13.ボーンヘッドギルド
――一方その頃、レヴォが返り討ちにしたコープスたちは所属しているボーンヘッドギルドのギルドマスターから大叱責を受けていた。
「貴様らああああぁぁっ! たかが新人一人に返り討ちにされたなんて言い訳、聞くわけがねえだろうがああああぁぁっ!」
「「「「「「す、すんません、兄貴いいいいぃぃっ!」」」」」」
コープスたちは額を床に擦りつけながら謝罪を口にしている。
しかし、彼らに怒声を浴びせているギルマスの怒りが収まることはなく、怒りの矛先は段々とコープスたちを返り討ちにした相手――レヴォへと向いていく。
「……それで! 貴様らを倒したそのユーザーの名前はわかっているんだろうなあっ!」
「は、はい! 確か、レヴォって名前でした!」
「見た目は!」
「く、黒髪でどこにでもいそうな顔で、身長も俺と同じくらいでした!」
「……特徴がねぇじゃねえかっ!」
「あと、ノービスです!」
「……ノービスに負けたのか? てめぇら、ふざけんじゃねぇぞ!」
「「「「「「す、すんません!」」」」」」
説明はコープスが行っているが、謝罪の時は全員が揃って口を開いていた。
「……クソがっ! レヴォ、絶対にぶっ殺してやるぞ!」
ギルマスがそう口にしたタイミングで、彼らがいる部屋の扉が勢いよく開かれた。
「た、大変です、ギルマス!」
「今度はなんだ!」
「こ、この動画を見てください!」
「あぁん? んだよ、この動画は?」
ギルドメンバーの一人が映し出した動画を見たギルマスは、さっきまでの怒りを突き抜けるほどに激高することになった。
「……な……なな……なんだこれはああああぁぁっ! コープス!」
「は、はいいいいぃぃっ!」
「てめえらの顔がばっちりと映ってるじゃねえかあっ!」
「え、ええええぇぇええぇぇっ!? あ、あの野郎、なんの加工もしないでアップしやがったのかよ!」
コープスはボーンヘッドギルドの幹部の一人でもあり、PKギルド界隈では顔も知られている。
他のメンバーならいざ知らず、幹部の顔が晒されたとなれば面倒事は避けられない。
「このタイトルを見てみろ!」
「……【PK集団返り討ち! この顔を見つけたらご用心!】、です」
「俺らがPKギルドだってバレちまうだろうが!」
「す、すんません!」
「謝って済む問題じゃねえんだよ!」
頭を抱え始めたギルマスだったが、動画がアップされた以上はどうすることもできない。
事実、この動画は投稿から1時間足らずで5000回再生に到達している。
新人ユーザーが投稿した動画にしては異例の注目度を浴びているのだ。
ここからさらに視聴者が増えることを考えると、取れる手段はだいぶ限られてしまう。
「……レヴォを捕まえて、動画がフェイクだったと言わせるんだ!」
「で、でも、ギルマス。こいつ、めちゃくちゃ強かったんですよ?」
「あれは貴様らが油断していたからだろう、違うか? あぁん?」
「ち、違いません! そうです、俺たちが油断していたからです!」
ギルマスに睨まれると、コープスは即座に意見を翻した。
「だがまあ、仕方がねぇ。俺様が最高に素晴らしい装備を貸してやろう」
「そ、それは本当ですか、ギルマス!」
これでやり返せると笑みを浮かべたコープスだったが、ギルマスはそんな彼の目の前で強烈な睨みを利かせた。
「だがなあっ! もしもこれでまた負けたとしたら! ……わかってんだろうなぁ?」
「……わ、わかって、います」
「ならいい。ほれ、こいつを持っていきな」
そう口にしながら、ギルマスは一振りの刀をコープスに放り投げた。
「こ、こいつは!」
「俺様が今の武器を手に入れる前まで使っていた伝承級の武器――黒閃刀だぁ」
脇差に分類される黒閃刀は伝承級の武器の中ではステータスの補正値がそこまで高くはない。
しかし、武器に付いているスキルが強力なものになっている。
「こいつのスキルを使えば、確実にレヴォを殺せるだろう?」
「……へへ、はい! 絶対に俺の手で、レヴォを殺してみせます!」
「期待しているぜぇ、コープス」
こうしてレヴォは、知らないうちにボーンヘッドギルドの標的になっていたのだった。
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