表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】中篇
31/42

5/5






「・・・・・お前さん、意外とやるもんなんだな」


おっさんが、へーと感嘆とした声で、戻ってきた俺にそう声をかけた。

おっさんはといえば、手錠で両手が繋がっているのにも関わらず、カチャカチャと器用に自身の得物であるデカい銃を弄って異常がないかどうかを調べている。


ってかなんだあの弾、俺が使ってるスマフォぐらいの大きさはあるぞ。

あれで頭撃たれたら、普通の人間なんて林檎のように弾け飛ぶに違いない。

それでも穴が開いた程度で動いていたのなら、あの化け物はきっとゾンビのような見た目にも関わらず、それなりに硬い皮膚だったに違いない。


「まあねー、見直した?」

「これぐらいはな」


そう言って、おっさんはOKマークをつくる・・・・・いや、よくよく見たら、親指と人差し指がかなりギリギリの所でくっついてない。



「ちっちゃ!ってか子供か!!」

「うるへー。どうでもいいから、とっとこ上に上がんぞ」


どうやって動かすんだー?これ。

そう言いながらおっさんは、エレベーターの周囲をウロウロする。エレベーターは昔の格子シャッターのタイプで、つまり扉の開閉は全部人力。


そういえばエレベーターって、100年前からあったんだっけ?

俺はとりあえず、以前テレビで見たときの事を思い出しながら格子の扉をスライドさせる。

テレビで紹介されていたのは、インドかヨーロッパだかどこの国かは忘れたけれども。それでも、未だに昔の物がそのまま現代まで残っているのってある意味凄いと思う。



扉は格子タイプの二重構造。一つ二つと力を入れて開けていき(歪んでいるのかちょっと堅かった)、俺は籠の中に乗り込んだ。中にあるボタンを確認すれば、今いるB50と書かれたボタンと最上階のF1と書かれたボタンの二つがあった。


ちなみに余談だけど、Rは屋上って意味ね。




「おーいおっさん置いてくぞー」

「おいおいおい大丈夫なのか?これ、落ちないのか?これ」

「大丈夫大丈夫・・・・・・・・・多分ね(小声)」

「今多分って言っただろ、聞こえてんだよ・・・・・・・まあいい」


そう言いながら、おっさんは慌てて乗ってきた。

うん、落ちない(はず)。キチンと整備されていれば大丈夫(多分)。


扉をキチンと全部閉めて、俺はF1のボタンを押す。

ちゃんと閉めないと動いてくれないとか、そんなことをテレビで聞いた気がする。

エレベーターは歪な音を鳴らしながら、そして時折ガタガタと揺れながらゆっくりと上昇していく。

派手とは言い難いが、あまり聞いていても心臓にはよろしくない音だなー。

まるで悲鳴を上げているみたいだ。







「(我ながら、よくここまであの段数の階段を登ることが出来たよなぁ)」


何の気なしにふっと下を見れば、最初に通ってきたシャッターが歪な形で破壊されているのが微かに見えた。やっぱりあの化け物は、俺達の後をつける形で追ってきたようだ。

恐らくは、あの通路の所々に菌糸でも張ってあったに違いない。



とりあえず安心したせいなのか、足に力が入らない。俺もおっさんも、その場に倒れるようにして座り込んだ。


ってか普通に疲れたよ・・・











おおよそ15分ぐらい。古いせいなのかどうかはわからないけど、ゆっくりと時間をかけてエレベーターは地上に到着した。

ははは。上がってる最中で、あの化け物がまた襲い掛かってこなくってよかったわ。



着いたその場所はコンクリートらしき作りの一本道で、まるで建設途中の工事現場のように、組まれたパイプや鉄骨らしきものが見える。その先には再び螺旋階段があった。


また階段かー、なんて文句を言いながら螺旋階段を上がり、その先にあったドアを開ければ外に出ることが出来た。


久しぶりに見る陽の光に、目が若干しぱしぱする。


ぐるりと見回せば、どうやら以前城から見えたあの高くそびえ立つ壁のその上に出た様子。

よくよく目をこらせば、ルミニエールの城が遠くに見えた。


場所的には、俺達がいるのは海側らしく城の後方にはあの災害跡が微かに見えたため、あの場所からは正反対に位置するみたいだ。


海の方へと目を向ければ、地平線へと沈んでいく太陽が見える。時刻は夕方だろうか。

港がすぐ近くにあるらしく、大きな帆船が見える。

輸送船なのだろうか、大きなコンテナみたいな物を6つ、樽のような物を100近くは積み込んでいた。




「はあー、やっと外に出られた」


どのくらい地下にいたんだろう、と。そうぼやきながら再び座り込んだ俺に、おっさんは声をかけてきた。


「坊主・・・・・・・お前さん、ウワサの“ユウシャサマ”ってヤツだな?」

「・・・・・・へ?」


確信したようにそうぽつりと呟いたおっさんに、俺は突然のことで反論も何も言えず持っていた護身用の鉄の棒を落としてしまった。











カランカランと音を立てて鉄の棒が落下していく中、おっさんは黙ってその馬鹿デカい銃の銃口を俺に向けた。

人力エレベーターは、ネロちゃまの時代からあったようです。

銃弾は、噂の撃つと持ち手が吹き飛ぶアレを参考にしました。

あと、颯くんおっさんに正体バレていましたね。ピンチ続行中です。


さて、始まりました中編の第五話はこれで完結です。

「よかった」「面白かった」と思っていただけましたら、感想やブックマークなどお待ちしております。それが次回への励みになります。


ひょっとしたら、この先憂鬱な展開が多くなるかもしれません。



キャラへの質問なども受付中です、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ