後編と目された今回のオチ
「あの、あの、ショウさん」
「何だ? 話の途中からナイスに無礼になっていった俺の愛しき部下よ」
「や、ショウさんが無礼にしろと頼んだからですよ。私は忠義に生きる女ですから」
「ふん、真面目すぎるのも困りもんだな。お前は。んで何だ? 質問か」
「はい、そうですっ。結局のところバトさんはどうして最後勝つことができたんですか。教えてください先輩っ」
「なんでって……関節はずして抜け出して、ナイフ避けて、棒避けて、ハンマー避けて、鎖ガマ避けて、剣避けて、殴って勝ったんだろ」
「いやまあ、確かにそうなんですけど。なんかしっくりこないっていうか」
「ふん。……なあ、質問なんだが、お前五感って言葉しってるか」
「何ですかショウさん。今は私の質問タイムですよ。質問に疑問文で答えていいなんて学校で習いましたか?」
「馬鹿か。学校なんていってねーだろ。いいからさっさと、答えろ」
「う、まあ、それもそうですよね。えーっと、五感といえば今回バトさんが上げ下げしていた感覚機関ですよね――視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚――です」
「ああ、そうだ。それは何だかんだいってみんな知っていることだよな」
「はい、そうですね。五感は何だかんだいってみんな知ってるタイプのものですよね。サッカーとかハンバーガーとかと同じです」
「そうだな。そしてお前に聞きたいんだが『五感』を知っているならもちろん――――――『第六感』って言葉も知ってるよな」
「あ――」
「知ってるよな」
「は、はい。広義には五感以外の特殊な感覚のことで超能力とか予知能力などのことを指しますが――」
「一般的に言えば?」
「――――直感ですね」
「そうだな、そして奴は最後の最後でほとんどの感覚機関を直感に加えた」
「直感を上げた」
「ああ、とことん勘がいい奴になるようにな」
「だから、あのナイフの群れとかを避けれたっていうんですか」
「そこは、奴自身の身体能力の高さや頭脳の良さもあるだろう。奴自身が既に持っていたものだ。
身体能力に頭脳の高さ。そして、優れた勘があったからこそ、世界最強に対抗する事ができたんだ。
逆を言えば、力と頭脳だけでは世界には勝てなかった。決して機を逃さないとてつもない勘の良さがあったからこそ勝てたんだ」
「勘の良さ、ですか……。そんなもの不確かなものがないと世界とまともに闘えないんですか、なんつーか世知辛い世界ですね」
「何だそれは、自虐か? 批判か? 知るか。世界はそうできてるんだ。そう理解して折り合いをつけていくしかねーんだ」
「はぁ、そうですか……」
「落ち込むな、馬鹿が」
「……すいません」
「ちっ、くそっ。………………あのな、お前にいい話がある」
「ふぇ? なんですか?」
「えーっと、五感てゆーのはな、実は古代ギリシアの頃のアリストテレスとかプラトンの時代にできた滅茶苦茶古いもんでな」
「はあ、アレックさんの時代ですね」
「ああ、アレクサンダー大王の時代な。それくらい古いもんでな――」
「彼いつも“〜様”って呼ばれるのが恥ずかしくて、いつも“〜さん”だ、って呼ぶよう主張してたら、いつのまにかアレクサンダーって呼ばれるようになってたんですよね。ははっ、可愛かったなあアレックさん。そうゆうとこショウさんに似てますよね、アレックさん」
「……元気でたみたいだし。フォローはいらねえか」
「や、や、いやいやいや。いります、いります。今のは自慢の技のから元気です。フォロー、励まし、じゃんじゃんお願いします」
「ふん、要は、五感ってのはギリシア時代の古いもんなんだ。つまり、俺がいいたいかわかるか」
「んーっと……所詮昔のことだから気にするな、かな。あたっ、暴力反対です。えと、昔のことだから正確ではないとか?」
「そうだ、感覚機関は五感だけじゃない。どんどん、新たな発見によって増えてきてんだよ。現在すでに十個近く感覚機関があるらしいしな」
「じゅう! 倍ですかっ! 科学ってすげーんですね」
「そうだ。だから、可能性は五感なんて限定されていて閉ざされてない。新たな発見は次々と生まれてきてるし、勘以外の物を持って世界と対抗することもできるようになるはずなんだよ」
「ショウさん……」
「あ? 何だ」
「んー、なんか無理やりまとめよう―してませんか」
「うっせえ――の、糞アマ。てめぇのフォロー用だ―らしかたねーだろ」
「なんで、また―――ですか。また殴るんで―か」
「うるせえか――ぞ」
「あ、ショウ――――う、観察はOKなん――か」
「――データ―――たし、それ――あ報告しに行くぞ」
「げ―――で目外すの――てくださいよ―――イですよ」
「い――――かったく」
「よ――――よ」
「な―――」
「――――」
「――――」
「――」
「――」
「―」
「―」
人は天を仰ぎ、空を見つめる。神に会うことを夢見て。
人は闘いを行う。神に出会ってみせるために。




