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[台本]あの頃に聞いた恋の歌は、(仮題)  作者: みっきー・こえパラ
1/3

あすこそ

あの頃に聞いた恋の歌は、今聞くと応援歌になっていた。


ひさと「♪いつも一緒なのに

    ♪いつもいつも一緒なのに

    ♪素直って言葉がどこかに飛んでいく

    ♪一言伝えたいだけなのに

    ♪ただただ想い伝えたい・・・なのに

    ♪一歩は前に進まず、後ろにしか進んでくれない

    」

ひさとが公園で口ずさむのは、人気そこそこのグループのそこそこ知られた恋の歌。

たまたま聞いていたサブスクの音楽アプリで流れて来た歌。

詞が何故かすごく気になり、何度も聞いて、いつの間にか覚えてしまった。

・・・・

・・・・

・・・・だから驚いた。

きくの「♪恋は始まらないまま停滞中

    ♪想いは伝わらないまま胸の奥

    ♪奥の奥の奥の奥

    ♪そんなこんなでままならないままの恋

    」

ひさとが振り向くとそこに一人の女子がいた。

ひさとの視線を受けて、女子が微笑む。

きくの「ありがとうございます。それじゃ。」

そう言って、女子・・・いや彼女は去っていった。

ひさと「・・・あの歌知ってるんだ。少し驚いたな。」

自分が歌っていた歌に、突然入り込んできたのだから、本当はもっと何か驚きそうだけど、何か、驚きとはまた違う感情が浮かんでいた。その正体に気づくのは・・・結構後。

 

 この歌は、恋の歌・・・だと思う。なかなか踏み出せない、踏み出すことができない恋心を歌った歌。踏み出せない気持ち・・・それが、ひさとの心とシンクロしていたのかもしれない。

ひさと「♪一歩は前に進まず、後ろにしか進んでくれない・・・。」

きくの「その詞は、実感こもってますね。」

ひさと「実感ね。俺の気持ちを、そのまま歌ってくれてるように感じてるからですかね。」

きくの「そうなんですね。私も、同感です。♪一歩は前に進まず、後ろにしか進んでくれない。」

今日も公園で、入り込まれた。

ひさと「でも、だからこそ、この歌いいなあと思えます。」

きくの「どうしてですか?」

ひさと「だって、自分だけじゃないって、思わせてくれるからです。」

きくの「自分だけじゃない・・。」

ひさと「同じ気持ちの人がいるんだなあと思えるだけで、元気になれることもありますよね。」

ひさとと彼女の視線が重なる。

きくの「あの。その気持ちと言葉、いただいてもいいですか?」

ひさと首をかしげる。そして、再び彼女の目を見る。

真っ直ぐに見ているその目に、そのままの想いを答える。

ひさと「いいですよ。・・・よく分かりませんけど。」

きくの「ありがとうございます。それじゃ。」

そう言うと、彼女は去って・・・いや戻って来た。

きくの「私は、きくの。あなたは?」

名前を聞かれている。

ひさと「俺は、ひさと。」

きくの「ひさとさん。ありがとうございます。」

名前を聞かれて、思わず名前を言ってしまった。

きくのは、改めて走り去っていった。後ろ姿はなぜかうれしさが感じられた。

ひさと『何で、名乗ってしまったんだろう。』

まだ2回しか会っていない彼女。でも、何度も会っている気がする・・・。

ひさと『気のせいか。気のせいだな。・・・・彼女、きくのさん。』

― 髪長かったな・・・。


人気そこそこのグループ・・・「あすこそ」のチャンネルを流していると、新曲が流れて来た。

あすこそ「♪一人では抜け出せない心のループ

     ♪前に前に進んでもふりだしに戻ってしまうループ

     ♪一歩前に進んでも後ろに進んでしまうなんて

     ♪終わることない永遠

     ♪♪♪

     」

前の曲と同じような歌詞の印象。ただ、違うのは曲調。

スローテンポバラードのような以前の曲と違い、こちらはアップテンポ。

楽しく、明るい雰囲気さえ伝わってくるような。

あすこそ「♪そんなときに聞こえたあったかいビート

     ♪君だけじゃない

     ♪僕も同じ気持ち君と同じループ感じてる

     ♪君だけじゃない

     ♪同じ気持ちの君がいることで僕は少し元気になれた

     ♪同じループかと思ってたのに君のループがシンクロしてる

     」

ひさとは、グサッときた。きてしまった。

恋に出会って、そして、恋に悩み、踏み出せない。出ようとしてまた戻ってしまう恋のループ。しかし、同じ気持ちを持つ人がいると思うだけで、今までのループとは違う感じになってきていた。

ひさと「この歌、いいね。」

あすこそ「♪そんな君に出会えたからこそ気づいたことがある

     ♪もしかしたら もしかしたら

     ♪そう思って 前に進むのを止めた。

     ♪そうだ 後ろに進んでみよう

     ♪180度反転してみる

     ♪そしたら見えた 新しい道

     ♪そうかわたしは 前に進めなかったわけじゃない

     ♪そうかわたしは 道に迷っていただけ

     ♪気づいた私は 前に前に進んでいくいく

     」

・・・

・・

そこそこ知られた恋の歌・・・「ままならないまま」の歌の次に出たこの歌、

「ループ×ループ×ループ?」

そこそこ知られたグループは、この歌で、そこそこどころでなく、一気に人気が高まり、誰もが知る歌へとなっていった。いろんなネットの見出しはこうなった。


「ループから抜け出してきたグループ“あすこそ”」


いつもの公園で、ゆったりと過ごす時間。

ひさと「♪いつも一緒なのに

    ♪いつもいつも一緒なのに

    ♪素直って言葉がどこかに飛んでいく

    ♪一言伝えたいだけなのに

    ♪ただただ想い伝えたい・・・なのに

    ♪一歩は前に進まず、後ろにしか進んでくれない

    」

そこそこ知られたグループ・・・だった「あすこそ」のそこそこ知られた歌

ひさと「♪恋は始まらないまま停滞中

    ♪想いは伝わらないまま胸の奥

    ♪奥の奥の奥の奥

    ♪そんなこんなでままならないままの恋

    」

この歌を口づさむと、恋の物語が頭の中で進んでいく。自伝恋物語。

心の中には、淡い、甘い、苦い、こそばゆい感情が回る。

ここで、入り込んでくる声あり。

きくの「♪一人では抜け出せない心のループ

     ♪前に前に進んでもふりだしに戻ってしまうループ

     ♪一歩前に進んでも後ろに進んでしまうなんて

     ♪終わることない永遠

     ♪♪♪

     」

ひさとは、ただただ聞いている。その歌を。声を。

きくの「♪そんなときに聞こえたあったかいビート

     ♪君だけじゃない

     ♪僕も同じ気持ち君と同じループ感じてる

     ♪君だけじゃない

     ♪同じ気持ちの君がいることで僕は少し元気になれた

     ♪同じループかと思ってたのに君のループがシンクロしてる

     」

きくのが、ひさとを見る。アイコンタクト。

きくの・ひさと「♪そんな君に出会えたからこそ気づいたことがある

     ♪もしかしたら もしかしたら

     ♪そう思って 前に進むのを止めた。

     ♪そうだ 後ろに進んでみよう

     ♪180度反転してみる

     ♪そしたら見えた 新しい道

     ♪そうかわたしは 前に進めなかったわけじゃない

     ♪そうかわたしは 道に迷っていただけ

     ♪気づいた私は 前に前に進んでいくいく

     」

・・・

・・

余韻が辺りを包む。

ひさと「ままならないままは、恋の歌。私の気持ちに寄り添ってくれてた。そんな歌。

それが、今では・・・。」

きくの「今では・・・なんですか?」

ひさと「そんな気持ちを何度も何度も・・ループして歌っていたら、それで心が軽くなっていた。そして、“後ろに進んでみよう 180度反転してみる そしたら見えた 新しい道”、この2曲を続けて聞くと、恋の歌が、心に寄り添う歌が、今度は、心にエールを送っていました。」

ひさと、きくのを見つめる。

ひさと「あの2曲は、ふたつでひとつの物語・・・だと思いました。」

きくの、破顔一笑。

きくの「ありがとうございます。」

ひさと、きくのに、確認したいことを尋ねた。

ひさと「きくのさん。ひとつお尋ねしてもいいですか?」

きくの、笑顔から一気に緊張へと変わる。

きくの「はい。」

ひさと「きくのさんの歌声。はっきり言って、本物です。」

きくの「ほ・・ほんもの・・!?!?」

ひさと「本物の、“あすこそ”の、」

きくの「“あすこそ”の・・!?!?」

ひさと「ボーカルの方・・・。」

きくの「はいそうです。」ひさと「の歌声みたいですね。」

・・・

・・

きくの「えっ、はい。ありがとうございます。」

ひさと「本当に歌声素敵です。今日またここで聞けてよかったです。」

きくの「びっくりした。びっくりした・・・。」

きくの胸のバクバクが止まらない。

深呼吸をする。すう、はあ、すうはあああああ。

きくの「あの、私も、ひとつお聞きしていいですか?」

ひさと「はい。」

きくの「ひさとさんは、“あすこそ”の、ライブには、行かれたこと、ありますか?」

ひさと「いえ、残念ながら。」

ひさと、きくのから目を外し、公園からの風景を見つめる。

ひさと「一気に、人気グループになって、なかなかライブチケットも手に入らなくなりました。一度でいいから行ってみたいです。」

きくの「そうですか!!」

嬉々とした声で、きくのは答える。

ひさと「きくのさんは、ライブ、行かれたことあるんですか?」

きくの「はい、出たこと・・いえ、行ったことあります。」

きくの、少し言い直す。少し天然が顔を出しかけた。

ひさとが風景から目を離して振り向くとそこにきくのの、顔があった。

きくの・ひさと「わあっ!!?!」

間近で顔を向き合って驚く2人。

きくの「ご・・ごめんなさい。」

ひさと「いえ。こちらこそ。」

いつの間にか、きくのがひさとの側へと来ていたのだ。

きくの「あの、何も言わずに、これを受け取ってもらいたいんです。」

きくのが、1通の封筒を手渡してきた。

ひさと「これは・・?」

きくの「あのその、ぜひとしか言えないんですけど。受け取ってください。」

きくのの言葉に、まさとは、封筒を受け取る。

きくの「それでは。また。」

きくの、いつかの日のように走り去っていく。

そして、いつかの日のようにまた戻って来た。

きくの「あの、よろしくお願いします。」

そして、再び走り去っていった。

ひさとは、封筒を開封した。

中には、“あすこそ”のライブチケットが1枚入っていた。

手紙が一枚。

「ライブで、生で、ぜひ聞いてみてください。」






ひさとは家に帰ってから、じっと封筒とチケットと手紙を眺めていた。


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