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遠足イベント

かなり端折った遠足。

今日は皆の仲を深める為に学院の外に足を伸ばす事になった。勿論学院行事の一つなので皇太子であったとしてもルナと同じように歩いて現地まで向かわなければならない。

朝、従者達に念入りにヘアセットをされた私は親指を立てて見送られた。

是非とも最近肉食系になって殿下に気を向けてきたフィオリーナと仲を深めてこい、と。

訝しげに目を細めれば「もう、素直じゃないんだから!」と皇妃に突かれてしまった。


「クイークス様、空気が美味しいですね」


小川のせせらぎに小鳥のさえずり。

ここは学園に程近い場所にある自然のまま放置されている森だ。獣も普通に出てくる。


「ええ、そうですね」


微笑みを返せば嬉しそうに笑顔を向けられる。元々の性格上、友人はいなかったので同い年で可愛らしく素直なルナとの会話はとても楽しかった。少し前を歩くクイークスが背中からすごい威圧をかけてきているが友情を邪魔しないでほしいと思っている。


「クイークス様、フィオリーナ様と一緒でなくてもよろしいのですか?」


近くを通りかかった令嬢からそっと囁かれたが私は「ええ。ずっと一緒にいては苦しいでしょう?それにいずれ嫌になるくらい一緒にいる事になるのですから今くらい友人との語らいをさせて下さい」と笑顔で答えた。


「でも、びっくりですよ。貴族の方って生まれてすぐに婚約するんですね」


庶民であるルナには到底理解できない話なのだろう。ちょっと非難の混じった声でそう言っていた。


「ええ、そうですね。皇族であれば後ろ盾、貴族であればパイプを求めますから。庶民の方は働いて生活をして自由に結婚をし、我々は働きはするものの住居を保証された戦略的婚約をする。それぞれ良いところ悪いところがあるのですよ。世の中、そうそううまくは動いていないのですから」


「後ろ盾なんて!」


「わかりやすく言いましょうか。私には歳の離れた弟がいます」


私、とは勿論クイークスの事。私にも兄弟はいるが兄である。因みに私に滅法弱く、性格が変わってしまったことを嘆き、何か変なものがついているのでは、とお祓いをしていた。ついているのは皇太子であるが。


「その弟を上手く操って政治に参加したい貴族がいたとしましょうか。もし、私にフィオリーナという伯爵家の後ろ盾がなければ弟を使って、つまり弟を皇太子にしようと反乱、クーデター、革命、どれでも良いですがそこらへんのものを起こす可能性があるのです」


かなり説明が雑だが、伝わっているだろうか。


「不要な争い事を起こさないように牽制する材料として戦略的婚約は必須である、ということですか?」


分かってくれたらしい。


「でも!貴族の方でも恋愛結婚をしている方がいると聞きますよ!?」


「ああ、それは特例中の特例。私たちにはあり得ないことだよ。まあ、本音を言ってしまえば、相手は私との結婚をあまり快く思っていないようだから私を心から愛してくれる人を探したい気もするけれども。この地位を目当てに、ではなく、物の例えではなくて本当に庶民に身分を落としたとしても愛してくれる相手を」


そう言って川に泳ぐ魚をぼんやりと見ているとルナがそっと横から手を伸ばしてきてぎゅっと手を握ってくれた。


「私がいますよ」


友人とは良いものだな、と感じた。

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