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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】中篇
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戌江は剣を扱うが、どうやらパワータイプのようだ。

バイキングソードは元々が重い剣だけに、通常ならば振り上げた際に多少の隙が生まれるのだが。


彼が扱うと、振りこそは大きくなってしまうが、その次への動作が素早い為にあまり隙が生まれない。

しかも、どうやら接近での一対一の“喧嘩”慣れもしているようで、隙を見つけて攻撃しようにも、蹴りやらがなにやらが入る為に、中々懐へと踏み込めないでいた。





──────────────────────・








全員が、魔王討伐を決意したその後。

あの後俺達は昼食の後に、戦うための訓練をすることとなった。


そりゃあそうだ。喧嘩やら部活動や道場等での経験はあったとしても、命をやりとりする“殺し合い”なんてものは、今の平和な日本に普通に住んでいる普通の“一般人”になんて、戦闘経験なんてものは無いに等しいだろう。


それにこの世界では、最初のほうにも説明した通りギフトといわれる不思議な力がある。

先ずは、その能力を開花させるところから始まった。

その後で、基本的な戦闘訓練の指導に入るそうだ。


どうやら、俺達のように異世界からやってきた人達は、この世界の人よりもギフトの力が強いらしい。


なるほど、だから勇者を召喚するのか。






ギフトの開花は、ちょっと強引だけれども第一王子の手を借りて行う事となった。とはいっても開花方法はとてもシンプル。

王子が対象者の胸に手を当てて、ギフトの力を相手に送り込む。ただそれだけ。本当は自然にゆっくりと伸ばしていくらしいが、俺達には正直時間がないため、この少々強引なやり方でいくことになったのだ。



そしてその結果はすぐに己の体に表れた。

胸の部分から、温かい何かか全身の血管を伝うようにして広がっていく。そんな、不思議な感じがした。


王子の手が離れた後も、この不思議なぬくもりはしばらく続いていた。




しばらくは毎日、このギフトを体内で巡らせる訓練を行う。これは戦闘訓練における、初歩の訓練だそうだ。


先ずはギフトの力に慣れないといけないそうで、これが出来ないと武器の指導も出来ないらしい。


そして全員がギフトの力になれた頃・・・・

とはいえ実はたったの三日しか経っていないわけだけど。





慣れるのが早すぎだろうとは思ったが、どうやらこの世界の食事を摂取することにより、体が徐々にこの世界に馴染んできたのが大まかな理由らしい。


あとはやはり、異世界から来たから・・・というのもあるのだろう。








そして次に、ギフトと武器を使った訓練が始まった。


先ずは全員に剣が手渡された。

訓練用だからだろうか、ちょっと刃毀れ等が目立っているように見える。


この訓練では初歩の時と同じように、だけれども今度は剣も体の一部のようにして、ギフトの力を剣のほうにも巡らせなければならない。

そうすれば、剣は例えナマクラであったとしても通常の何倍もの力を発揮するらしい。





そういいながら、ギフトの力の使い方を教えてくれてくれた兵士が剣を抜くと、そのまま鉄の塊へと振り下ろす。

最初は剣はキィンと弾かれるが、次に剣を振り下ろしたとき。つまりギフトを纏った状態で再び鉄の塊に剣を振り下ろすと、鉄の塊はスッパリと難なく真っ二つになったのだった。




1から10まで丁寧にこの説明してくれた人は、大隊の隊長らしい。

かなり偉い人だ。




ちなみにこの人の名前は、サラザードというらしい。



実際に俺達が魔物と戦うときは、この人の大隊で前線で戦うことになるそうだ。





そして剣にギフトを馴染ませることが出来たら、次は兵士たちとおこなう鍛錬をする。

これは2回目になるが、俺達はそもそも“戦う”ということには慣れていない。まあ現代っ子なので当たり前なのだけれども。

だからこそ兵士達と手合わせをすることにより、ある程度の戦闘というものに慣れておく必要があるのだ。



戦闘訓練はまず一対一から始まる。先ずは単純な打ち合いからだ。

そしてそれに慣れてきたら、次は二対一・三対一と徐々に増やしていく。


勿論魔物は一対一のタイマン勝負なんて作ってはくれない。これは多数で攻められた時の対処法だ。



そして五対一まである程度慣れてきたら、次は実際に魔物を倒す訓練へと移る。




とはいえ本物の魔物ではなく、ギフトの力によって動きを再現した人形のようなものだ。

ギフトには、まるでカラクリ人形のように、ある程度の対象の物を動かせる力もあるらしい。


最初は小さなゴブリン型、次にオークのような大柄な型。ハーピーのように空を飛ぶ型・・・・・・・そしてワイバーンの型等々ets。




二週間が過ぎた今では、こうして対魔物訓練の合間を縫ってはお互いに手合わせをする、という訓練が新たに追加された。






───────・


何故お互いに手合わせをするのか。

その理由は、戦った最に相手の欠点などを見付け、それを教え合い更に能力を向上させる。

というのが狙いだ。


まあ、普通の兵士じゃあ萎縮してしまって本音をバンバン言えないから・・・・と、言うのもあるのかもしれない。





ガキィンッという音と共に、右手の剣が弾かれた。

改めて、両手にある剣を持ち直す。

喧嘩とはいえ接近戦に馴れてるって、結構厄介だ。


今度は、戌江の方から先に動いた。

上段に剣を構えて、正面から突っ込んでくる。

あのまま、まともに受ければ俺の剣は今度こそ弾かれて何処かに飛んでいってしまう。



「(だったら、受け流すしかないけど)」


思うのは簡単だが、それを実行に移せるかどうかは別の問題だ。しかし、相手は最早眼前まで迫ってきている。

ここは深く考えている暇は無い。




俺は、剣を構えている状態のように肩よりも少し上にした。刃の先を外側に向けた状態にして、最初の重い一撃を左の剣で流すように受ける。


キィンという音と共に、ギリギリと刃が擦れる音が響く。

ズシリと腕に負担がかかるが、それは剣の重さと戌江自身の力が相まっているからなのだろう。


だけど、これで終わりではない。戌江の右足に、力が入ったのが見えた。

突っ込んできた勢いを殺さぬまま、彼は右足に力を込めると左足で蹴り上げてくる。

俺は、それを右手の剣で抑えた。普通ならば、そのまま足が切り落とされてしまう所だがこれはあくまでも訓練。

足にもギフトの力を纏わせているため、ここは弾かれるだけで終わった。


体勢を整えさせる隙は与えない。

弾かれて隙の出来たその体に向けて、俺は左手の剣をそのまま振り胴体へと打ち込んだ。







「両者そこまで」


訓練を見てくれていたサラザードさんの静止の声で、今日の訓練は終了した。


訓練は、正直キツイ方だと思う。毎日戦い戦いと戦いの連続だった。

ギフトの力で身体を強化してなければ、きっと今頃は筋肉痛で寝込んでいただろう。






それでも毎日運ばれる食事は、疲れている俺の心の癒しになってくれた。

初日に食事を運んでくれた兵士は、どうやら俺の食事担当になったらしい。


と、いうよりかは彼自身から俺の担当になりたいと、そういう申し出があったそうだ。

どうやら、俺があまりにも夕食を絶賛し尽くしたからだとかそういう理由だとか。





そう、初日を含め毎日の食事を作っていたのは、何とこの人だったのだ。

俺はつまり、作った張本人の真ん前で、滅茶苦茶ベタ褒めしながらガツガツと平らげていたのか。



顔が赤かったのも、緊張していたのも、人見知りとかそういうのじゃなかったのか!


そりゃあ、俺だってあんなにべた褒めされたら、顔が真っ赤になりますわ。

ちなみにこの料理担当の兵士の名前は、リンヨウ・ホークフィールドという名前らしい。

同じ名前に“鷹”が同士段々と少しずつ話すうちに、お互いタメ口で話せるぐらいに仲良くなった。







ちなみに彼、リンヨウは18歳らしい。この国では、男子は18歳でまず兵士として一年過ごし、そして19歳を迎えると晴れて成人として扱われるそうだ。


彼もその一人らしい。わお一歳年上。






明日はどんな訓練があるのか。

俺はベッドに潜りながらそう考える。












初日に部屋に漂っていた甘い匂いは、もうすっかり無くなっていた。

次回 再び新キャラの予感

キャラまとめは、章が終わり次第あげていく予定です


始まりました中編の第二話はこれで完結です

「よかった」「面白かった」と思っていただけましたら、感想やブックマークなどお待ちしております。それが次回への励みになります。


※今現在、書き溜めたものを出している形なので暫くは更新は早めです。



キャラへの質問なども受付中です、お気軽にどうぞ。

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