第一章 あれからというもの
「まだ見つかってないらしいぜ、あの三人」
「どうせ三人で旅行でもしてんだろ」
最近、そういう噂をよく聞く。
三人とは、トラちゃん、雨谷、ヘリオさんのことだ。
あのとき、誰も救えず、館から逃げてから、もう一週間近く経っている。
あれから、食欲も出ないし、勉強にも集中できていない。
当たり前だ。友達が殺されて、殺したのも友達だった。あれが心に残らないはずがない。
「やっぱりあつはなんか知ってんじゃねえの?」
翔くん...赤井翔が、僕のところに来てそう言う。
これでも一応後輩なのだが、本人から敬意は一切感じられない。
「知らないって言ってるだろ。」
適当な返事しか出来ない。
「でも、あっくんはいつもあの三人と一緒じゃん。なんで居なくなったのはあの三人だけなんだろうね。」
ゆう兄は僕らのことをよくわかってる。おそらく、僕が何か知ってることをわかってのその声掛けだろう。
ピンポンパンポーン
朝の放送委員のラジオが始まる。普段はヘリオさんがやっている仕事だ。
『皆さん』
その一言を聴いて、すぐに気づいた。一部の生徒ももう気づいているだろう。
毎朝聴いていた声だ。少なくとも僕には、すぐにわかった。