20.二度目のプレイヤーキラー
――……はい、終了。七人を倒し、合計一一個の宝箱が地面に転がった。
それにしても、乱戦の間に何か仕掛けてくると思っていたのだが、コープスは結局現れなかったな。
どこかから今も狙っているのだろうか? ……うーん、わからん。
「まあ、見えない奴のことを気にしていても意味がないか。帰るぞ、ニャーチ……って、何をしているんだ?」
俺が振り返ると、ニャーチが大きな木の後ろに隠れて顔だけを出していた。
「……お、終わったのかにゃ?」
「まだ一人だけ隠れているけど、一応は終わったな」
「か、隠れているのかにゃ! それじゃあ、まだ終わっていないのにゃ!」
……AIも、震えるんだな。いや、かわいいから見ていられるけど。
とはいえ、そんなかわいいニャーチが震えているのをただ黙って見ているわけにもいかないか。
「仕方がない――エコー」
普通はダンジョンや室内で使うスキルだが、俺は森の中でエコーを発動させた。
……おっ! 反響があった。おいおい、これで隠れているつもりか?
「ほいっと!」
「うわあっ!?」
ある程度の場所を把握して隼の短剣を振り抜くと、透明化していたコープスが悲鳴をあげながら姿を現した。
やっぱりというか、隠密系のスキル持ちの武器を借りてきやがったか。
だが、武器が上等でも使い手がこれでは宝の持ち腐れだな。
「それ、俺にくれないか?」
「なっ! ふ、ふざけるな! これはギルマスの大事な武器なんだ!」
「だから?」
「……は?」
「だから? それがどうしたって? 俺にはまったく関係ないよな?」
そう口にしながら、俺は刀身をコープスの首筋にピタリとつける。
血が流れるという再現はされないが、それでも傷を受けたことでダメージエフェクトが現れた。
「ひいっ!?」
「どうする? このまま殺されるか、その武器を置いて逃げ帰るか?」
「ふ、ふざけるな! 俺様がてめぇに脅されてギルマスの武器を渡すなんて――ひいいぃぃっ!?」
グイっと刀身を押し込むと、再びコープスが悲鳴をあげた。
そして、助かりたい一心からか、その手が武器を落としてカランと音を立てた。
「おっ! 渡してくれる気になったんだな」
「ち、違う! これは――あっ!」
装備中のアイテムはPKしたとしても奪うことはできない。
あくまで奪えるのは装備していない、インベントリに入っているアイテムだけだ。
だからこのままコープスを倒したとしても、俺はこの武器を手にすることができない。
ただし、戦闘中に武器を手放したなら、それを遠くに蹴りつけることはできる。
奪うとかではない。単に、反撃させないようにするためだ。
しかし、追い込まれている相手がこの行為をされると、さらに追い込まれることになる。
事実、コープスの表情が一気に青ざめていき、恐慌状態のバッドステータスになった顔色になっていた。
「さーて、どうするー? 装備を変更して反撃に出るかー? だが、それをしたら俺は躊躇なく殺せるようになるんだけどなー?」
「うっ! ぅぅぅ~!」
言葉でさらに追い込んでいく。
もしも装備を変えて反撃に転じたとしても、俺はすぐにコープスを倒すことができる。
そして、装備を変えてくれたなら俺はPK時の宝箱からあの武器を手に入れることができるのだ。
こいつができる最善策は、装備を変えずにPKされること。そうすればギルマスから借りている装備だけは守ることができただろう。しかし――こいつは最悪の選択をしてしまった。
「ぶっ殺してやる!」
装備を変えて反撃に転じてきたのだ。
俺としては最高の結果だ。何せ、武器を手に入れるだけでなく、こいつが持っているアイテムも根こそぎ手に入れることができるからだ。
というわけで、遠慮はしない。
「さよならだ!」
「げぼあっ!?」
一切の遠慮なく、隼の短剣による三連撃をコープスに見舞う。
首、胸、最後に額へ切っ先を突き立てる。
「…………クソがぁ……絶対に……ギルマスが……てめぇを――」
――カラン。
言葉の途中で息絶えたのだろう、宝箱が音を立てて地面に転がった。
「ふん。ギルマスが来たとしても、絶対に返り討ちにしてやるよ」
……さーて! ここからが俺にとっての本番だ!
合計一二人のインベントリからどれだけのアイテムが手に入るのか! ……ぐふふ、楽しみだのう。
「うっほーっ! アクセサリーの装備は助かるわ! 他の装備だと希少級が溢れるからな! あとは……うーん、微妙だなぁ」
まあ、一度返り討ちに遭っているわけだし、対策はしてきたってことかな。
今回はアクセサリー装備とこの武器で満足するべきだろう。
「暗殺者を目指す俺にはピッタリの武器じゃないか――黒閃刀!」
伝承級にしてはステータス補正は高くないが、このアクティブスキルが最高だな。
【黒閃刀(伝承級):筋力+5、敏捷+5、知能+5、体力+5、精神力+5】
【アクティブスキル:透明化 使用可能(一度使用すると5分間透明化する。音を出すと透明化は解除される。次の使用まで3時間のインターバルが必要)】
……ただし、武器なんだよなぁ。隼の短剣と被るんだよなぁ。
「……よし! 次の目的地は決まったな!」
「……終わったかにゃ?」
「行くぞ、ニャーチ!」
「にゃにゃ? わかったにゃ!」
大きな木の後ろからぴょんと出てきたニャーチを伴い、俺は急いで始まりの村へ戻っていった。
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