15.ゴブリンの巣ダンジョン
始まりの森に入った俺たちは、一直線にゴブリンの巣ダンジョンへと向かった。
道中では復活したゴブリンの集落にぶち当たったが、最初と比べてレベルも上がり装備も充実しているので、難なく壊滅させて先へと進んでいく。
この時点でレベルが8になり、念のため敏捷にステータスポイントを割り振っておく。
マップを確かめながら進んだ先で、俺は本当にダンジョンを見つけてしまった。
「……おぉ、マジであったぞ」
「クエストの案内は間違いないのにゃ!」
「いや、そうなんだけどさぁ。なんていうか、感無量だわ」
ゴールドの時にも、他のユーザーと比べると多かったかもしれないが、個人的にはそこまで多く最初の発見をしたわけではないと思っている。
なんなら、ランキングや配信に力を入れている俺とは違う方向でワンアースを楽しんでいるユーザーの方が、そういった発見をしているはずだ。
例えば、攻略サイトの管理人とかな。
確か、攻略サイトの管理人は実際にワンアースのユーザーだったはず。それも、情報源のほとんどが自分だという筋金入りのユーザーだ。
そんな人と比べるのも申し訳ない気もするが、とにかく最初の発見は嬉しいってことだな。
「さーて、どんなモンスターが待っているのか、楽しみだな!」
「ゴブリンの巣ダンジョンだからゴブリンが待っているのにゃ!」
「……いや、まあ、そうなんだけどさぁ」
「ん? どうしたのにゃ?」
「……いいや、なんでもないわ。それじゃあ、行くか!」
「行くのにゃ!」
なんとなく出鼻をくじかれた感は否めないが、俺はいつでも攻撃に移れるよう、隼の短剣を抜いた状態でダンジョンに足を踏み入れた。
【ゴブリンの巣ダンジョンへ入場しました。あなたはダンジョン一番目の発見者です】
そうそう、これだよな、これ。
初めての発見者にはちょっとした特典ある。それが、発見から三日間は獲得経験値が1.2倍になるというものだ。
発展クエストの難易度がダンジョンの難易度にはなり得るので、ここは難易度Cのダンジョンということになる。
おそらく、ここを出る頃にはレベル10を超えてくるだろう。そうなれば転職もできるし、楽しみが一気に増えるってもんだな。
「おっと、考え事をしていたら早速現れたか」
ダンジョンの奥から現れたゴブリンを見て、俺は一気に駆け出した。
数は三匹、至って普通のゴブリンだ。
俺は一瞬でそれぞれのゴブリンに出ているワンキル判定を狙い撃ち、討伐を終わらせる。
しかし、さすがは巣である。これだけで襲撃が終わるほど、簡単ではないか。
「はにゃにゃ! お、奥からまだ来るのにゃ~!」
「大量だが、全部が一般級! ってことは、ワンキルし放題ってことだな!」
「そんなに簡単なことなのですかにゃ?」
「普通は無理だが……まあ見てろって!」
こちとら何年もワンアースに時間を掛けてきた廃ゲーマーだぞ? ゴブリンの集落でも二桁のゴブリンを屠ってきたんだから、これくらい楽勝だって!
「はっ! せいっ! ほいさっ!」
会敵と同時に隼の短剣を振り抜き、突き刺し、斬り上げて、ワンキル判定を取っていく。
目に見えてゴブリンの数が減っていくのを見ると気持ち良いものの、二桁を超えてもいまだに奥からうじゃうじゃと押し寄せてくる。
さすがは難易度Cってところか!
「いいねぇ、やってやるよ! こちとらまだまだ動けるんでね!」
俺はゴブリンの巣ダンジョンに入った最初の戦闘でゴブリンの群れを相手に――1時間以上も掛けてようやく押し寄せて来なくなった。
「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……ようやく、止まったかぁぁぁぁ」
自信はあったものの、まさか100を超える数のゴブリンと戦う羽目になるとは思いもしなかった。
俺はその場に座り込み、一度大きく息を吐き出す。
……マジでしんどかったわ。
「お疲れ様なのにゃ!」
「いいや、まだだよ、ニャーチ」
「にゃ? そうなのかにゃ?」
「あぁ。何せここは、まだゴブリンの巣ダンジョンの一階層なんだからな」
そう、ここはまだ足を踏み入れたばかりの一階層。
洞窟型のダンジョンということは、さらに下の階層へ続いているはず。
そして、その先ではダンジョンボスが待っていることだろう。
100を超える群れを統率しているのだから、恐らくゴブリンキングやゴブリンクイーンといった最上位種である可能性が高い。
……これ、本当に難易度Cなんだろうなぁ? まあ、ボス以外のモンスターが全員一般級ならありなんだろうけど、ここから先に進んで希少級以上が出てきたら、マジで難易度を疑ってやるからな。
「とりあえずレベルは……おっ! 10になってるじゃないか! ステータスポイントはやっぱり敏捷に振って、あとは……よし、いくつかスキルを取っておくか」
ダンジョンの構造を見た限り、必要になりそうな三つのスキルを獲得しておくことにした。
【スキルポイント34→25】
「……よし、休憩終わり! 先に行こう、ニャーチ!」
「本当に大丈夫なのかにゃ?」
「大丈夫だって。スキルも獲得したし、あとで見せてやるからさ」
立ち上がりお尻に付いた汚れを払い落すと、俺は再び歩き出した。
ご覧いただきありがとうございます。
本日はあと3話更新します。