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序章 王位継承

「ブルリ、ニュルン!」チャポッ


毛沼白歩、22歳、夏。彼はついに便意に屈した。ウォシュレットの生暖かい水流を肛門に感じながら、絶望感にうちひしがれている。なぜなら、この大学においてウンコはタブー。学校でウンチに行こうものなら、みんなから笑い者にされてしまう。先週大便をしてしまった臭野はウンコマン11世と呼ばれていじめ抜かれた挙げ句、終いには大学に来なくなってしまった。そのときは自業自得だと嘲笑っていたが、今ならば彼の気持ちが分かる。深い後悔と喪失感。悲しみに浸る間もなく、トイレの外から声が響く。


「おい、毛沼。今からお前はウンコマン12世だ」


その瞬間、僕は意識を失った。









「うーん…」

「あっ、やっと起きた!」


目を開くと、可愛らしい少女がそこにいた。


「…すまない。ここは?」

「土の上だよ。それより、あなたって変な格好してるね。どこから来たの?それに名前は?」

「鹿馬大学から来た、…あれ?」


どうも記憶がはっきりしない。私は一体何者だったのか。一部の記憶だけがニュルンと抜け落ちたように思い出せない。


「すまない。名前がどうしても思い出せない。それに何故ここにいるのかも…。ただ、深い悲しみが胸の中にある…」

「辛い思いをしたんだね。でも大丈夫、ゆっくり思い出していけばいいんだから!」


少女の優しさが染みた。見ず知らずの私にここまで親切にしてくれる彼女はさぞ心の清らかな女の子なのだろう。


「あ、自己紹介がまだだったね。私はハナ。あなたのことはなんて呼べばいいのかな?」

「…ウンコマン12世」


「えっ、なんて?」

「どうしてかは分からないが、聞き覚えのある言葉だ」

「聞き覚え…、うん、きっとそれがあなたの名前だよ。ウンコマン12世、もしかしたらあなたはどこかの国の王様なのかもしれないね!」

「ありがとう、ハナ。どうかよろしく頼む」

「うん、こちらこそ!」


「なあ、ハナ。一ついいかい?」

「何でもどうぞ!」

「どうして裸なんだ?」

「裸って何?」

「いや、君は服を着ていないだろう」

「服って何?」

「…着てみれば早いだろう」


私は上着を脱いでハナに着せてやる。


「えっ、すごい!少し暖かくなったよ!」

「それが服だ。裸よりは寒くない」


人に何かを教えたり、褒められたりするのは新鮮な気がする。私はそんなにも馬鹿な人間だったのだろうか、それとも記憶の欠落のせいなのだろうか。


「…すごいよウンコマン12世!みんなに教えてあげないと!」


ハナはそう叫ぶと、相変わらず四つん這いのままテケテケと駆け出していった。


「ちょっと、おい!」


周りに静寂が訪れる。私は立ち上がり、空を見た。どこまでも続く青い空。見慣れた景色。しかし、どこか大きな違和感と、抜け落ちてしまった記憶。


「…ここは一体どこなのだろう?」


朝日を見つめながらそうひとり呟いた。

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