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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】中篇
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やはりというか、あまり当たっていて欲しくはなかった予想の範囲というやつか・・・・気が付けば俺は昏々と、ベッドに倒れこむという形で深い眠りに落ちてしまっていたらしい。

慌てて飛び起きて窓の外を確認すれば、窓から見える太陽は傾き始めていて空と海をほんのりと赤く染めていた。


それはつまるところ、今は王子の言っていた敵の領域に入ったかと予測される時間帯。




「(やられたなぁ、こっちが狙いだったってわけか)」


以前のような催眠作用よりも、今回は睡眠作用の方が強かったということは、だ。

これはどうやら無駄な思考を考えさせる暇を一切与えずに、無理にでも既成事実を作ろうという魂胆にも思える。

そりゃあ・・・・こうやって無理に眠らせて、敵の陣地まで連れてくる事が出来れば。逃げ出すタイミングすらも計れないし、もう後戻りも出来ないだろうよ。



いつの間にか、どうやってここから逃げ出そうかという考えを始めた俺を嘲笑うかのように、無情にもエントランスへの集合の放送が鳴り響いた。














アストルフォス第一王子の演説が、エントランスで坦々と流れている。

内容と言えば飛行船に乗る前にも言っていた、魔王や魔物退治への心得やそのような内容のようなもので。


内容が曖昧すぎる?

これは王子の演説だからとかそういうものではなくって、元々長い話が苦手なだけ。

朝の校長の話とか。あれ全部聞いてる人いるの?



とりあえず話半分に耳を傾けていれば、どうやら最初の難関である監視塔は見付からずに通り過ぎることに成功したらしい。(と、言っている)


なぜこの監視塔は潰さないのかといえば。

この移動は敵の意表を突く為に殆ど隠密状態で行われる。その為に、無駄に戦わずに最後まで戦力を温存するから。らしい。(と、説明している)



窓から外を見れば、なるほど。

遠目から見てもかなり大きな塔を確認することが出来た。


形は、ピサの斜塔のようなデザインに、円盤のようなものがてっぺんについている。あれ、なんていう形だったっけ?(ど忘れ中)

その円盤のような部分には、丸い大きな鏡のようなものがまるで四方を監視するかのように取り付けられていた。


確かにあんなに大きな監視塔ならば、きっとその分の戦力と兵力も多いだろうし。もしも戦闘になった時には、こちらの戦力は大幅に削られるだろう。

それに下手に戦闘が長引けば、その間に魔王本隊の方にも連絡がいってしまい、作戦は失敗して全滅する可能性だってなくもない。いや、そのままルミニエールの方にまで攻めてくることだってあり得る話だ。


それが俺にとって、吉なのか凶なのかはわからないけど・・・・・




そんなことを考えながら外を見ていれば、いつの間にか周囲が騒然とし始めた。

横目で確認すれば、何人かの見張りの兵士があわただしく王子に何かを伝えているのが見える。

そのうちの一人が指を指している方向を見てみれば、飛んでいる飛行船から少し離れた海の上に、一艘の船が浮かんでいることに気が付いた。



その船は小ぶりながらも丈夫そうな船だった。


もっとよく目を凝らして見てみる。

その船に、“槍”のような物を持った人が乗っているのに俺は気が付いた。

いや、アレはよく見れば人ではない。


あまり詳しく見ることは出来ない、が。栗色の短く切りそろえたその髪の合間からは、まるでヒレのような耳が覗いている。

チューブトップのようなインナーから露出している部位と、6・7分ぐらいの丈のピッタリとしたズボンから出ている足からは鱗とヒレが見える。

褐色のその体は、遠目から見ても程よく締まっているのがわかる。

おそらくは、腕に相当な自信のある実力者であろうか。

しかし問題が一つあるとすれば、そう。


この船に乗っている“槍”を持った者は、光学迷彩とギフトの力により不可視の効果が施されているこの船の存在に気が付いている。


それは気のせいでもなんでもなく、その者はハッキリとこちらを見ている。

訝しげな視線と共に、まるで今まで見たこともないような道の物体をマジマジと眺めているような。

そんな感じで、ジッとこちらを見詰めている。





しばらく兵士達と話をしながら外を確認していた王子は、俺達にこう言った。


「あれは魔物です。もしかしたら偵察兵かもしれません・・・・・即刻排除しましょう」


排除―――

第一王子は確かにそう言った。

まるで、厄介な害虫でも相手にするかのようにそう言い切った。




その言葉を聞いて、船内が更に騒めき出すのを感じた。兵士達が、慌てて準備に入るのが見える。

どうやら、例のレーザー砲の準備をしているようだった。











「ちょうどいいですね、コレの威力を試してみたかったのです。では・・・・・・・タカノ様、どうぞ」

「・・・・・え?」


窓の直ぐ下の部分。そこから舵のようなものを出した王子は、俺を手招きしてそう言った。にっこりと張り付いたような笑みを浮かべて。

その不気味さに、ぞわりと全身の毛が逆立つのを感じる。



ああ・・・・・これはおそらくだが、俺は試されている。

第一王子は、確実に俺を疑っている。

背中を流れる冷や汗をその身で感じながら、俺はその舵のようなものの所まで歩いていく。

舵の上には望遠鏡のようなスコープが付いていて、舵の下の部分には引き金らしきものもあった。

スコープで対象を見ながら舵のようなもので砲台を操り、そして引き金を引いて発射する仕組みのようだ。



王子は、笑顔でこちらを見ている。

あの時壁の上で対峙した時のおっさんの笑っていない顔よりも、こちらの方が何倍も不気味に感じた。






恐る恐るスコープを覗き込み、照準を合わせる。

今ここで逆らったとしても、きっといい結果にはならないだろう。

接近して剣を振り下ろすわけでも、突き刺すわけでもない。


ただそう・・・・・・・

引き金を、引くだけでいいのだから。



引き金にかけた指に力を込めたその瞬間・・・・・こちらへ背を向けていた船の上の魔物が、振り返った。


女性だ。中性的な外見だったが、何故か俺はそう思った。

炎のように赤い瞳が、陽の光を浴びてまるでルビーのようにキラキラと美しく輝いている。

彼女はまるで、驚いたかのようにその大きな目を見開いていた。



瞬間、轟く爆音と共に船が炎に包まれる。


その一瞬、相手と目が合ったような気がした・・・・










気分が悪い。


胸のあたりが落ち着かない。


頭が、まるで霧でもかかったかのようにモヤモヤとする。


自分が、自分自身がこんなにも“恐ろしい”と感じたことが今まであっただろうか。






ふらふらとその場を離れていく俺に、第一王子は何も言うことはなく、ただ笑っている。

ただそれだけだった。

前編に出て来た“あの人”が再登場してしまいましたね

例え直接手を下していなかったとしても、やってしまったことに変わりは有りません

ちなみに円筒形ですね塔の形、名前忘れてました

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