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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
一章【夢幻空疎の楽園聖都市】前篇
9/42

3/5

今回は戦闘回になります。

その為流血表現などが入ります。



「気を付けろ小僧!来るぞ!!」

「っ?!」



ザパンと大きな音を立てて、なんとサメが海中からこちらめがけて、その凶悪な歯が並んだ口を大きく開けてジャンプをしてきた!!



「(そうだ、現代でも動物モノのTVとかで、ホオジロザメとかのジャンプが結構騒がれていたじゃないか!まさかコイツらもやるなんて!!)」


カルカロクレスのジャンプ力は、かなりあった。それこそ僕達がいる岩場まで軽く届くくらいの・・・・・・



「(来るっ!!)」


慌てて三人を抱え直し、迫ってきた鮫の口から避けようとしたその時だった。

ドドドドッと、こちらを目掛けてジャンプしてきたサメの体に、無数の巨大な氷柱が突き刺さった。



今のはハンターが放ったのか?

無数の氷柱に貫かれたサメは、そのまま落ちて海の中へと沈んでいった。




「きゃっ」

「セイル!」


サメがジャンプした際に驚いたのだろう、セイルの力が緩んでしまい海に落下してしまった。

ザブンッという水飛沫と音と共に、セイルが海へと吸い込まれていく。

マズイ、早く助けないとっ!



「小僧、無事か!?」


ハンターが、いつの間にかどこか丈夫な木にでも縄を結んだのだろう。

ハルバードを手にこちらへと崖を滑り降りてくる。


「すみません、この子たちをお願いします!」

「なっ、おい待て!」


自分を喰らおうと迫ってきたサメを間近で見た恐怖からか、とにかくガタガタと震えているクロームとフウの二人を、ハンターに無理やり預ける。


そして僕は、セイルを追って海へと飛び込んだ。





海の中は、昼間とは打って変わって不穏なまでに濁り切っている。

他の魚達が見当たらない。

そんな視界が定まらない、不気味なまでに静かなその海の中で、セイルを必死に探す・・・・・






いた!

どうやら僕は、比較的近くに飛び込んだらしい。

急いでセイルの元へと泳いでいく。


僕たちは水中でも声を声として認識することができる。

なので僕はセイルに呼びかけた。



「セイル!大丈夫か!!」

「うぇ~ん、にーにぃ!」


泣きながらしがみ付いてきたセイルを、今度こそは離すまいとしっかりと抱き寄せる。

そんな僕たちのもとへ、先程とは別のサメがゆっくりと。まるで吟味をするかのように、濁った水中からその姿を現した。



目撃されたのは4匹。

うち2匹はすでに退治されていて、1匹はさっきハンターが始末した。


残っているのはあと1匹。




サメっていうのは、なかなかに学習能力が優れているらしい。

テレビで一度だけ見たことがあるが、獲物を襲う際には過去の成功と失敗の経験を生かすと、言われているそうだ。

今こいつがすぐに僕たちを襲わないのは、先ほどのような串刺しを恐れての行動ゆえか・・・



ゆっくりと、しかし確実に狙いを定めた一匹は・・・・・














僕たちの背後から急に襲い掛かってきた!


「(クッソ、正面のは囮かっ!)」


寸でのところで水中を蹴り、背後から襲いかかってきたサメの攻撃を回避する。

サメは、僕の真横を凄まじい速さで通り過ぎていく。

直接の接触は避けられたものの、すれ違った際の水流で、僕の体は為す術も無く吹っ飛ばされた。


グルグルと体が回転する。

まるで全身が、乱暴に空中に投げ出されたかのような感覚だ。



回るその視界の傍らで、今度は正面にいたサメの姿がハッキリと見えた。しかし鋭い氷が突き刺さったそいつは、どうやら既に絶命していたらしい。

傷からはおびただしい量の血が流れていて。濁っていて気が付かなかったが、海中を赤く染めあげていた。




何故、絶命しているとわかったのか・・・

それは、そいつの腹が・・・大きく食い破られていたからだ。



仲間の死体を、カモフラージュとして扱ったのか。

どうやら想像していたよりも、コイツらは頭の回転は良いらしい。

とにかくじたばたと暴れないようにとセイルをしっかりと抱えて、自分の身体に魔力で作った渦を纏わせて、何とか体勢を整える。



どうやら僕は、崖の方に吹っ飛ばされたらしい。

態勢を整えたときに岩肌が、自分の背中に当たるのを感じた。




突進してきたヤツも再び態勢を整えると、間髪入れずにこちらへと大口を開けて再び突進してくる。




慌てるな、タイミングが大事だ。

まだ・・・まだ・・・まだ・・・・


今だ!




「ガリチビだからって・・・舐めんな!!」




突進してきたサメに接触する・・・その寸前。

僕は足に渦を纏わせると、崖の岩肌を思いっっきり全力の力を込めて蹴り上げた!



その凄まじい勢いで、僕は海面へと飛び出す。

そしてそのまま、海面に近い岩肌にドスンと背中から落下した。



「いったー・・・・」



その直後、ガツンと鈍い音が響きわたった。

サメはどうやら岩肌に、己の鼻の頭を思いっきりぶつけたらしい。

恐る恐る覗き込むと、サメはぐるぐると混乱したように、しばらくのたうち回っていたが、やがて気絶でもしたのかゆっくりと動かなくなった。





終わった・・・の、か?




「つーか、お前らが満足するほどの肉や脂肪なんて僕にはねーよ」


脂肪意外と重要、体温を平熱に保てないし。


まあ何事も程々に。




「にーにぃ?」

「もう大丈夫だよセイル」




とりあえずセイルを安心させる。

どうやらまだ怖いのか、ぷるぷると震えていた。



「大丈夫だ、怖いのはもう来ないよ」


「あのねにーにぃ・・・そうじゃなくてね・・・」


んん?・・・そうじゃない?

セイルは今にも泣きそうに、そして顔を真っ赤にして僕に言った。





「もらしちゃったぁ」


とりあえず、ぐすぐすと泣いているセイルを慰めるようにして頭を撫でるしか、僕には考え付かなかった。









─────────




さーてうん、どうやって登ろうかなぁこれ。

肝心の縄は海中でサメが突進してきたときに千切れてしまっているし、ぶっちゃければ僕は今満身創痍なのだ。

マラソン大会で、スタートからゴールまで全力疾走を決めた時みたいに足がガクガクと震えているし。

手だって先程からグーパーグーパーとしているが、中々言うことを聞いてはくれない。




「生きているか?小僧」


クロームとフウを安全な所へと移動させたのか、ハンターが縄を伝い下りてきた。

これが天の助けだろうか、この人口悪いけど。



「あ、はい・・・なんとか」

「ふん、喋れているのなら大丈夫だな」


ハンターの手には、新しい別の縄が握られている。

これは、心配して来てくれたのだろうか。



「あの・・・ご迷惑をおかけしました。あと、ちび達を助けてくれて有り難うございます」



僕は深々と頭を下げた。

事実、この人がいなければ弟妹はもちろんのこと、僕だって食べられていたかもしれない。


「結果的に救ったのは小僧だ、私は殆ど何もしていない・・・・まあなに、次からは気を付けることだな」



ハンターはそう言うと、そっぽを向いた。

気分を悪くさせてしまったのだろうか、それともまた怒らせた?

僕は恐る恐る顔を上げてハンターを見る、と・・・



白い彼の顔は、赤くなっていた。

・・・・この人、ひょっとして照れてる?




 

とりあえず、僕は新しい縄を腰に巻き付けた。

そして、幾分かは落ち着きを取り戻していたセイルを再び抱える。

今度は落ちないように、千切れていた縄を使ってセイルを抱えた状態で自分にくくりつける。

うん、これなら両手が塞がっていても大丈夫だ。



「準備は出来たな?私は殿を務めよう、小僧は先に行け」

「はい、では失礼します」



ぐいぐいと、少し引っ張り縄が落ちないことを確認すると、僕はゆっくりと登り始めた。

セイルは、大人しくしがみついている。




それにしても、今日はなんとも疲れる一日だ。

そして結局ナシが食えなかった。

ええはい、僕は引き摺るタイプですよどうせ。

それにこういうのは、ちょっと下らないことを考えていた方が登りやすいし。



縄は、時々ギシギシとイヤな音を立てているが、今のところ抜けたり千切れたりという兆候は無い。


いや、そうなったら駄目だろうぜ。


僕が半分以上まで登りきったのを確認すると、ハンターもゆっくりと登り始めた。




そういえば、今僕は店主から貰った花結びの耳飾りを着けているんだけど・・・


あ、着けたのはお昼ご飯食べ終わった時ね。


その耳飾りから、なにやら音がする。

キーンだかリーンだか、まるで金属同志がぶつかり合っているかのような音だ。



音を発しているのは・・・どうやらエイワズと刻まれた石みたいだけど・・・・・




「これ、どういう・・・「避けろ!!」








それは一瞬だった。

目の前に氷で作られた壁が出現すると同時に、現れたのは・・・














“5匹目”の鮫だった・・・






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