エピローグ そして世界はなろうテンプレに至る。
今からずっとずっと昔、私達の世界は天を貫くような建物や空をも支配する高度な文明を持っていた。
だけど過去の人間たちは、傲慢にも神を忘れ、自然は支配出来ると思っていた。
世界中の人間を何度でも滅ぼすような恐ろしい魔法を持ち、大きな島を動かし、鉄の塊を空に飛ばして、ありとあらゆる人間が美食に溺れ、それだけじゃ飽きたらずもっと豊かな生活を求めて争って、世界を滅ぼす魔法は何度も使われて破滅の危機を迎えてしまう。
そんなは滅び行く世界の中で賢者イトー様は、救いを求めて高位の世界にいらっしゃるって言われている至高神「ヘンタイ様」に呼びかけた。
心優しい至高神ヘンタイ様は悲痛なイトー様の呼びかけに応えて、正しい心を持つ人間だけを生き残れるようにしてくださった。
終末戦争は恐ろしいもので、多くの人が1日のうちに死んでいって、最初の7日で1億を超える人が死んだって経典には残されている。
でも残された僅かな人は終末を乗り越え、荒れ果てた世界で新たな文化を築こうと神様に感謝して、前の世界とは違う文化を築こうと頑張った。
そうして頑張っていたけど、新しい時代には古い時代の脅威もまた生き残っていて、魔物の頂点に君臨するオークたちが多くの魔物を引き連れて何処からともなく現れたらしい。
人々はヘンタイ様にオークを滅ぼして欲しいと願ったけど、今までの罪を改め新たなる可能性を手に入れる試練だと、仰ったらしい。
その言葉は本当だったらしくて、私達の中には特殊な能力、スキルを持つ存在が生まれるようになった。
その中でも私達人間の祖先である7人の英雄、神の力の片鱗を持つと言われた7人、後に7つの国を作る英雄王たちとオークの戦いは凄まじく、繁栄を極め世界を支配していた過去の人間が作り上げた遺構、天を貫くのような大きな建物が並ぶ幾つもの都市を巻き込んで何十年も続いたらしい。
その戦いで過去の文明はその殆どが遺失してしまったけど、そうした文明の残りは地下や大きな森や山の奥に、ダンジョンと言う形で残っていて、私の住む「カントー」王国にもいくつかあって、「シンジョク」あるダンジョンは世界最大だと言われている。
そこには戦闘系のスキル持った人達でも、冒険者ギルドに加入したAランクの冒険者しか入れない様になっているらしい。
私もできれば冒険者になって村をでたい、その夢をかなえるため15歳の誕生日を迎えた今日、私はシンジョクのヘンタイ神殿でステータスチェックの儀式を受ける事にした。
「どうか、スキルが有りますように……」
もしもスキルのない無能者だったら、国民権を剥奪されて奴隷になる、それだけは絶対に嫌、もし奴隷になんてなったら、一生奴隷のままで惨めな人生を送らなきゃならない。
「安心しろよ、お前が奴隷だったら俺が買ってやるからさ、クククッ……」
私の隣で嫌味たっぷりに笑っているのは、同じ村で育った同い年の幼なじみで村長さんの息子、そして一応、私の同行者。
自分はスキルがあるって知ってるから余裕だとばかりに、私が無能者だと決めつけて言ってくる。
「ふざけないで、私はアンタの奴隷になんて絶対にならないわ!」
アイツはとっても気持ち悪い視線で、舐めるように私の胸やお尻を見てくる、こんな奴の奴隷になんてなりたくなくない、どうか神様、私にスキルをください!
「はははははっ、生意気な態度だが、まぁ今いいさ、どうせお前は無能だろうし、スキルがあってもせいぜい『夜伽』で娼婦くらいだろうしな」
悔しいけど私にははっきりとしたスキルはない、普通は子供の内に生活している間にスキルがあれば何かしら片鱗が見えるし、無能者がどんなに努力したってスキルの壁は越えられないから、無能者は奴隷にしかなれないのだ。
「せいぜい笑っていなさい、私は絶対に冒険者になってやるわ!」
普通の生活で見えないスキル、それがさっきアイツが言った「夜伽」なんてスキルだ、もしそれったら私には誰かの元に嫁ぐか娼婦の道しか無いだろう、それ程にスキルは絶対だ。
だからこそ、次期村長で村の支配者であるこいつから逃げるため、私は今までやったことのない戦闘系のスキルが何か有ることを願うしか無い。
「では次の方、そこの女性ですね、さぁステータスパネルに手を当てなさい」
神聖魔法のスキルを持つ神父さまの、どこか他人ごとのような業務的な言葉を聞いて、私は緊張に震える手をそっとステータスパネルに置いた。
これから数秒で私のこれからが、人生すべてが完全に決まってしまうのだと思いながら……。
これで最後です、これはアナザーに至ることが出来なかった結末です。