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第四章 命の交換
ゆう兄の右腕が廊下の端に飛んだ。
「私は大丈夫!とりあえず逃げて!」
「ゆう兄!大丈夫なわけがない!早く逃げよう!」
そう言ったが、ゆう兄はふっと笑って、
「そうね、もう大丈夫じゃなさそう。二人とも早く逃げて。」
「ゆう姉を置いて逃げられるわけないじゃん!」
「・・・・・・!」
僕にはゆう兄の声が聞こえた。意志を汲み取る。
「っ翔くん!逃げよう!」
「いやだ...ゆう姉を置いていきたくない!」
抵抗する翔くんを、無理矢理運ぶ。
「ゆう姉ぇぇぇぇ!!!!!」
「ゆう姉...まだあの人狼から三人で逃げられたのかもしれないのに...」
いや、もうお互いにわかっていただろう。あの状況、三人で逃げるのは間違いなく無理だ。誰かが犠牲になる必要があった。
しかし、絶望する時間すら僕らには与えてもらえなかった。もう人狼が来ているのだ。
「あつ、先に逃げてて。」
「何言って...」
「ゆう姉、今からそっちに行くから。待っててね。」
人狼は、腕にうなりをつけて、翔くんの方へ振りかざした。