだろうか……席を立って部屋から出て行く者。見慣れた職場の人間達が、今日も当たり前の日々を過ごしている。


 俺の視線に気づくことも無く、自分がやるべき作業をしている。


 男もいるし、女もいる。20代もいるし、そろそろ定年退職じゃないのかと思ってから2年は経った60歳前後だろう人もいる。


 何でも見れるのであれば――ここにいる全ての人間の裸も見れる訳だ――。


 いや、待て待て――。本当にそんなことできるのか――。


 顔を落として、唾を飲み込んでからもう1度顔を上げる。裸が見れるのであれば、まずは憧れの女上司、秋野さんの裸が見てみたい。これは画像検索と動画検索の存在を知らない頃からだって思っていたことだ。


 常日頃からそんなこと考えていないが、休憩中の後ろ姿に出会ったりしたら、脱いだらどんな感じなんだろうとけつを見ながら想像してしまうのだ。男だから。


 しょうがない。男だから。


 でも無料で裸が見れるのであれば、秋野さん以外の裸も見てみたい。他の若い20代30代の女性社員はもちろん……男のだって見れるのであれば見たい。


 面白そうだ、この人どんなち〇こしてるんだろうとか知れるのは。馬鹿にして笑いたい訳でもないけど、普段よそよそと接している間柄の人間にやたらと毛が濃い場所があったり、ヘソが出てるのを見つけられたらなんとなく嬉しい。


 でも裸を見るならやっぱり女のだよな。身近な人に限らず、女優やアイドル、最寄りのスーパーで最近よく見かける良い胸をしている女のとか。


「ううんっ」


 ――けど、何でも見れるからと言っていきなり女の裸なんて検索するのか。考えていると息子が立ち上がりそうになったので、咳払いをして方向性を変える。


 なんと言うかスマートじゃないよな。もう既にエロい検索はしてしまっているので今更罪悪感どうこうは無いが、すぐに頭がピンク色になってしまう自分が情けない。客観的に見て、気持ちが悪い。


 何でも見れるのならエロいことじゃなくても見たいものだってたくさんある。ちゃんと趣味がある人間だから。例えばあれだ……そう……………。


 …………………………。


 あれだあれ、この前見た映画の舞台版があったらしいという情報を仕入れたけど、見る方法が無かったのだ。あれは見たいんじゃないか。他にも何かしら見たいものはあるはずだ。


 そうだ。せっかく何でも見れるんだ。もっと有意義な使い方がきっとある。


 学者の類の人間だったら大喜びだぞ。まだ観測されてない現象とかも見れる訳だから。実験しなくても結果が見れたり。あとは宇宙の果てとか未知の深海魚とかも月額無料で見放題。


 喉から手が出るどころか、喉から頭や足も出るくらいにほしいはずだ。


 俺はあまり興味ないけども……。でも学者の気持ちになることでありそうな気がしてきた。


 きっと何かある、家に帰るまでに見つけよう――。俺は余計なことを考えながらも、昨日と違ってテキパキと仕事をこなした。

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