瀬戸美月 美容院に行く
「美月、てめえいい加減にしろよな」
美月の、高校時代からの親友であるミキ。
彼女は、美月に対し怒っていた。
「ミキちゃん、ごめんなさい。でもね・・」
「でもじゃないだろ、いい加減にしないと見捨てるぞ。」
「やだ・・見捨てないで、ミキちゃん」
「美月、てめえ・・いい加減に・・・」
「いい加減、一人で美容院に行けるようになれよな!」
「え~・・・・でも、一人だとどうしたらいいかわからないし・・」
ここは二人の行きつけの美容院。
いまは、隣どうしで髪を切ってもらっている最中である。
「だからって、毎回毎回、一緒に行かなくてもいいだろうが。」
「でも、美容院で同注文したらいいかわからないし・・・」
学生のころから、美月の服装・髪型・ネイルなどファッションのすべてはミキに頼りきりなのだ。
「いつもの!で、いいだろ。」
「え~・・・大丈夫かなぁ」
髪を切っている美容師は、困った顔をする。
「大丈夫ですよ、瀬戸さん。ちゃんとカルテで管理してますから・・」
美容師がフォローする。
「そうなんですか・・でも・・」
「でも、なんだよ。」
「こうやって、ミキちゃんと一緒に髪を切ってもらっていると退屈しないし・・・」
ミキはため息をついた。
「それで、早乙女さんとはその後どうなんだよ」
「えへへ・・この間、うちに来て両親に紹介したの。」
「なんだと・・・そこまで進んでるのかよ・・」
ミキはちょっと複雑な気分である。
思ったより、関係が進んでいるな・・・
実は、美月の彼氏の早乙女さんに対して、ちょっといいなと思った時期もあった。
なのに、いつの間にか美月に先を越されてしまったのだ。
これではもう、自分にはチャンスがないか・・
というか、このポンコツ娘より自分の婚期が遅れてしまうのか?
「それで、両親の反応はどうだったんだよ?」
「それがね・・お父さんと車の話で盛り上がってたのはいいんだけどね」
なるほど、あの年代は車好きも多いだろう。
「私、まったく話題についていけなくて悲しかったの。」
まぁ、美月は免許も持ってないし車に詳しくないからな。
その点、自分は車に詳しい。過去に詳しい彼氏がいてよかったぜ。
早乙女さんと、自分なら車の話題なら話せるぜ。
「それでね・・」
「なんだよ」
「私、免許を取ることにした!」
「は?」
「教習所に申し込んだ!」
「まじかよ」
このポンコツ娘に免許取ることが可能なのか?
事故ってしまう未来しか見えないんだけど。
頭を抱えるミキであった。