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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】中篇
33/42

2/5

前話の、銃口を向けられたその直ぐ後の話です






ゆらゆらと眠気に揺られながら、俺は思い出していた。


あの時・・・・・




銃口は向けられたが、おっさんが俺に発砲してくる事はなかった。

それでもまだ油断することはできないが。



「まあ何、そう怯えなさんな坊主」


おっさんはそう言いながら笑ってはいるが、目はまったくもって笑ってはいない。


「本当はな・・・・・まぁ最悪の場合、厄介なら殺しても構わないと言われてはいたんだが・・・」


誰に・・・なんて、そんなことはわからないが、これだけは確実にわかる。

おっさんはこの国の人間じゃない。

おそらくは・・・いや、確実に魔の大陸から来た人だ。



・・・・・・そもそもおっさんは“人間”なのか?


「どうして・・・・何処でわかったんだ?」


きっと下手な嘘は通用しないだろう。

地下にいた間だけの付き合いではあるが、俺は何故かそう思った。



「この国の一般常識はてんで知らないくせに、立ち振る舞いは箱入りのお坊ちゃまとは全然違う。そのくせ、あの上に上がる壁や不思議な箱の事は、まるでそれが“自分達の一般常識”だとでもいうように随分と慣れた感じで扱いやがる。それに・・・“ユウシャ”召喚なんてものは最初聞いた時は眉唾もんだったが、実際に目の前で見せられたらなぁ・・・・・まあそのせいで、後で見つかっちまって、あんなところに放り込まれちまったわけだが」


どうやら、エレベーターだけではなくシャッターもこの世界には存在しなかったらしい。

それ以前に、あの時の召喚の儀式に紛れていたということは、おっさんは俺が勇者だと分かっていた上で、あえて一緒に行動していたことになる。

理由はきっと、俺が“あの時”言った事と同じだろう。


何かあれば、俺を身代わりにして自分だけは逃げ延びるその為に。



よくよく思い返してみれば確かに、おっさんは地下に厄介な何かがいるということは言っていたが、実際に遭遇するまではポワズンや化け物の精細は俺には伏せていた。

それはつまり、最悪は俺を化け物の餌にでもするつもりだったのだろう。

その為に、余計な知識は与えないようにして。


「おっさんは・・・俺を殺すのか?」


そう聞いた俺に、おっさんは再び笑いながらこう答えた。


「そうは思っていたんだがな・・・・」


そう言うと、おっさんは俺に向けていた銃をそっと下した。

これは一体どういう意味なのだろうか。


「坊主がいなけりゃあ、鍵もこの銃も戻ってこなかったしなぁ。まあ鍵は壊れちまったが、とりあえずはそれでチャラってことだ。それに・・・・・・」

「?」


何かぼそぼそと呟いていたが、俺がその言葉を聞き取ることは出来なかった。

おっさんは海の方を向いて、俺に背中を見せる。


「ホレ、さっさとどっか行っちまいな。俺の気が変わらないうちにな。」


俺がおっさんの事を喋るとは思わないのか。そう言おうとは思ったが、思うだけで口から出てくることはなかった。


まあ俺も言うつもりはないけど。


「手錠はどうするんだよ?」

「お前な・・・自分を殺そうとした相手に、そんなことを聞くか?普通。まぁコレなら自分で何とかするがな・・・・いいからさっさと行きな、俺だって忙しいんだよ」


そう言うと、おっさんは黙った。

とりあえず、俺はおっさんの“気が変わらない”うちに城へと戻ることにした。




「ああそうだ坊主・・・一つだけ言っておく」


壁の方にあった階段を下りていく俺に向かって、おっさんはこう言った。


「城の連中に気を許すな信用するな・・・・それだけだ」




そうして、最初の方へと話は戻る。


俺はリンヨウの事は信用すると言ったが、おっさんの事も信用しようと思う。

これもまた勘なのだが、俺はおっさんはそこまで悪い奴だとは到底思えない。

だがこれもきっと初日だったら・・・そう。


あのアロマを嗅いでいて、まともに考えが纏まらなかったあの時だったら、俺はおっさんの事を最初っから信用してはいなかっただろうし、助けてさえいなかっただろう。

結局のところ

出会ったその時点では、もうすでに引き返す事が出来ないところまで来てたんですよね

何もかもが遅すぎたということです

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