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Rad des Fatalität~希望の風~  作者: 甘藍 玉菜
【夢幻空疎の楽園聖都市】中篇
19/42

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再び始まる食事回


 


 

「はい」

「あの、勇者様。お夜食をお持ちしました」

「あぁ、もうそんな時間か・・・わざわざありがとうございます」


銀のカートを押しながら、一人の若い兵士が入ってきた。

白を基準としたコートとベスト、キュロットを履いている。淵やボタン、刺繍は金をメインにされており腰には剣を差していた。


青い帽子をかぶっていて髪型などはわからないが、顔を見た感じでは俺と歳は近そうだ。


彼はカートから、ドームカバーを被せてある食器を幾つかテーブルに並べ始めた。そして、ガラス製の食器やグラスを用意する。




仄かにいい匂いが漂ってきた。ぐぅっとお腹が反応する。そういえばお昼食べてなかったっけ。 

俺は行儀が悪いなど思いながらも、ドームカバーをチラリと上げて中を見る。そしてそっと元に戻した。


凄まじく豪華な食事が見えた気がする。ある意味ニヤニヤが止まらない、というよりか口内の涎が止まらない。




口が悪くなるがあえてこう言おう。



スンゲーーー美味しそう。





お金持ちって、こんな豪勢なもの食べてたんだな。なーんて貧乏人丸出しな考えをしている最中も、兵士はちゃっちゃと食事を並べていった。





「勇者様、お待たせいたしました。本日の夕食は、チーズとトマトのカプレーゼ・魚介メインのトマトスープ・白身魚のアクアパッツァ。デザートはベリーのティラミスです・・・・あの、勇者様?」

「ハッ(意識が飛んでいた)・・・あ、ありがとうございます。いただきます」


意識が飛んでいた。そりゃ誰だってこんな夕食みたら意識が飛びますとも。

手を合わせて、再度いただきますとつぶやくと、俺はフォークを持って恐る恐るアクアパッツァを一口と食べてみた。





・・・・・・・・・・・・・・・









美味い!

ナニコレ美味い!美味すぎる十万石饅頭。多分この魚は鯛だぁ~~~、至福。鯛なんて最後に食べたのいつだっけ?


ただひたすらに、一言も発すること無く黙々と夕食を食べていく俺に何を思ったのか、控えていた兵士がおずおずと話し掛けてきた。




「あ、あの勇者様・・・・お口にあいましたでしょう、か?」

「う・・・」

「う?」

「う・・う・・・う・・・・・・・うまぁ~、これすっごく美味しいですよ!初めて食べましたこんなに美味しいの!!」

「そ、そうですか?ありがとうございます!」



鯛一匹を丸々と使ったアクアパッツァは、アサリと鯛とレモンのさっぱりとした酸味も相まって凄く美味しい。身のほうも濃厚で、一口二口と噛み締めるたびに、口の中に魚のうま味とオリーブオイルをメインとしたダシがあふれ出てくる。というよりも良い感じで煮込まれているせいか、ほろほろと口の中で簡単に崩れる。いっしょに煮込まれていたトマトとパプリカにも、鯛とアサリのうま味がギュッと染みこんでいるマジウマー!




チーズとトマトのカプレーゼも、胡椒とオリーブオイルのシンプルな味付けながらも、濃厚な味のチーズと、ピリッとした胡椒とトマトの酸味が良い感じでマッチしていてマジウマシ!

(モッツァレラチーズだっけ?)




トマトスープは、ぷりっぷりに煮込まれたタコとあっさりとした鱈にアサリのうま味とトマトが良い感じで染みこんでいる。噛みしめれば噛みしめるほど、タコのうま味とアサリのうま味とトマトの酸味が口の中でなんとも言えない感じで広がっていくチョーウマイ!



ニコニコと笑いながら、俺はドンドンとただひたすらに食べていく。心なしか兵士の方も、緊張が解けてきたみたいだ。


「あ、あのですね勇者様。アクアパッツァのこのスープなんですけど、実はバケットに浸したりして食べても美味しいんですよ」

「え、なにそれ凄い美味しそう。食べてみたい!」

「わっかりました!ではただいまバケットをお持ちしますね、少々お待ち下さい!!」



そう言うと、兵士は急いで部屋を出ていった。俺は美味しいご飯を頬張りながら、彼が戻ってくるのをゆっくりと待つのだった。



ガッシャーン


あ、これはこけたな。









あの後兵士は直ぐに戻ってきた。肩で息をしているところを見ると、多分全力疾走をしたのだろう。



バケットのほうも、パリッとしたちょっと堅めの皮と、生地はまるでお餅のようなもちっもちの食感だった。


スープに浸して食べれば・・・なるほど、これはいける!

じんわりとスープがしみ込んでいって、しんなりとしたバケットを一口・二口と口に運ぶ。


バリッといういい音と、口の中で噛むほどにほんのりと甘みと粉の味と、染みこんだ魚介の味が濃縮されたスープとが絡み合い、軽い感じでスイスイと口の中に入ってしまう。



うん、まさにやめられないとまらない。ってやつだ。




その後のデザートも、ベリーのティラミスも美味しかった。ベリーの甘酸っぱさが染みこんだティラミスは、そのコーヒーのほろ苦さとうまくあっていてほっぺたが蕩けそうだった。



食べたあとはもちろん・・・





「ご馳走様でした」



俺は手をあわせて、深々と頭を下げた。


異世界なので、正直どんなものが出てくるのかちょっぴり怖かったが、中々想像以上に美味しかった。俺は食器の片づけをしていた兵士に声を掛ける。


ちなみに手伝おうとしたら、客人にそんなことをさせるわけにはいかないと言われてしまった。


「あの・・・すみません」

「はい。なんでしょうか、勇者様」

「この料理を作ってくれた方にお礼を伝えてくれますか?その・・・俺、正直こんな豪勢で美味しいご飯生まれて初めて食べました」

「!!・・・・・わ、わかりました!自分からそうお伝えしますね!」

「ありがとうございます」


兵士は、そう答えると顔を真っ赤にしてバタバタと片づけると、ガラガラとカートを押して全力疾走で廊下を走っていった・・・・・




ガッシャーン!



あ、またこけた。













食事の後は・・・何もする予定がない。どうにか明日からの事でも考えようとはするが、夕食をお腹いっぱいに食べたせいか、どうも頭がふわふわしてしまい中々思考がまとまらない。




明日に備えて、俺はとりあえず今日はもう寝ることにした。

生憎と着替えはないので、インナーとトランクスだけになる。制服のままで寝たら皴になるしね。


部屋の灯りは、ベッド脇にあるサイドテーブルに置かれいるスイッチでONOFFが出来るそうだ。と、夕食を持ってきてくれた兵士から、食べているときに聞いた。


灯りを薄暗い状態まで落とすと、ベットに横たわってとりあえず目を閉じる。あ、ベッドすっごいふわふわだ。全身を包み込まれているような、いい感じがする。さすがにこれは言葉では表現できない。

ふっかふかのベッドを堪能しながら、さらさらとした肌触りのいいシーツと布団カバーに包まれると、眠気がいきなり襲い掛かってきた。




頭がガクガクする。どうやら、自分でも気が付かないほど俺は疲れていたらしい。

















頭の片隅にまとめられていた思考が一気に消されていき、俺は抗う事もせずにその眠気を受け入れた。


イタリア料理を意識しました。

カプレーゼにはモッツァレラチーズですよね。


そいやあ前篇もそうだけどなんだか食べてばっかり。

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