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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】後篇
39/42

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「・・・なるほど。島が謎の集団に襲撃され、そしてここまで逃げてきた、と?とりあえず一人で無茶な事しやがってとか。よくもこんな所に置き去りにしやがったな・・・と、いうツッコミはこの際置いておく、が」

「・・・その・・・すみません、置き去りにしてしまって。あの、怖かった・・・ですよね?」

「はぁ?怖い?この上級ハンターの私がか?愚かな事を言っては困るな!」

「・・・・・・・そうです、か」


うん、海上の至る所に突き刺さっている細長い氷柱は・・・・・彼の名誉の為にも見なかったことにしておこう、うん。

そういえばこの人泳げなかったね。


「とにかく。この非常事態を、一刻も早く近衛に伝えなければ・・・所で彼等は?」

「えー・・・と」


ちらりと僕の乗っているゴンドラを見る。

王女は、まるで楽しかったとでも言うように、目をキラキラと輝かせている。

対するリンヨウはといえば・・・・・うん、その口から出ているものは、キラキラとしたものでモザイクかけておくよ。



「島に観光で来ていた人達です。午前中に凪の島で出会って、ハンターさんを島まで届けた後で改めて島に案内しました。えーと、フォスさんとリンヨウさんです」


リンヨウはまあともかくとして。王女は、下手をしたら名前を知っている可能性もある。

まあ偽名なんてそんなものを考える余裕なんてないので、愛称のような感じになってしまったが。

ハンターさんの反応を見る限りでは、どうやらあまり気にしてはいない様子だった。


とりあえずこちらの様子を伺っている王女へと、目線で話をあわせる様にと合図を送る。



「そうか、私の名前はニルスだ。ニルス・ウィリアムズという」

「改めましてニルス様、私はフォスといいます。彼は私のパートナーでリンヨウといいます。ね?リンヨウ」

「え?おう(ドス

「ね?リンヨウ?」

「は、はい・・・・・・・・・・・・ふぉ、ふぉす・・さ、ん」

「(痛そう)」

「・・・小僧。あの若造は、あれは確実に将来尻に敷かれるぞ」


思わず王女と言い掛けたリンヨウの背中を、王女が思いっきり殴った。

叩いた、ではない。殴った。しかもグーで。

そしてハンターさん。いや、ハンター改めてニルスさん。

あんた一体何言ってんですか。


まあ確かに、自分より遥かに立場が上の人間を気安く、しかも愛称で呼ぶなんて真似はできないだろうな。


そんなことをしたら、首と胴体がさよならだ。



「とりあえずは、だ。先ずは凪の島に向かうとしよう。ここから一番近い駐屯地は、あそこにあるからな」

「わかりました。では船と船を繋ぎますね、少々時間はかかりますが待っていてください」


僕は帆のある船の船尾と、ゴンドラの船首を縄で繋ぐ準備に入る。

専用の縄は帆のある船にあるので、とりあえずニルスさんにはゴンドラの方に移動してもらうことにする。





「・・・・リンヨウ、今何か動きませんでしたか?」

「え?・・・・いえ、申し訳ありません。自分にはさっぱり」

「ふむ・・・どこにいた?」

「あそこです」


うん、不安な会話が聞こえるけれども、とりあえずは結ぶほうに集中しよう。

縄を通す事が出来るのはゴンドラの船首、そこに縄を通す。

帆のある船には、引っ掛けられるフックしかないので・・・・


「・・・・小僧、後どれ位で終わる予定だ?」

「もう終わりますよ」

「そうか、では手早に頼む」

「・・・わかりました」



先ずは左手に持った縄で輪を作り、右手に持った縄の先端を下から輪に通して。それで左の縄に通して、再び上から輪に通してきゅっと結んで・・・・


「出来まし「急いで船を出せ小僧!」


リンヨウとフォスファ王女が、帆のある船の方にと慌てて移ってくる。その後を、ニルスさんが追うように続く。

切羽詰ったその様子に、僕は慌てて帆に風を送る。


「どうしたんですか?」

「追っ手だ。しかも恐らくは凄腕の狙撃主か・・・」


えー・・・マジかい。

リンヨウと王女を見れば、一体どれぐらいヤバイものを見たのか、若干顔が青ざめている。

え、イヤイヤ待って何その反応一体何を見たのよ。


「わかりました。では全力で行きます、皆さん掴まってください!!」


とにかく、あるだけの力を込めて風を送る。

帆のある船はカクンと船首を上げて、猛スピードで海上を進んでいく。

これ競艇よりも速いかも。



風にも近い速さで海上を走るそんな船の真横を、ヒュンっと何かが通り過ぎた。

それは銃弾や矢の類ではなく、槍やランスのような・・・そんなおっかない物の様に感じた。

それが再び二回、三回と後方から飛んでくる。



「敵の追っ手か・・・一体どこから」


もちろんこれは二度目になるのだが、この船には一応ランプはあるが、灯りなんてものは当然点けてはいない。勿論ルミニエールの連中に、見付かる可能性があるからだ。

そして、月明かりを頼りに此処まで来たのだ。

周囲を警戒して、最大限の注意を払って。



再び船に向かって飛んでくるナニカ。

慌てて体重をかけて、船を左に傾けてそらす。

その際に浮いた右のフロートに、再び飛んできたものが思いっきり突き刺さった。


それは、バタバタともがく様にして動いている・・・・え、動いている?



「何なんだあれは。魚・・・いやその形をした“キ”か?だが、あんなものは始めて見たぞ・・・」


フロートに突き刺さったソレは、確かに魚の形をしていた。

その長さは、おおよそ1mと60ちょっとと大きい。

中身のないがらんどうのその体は、それはまるで剣と槍が合わさったような形だ。

口はまるで、ドリルのように鋭く先端を赤く染めて歪に尖っている。

ヒレや逆立った鱗は、まさに無数の刃物が合わさっているかのよう。

スマートなその体は、きっとピンと伸ばせば槍のように見えるのだろう。


その魚の頭は、“キ”の特徴である髑髏の頭だ。

弱点である核はどうやら腹にあるらしく、ビチビチと動く度に月明かりに照らされて赤く光っている。


ニルスさんが今のうちにと、止めを刺そうとしたその時。再び別の“キ”が海中から現れて、フロートに突き刺さった“キ”の核めがけて飛んでいった。

パリンと音を立てて核が割れれば、形容し難い悲鳴を上げながら“キ”はサラサラと砂のように消えていった。



「なんだ、仲間割れか?」

「魚・・・なんですか?今のは一体」

「説明している暇は無いな。どうやらまだまだいるみたいだ」


ニルスさんが氷の壁を作れば、間一髪の所でその壁に魚の形をした“キ”が何匹も突き刺さる。


なんというか、全身が武器のような外見だけれども。

僕は・・・いや“俺”はこの“魚”を知っている気がする。

というよりは、見た事があるような気がするが、それが何だったのかまでは思い出せない。


「呆けてる暇は無いぞ小僧。あれだけ素早いと、流石の私でも捕らえられん」

「何か対抗策を考えなければ、か」


振り落とされないように、必死にしがみ付いていたリンヨウがそう呟く。

どうやら、船のスピードよりも衝撃的なものを見た結果、船酔いが一時的に引っ込んだらしい。



魚の形をした“キ”は、まるで銃弾のように次々と船へと襲い掛かってくる。


「明かりが見えます。島が近づいてきたみたいですね」


ずっと前を見ていた王女が、そう言うのが聞こえた。


「まずいな。このまま“キ”を連れて行ったら、島は大混乱になるぞ。到着する前に何とかしなくては」


リンヨウさんがそう言うのが聞こえる。


なるほど。確かに船を港へと導くための浮標が、海上でちらちらと見えるようになった。

その中でも目立つのは、夜用の光る浮標だろうか。

淡い光を放ちながら、ぷかぷかと浮かぶ浮標。


その一つが“キ”によって破壊される。

それを見て、“俺”は思い出した。




「(そうだ・・・ダツだ!)」


ダツ。

光に反応して、まるでロケットのように突っ込んでくる魚。場所によっては、鮫よりも怖いと言われている。


でもこの世界で、僕は一度もダツのような魚は見た事が無い。

まあ、似たよなとか。っぽい魚とかは見た事があるが。

光に反応して襲い掛かってくる・・・なんて特徴の魚は見たことも無ければ聞いたことも無い。


うん。母さんやアネモスさんからも、聞いたことがない。


でも、改めて今までの“キ”達の行動を思い返して見る。


先ずは、フロートに突き刺さった時。月の光に照らされて光った核に向かって、思いっきり突進していった。


よくよく考えれば、そうだ。

三人の服に使われている装飾や、ニルスさんや王女の頭髪も、月の光に照らされてキラキラと微かにだが光っている。

星の光以外何も無いこの場所では、よくよく見れば結構目立っているのではないのだろうか。


一か八かの賭けではあるが、一つの案が僕の頭に浮かんだ。



「ニルスさん。どうやらあの“キ”達は光に向かって飛んでいく習性があるみたいです」

「何だと?・・・・言われてみれば確かに、そうだな」

「もっと強い光で誘き寄せましょう。そこを一気に叩くんです」

「強い光か・・・ランプなら丁度手元にある。光は弱いが、動力は魔石を使っている。魔力を流せば、もっと光が強くなるかもしれない」

「そうですね。持っているのは危険なので、それを宙に投げて、そこに突っ込んできた瞬間を狙いましょう。とりあえず、島からいったん離れますね」


帆を動かして、船の行く先を若干そらす。

島に近づけば、“キ”はランプではなく島の明かりに向かって飛んでいってしまう可能性があるからだ。


片手で船にしがみ付きながら、ニルスさんは懐をゴソゴソと漁ると、小さなランプを取り出した。

ランプというよりは、フラスコっぽいデザインだ。


「いっせーのせで、こいつを投げる。一応は安全のために、投げたら直ぐに遠ざかるんだ。わかったな?小僧」

「はい、任せてください」


そう言うと、ニルスさんはランプに魔力を送り始める。

その瞬間ランプの灯りが強くなり、船の上は昼間よりも明るくなった。



「行くぞ。いっせーの・・・せ!」


その合図と共に、ランプが高く宙に放られる。

巻き込まれるのを避けるため、僕はランプから離れるようにして船を動かす。


その瞬間、放られたランプに向かって海中から“キ”が、1.2.3・・・6匹も突き刺さるのが見えた。

それを逃さずに、ニルスさんは一瞬で氷の塊にして閉じ込める。

そして放った氷柱で、その塊を粉々に砕いたのだった。







しかし、ここで気を抜いたのが仇となった。

海上への注意がそれてしまった僕は、海面から見える黒い岩に気がつかなかったのだ。


バキっという鈍い大きな音と共に船が壊れ、ぶつかった衝撃で僕は・・・僕達は海へと投げ出される



バシャンと大きな音と共に、僕達は黒い海の中へと沈んでいき・・・・・・



























薄く霧のかかった浜辺を、誰かが歩いている。

足跡を残さず、そして音も無く静かに滑るように動く様は、それがその人物が只者ではないという事を現していた。



「・・・・おや、まあ」


砂浜に打ち上げられていた四人を見付けるなり、そうこぼした。

それはまるで、此処に流れ着くのがわかっていたかのような口ぶりだ。








そしてゆっくりと口の端を上げると・・・・・・

さて、始まりました後編の第一話はこれで完結です。


次回はいよいよ噂の魔王登場。

そして再び新キャラがぽこじゃかと増える予感。


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