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『こちら第4警戒班!正体不明の魔物に襲われている、援護を要請する!』
夜が辺りの森を隠す頃、とある砦に緊急通信が入る。
「こちら、ヴェリン砦、状況を報告せよ」
通信士官は魔法による遠距離通信を行う、魔導通信機を手に取り応答する。
『こちら第4警戒班、巡回任務中に謎の魔物を襲撃を受けた、総員6名のうち2名が負傷、現在負傷者を連れてヴェリン砦に撤退中、向こうの足は遅いが、こちらも負傷者を連れている、このままではじきに追い付かれる』
警戒班からは疲労の濃い声が聞こえてくる、それに対し通信士官は
「了解した、そちらに待機中の部隊を送る、それまで現状を維持せよ」
『第4警戒班、了解』
魔導通信機からの発信信号により警戒班の現在地を発見した通信士官は待機中の部隊に連絡する。
「こちらヴェリン砦、そちらから1㎞東にて巡回中の第4警戒班が正体不明の魔物の襲撃を受けている、至急援護に急行せよ」
『こちら第3歩兵分隊、了解したこれより急行する』
通信を受けた第3歩兵分隊は第4警戒班の救援へと向かった。
一一一一一一一一一一一一
「はぁ、これは困ったな。」
修二は止めているバイクに跨がったままため息をつく、そんな修二の前には二股に分かれた道があった。
「これはどっちに向かったものか、もう夜も暗くなってきた。」
右の道は幅が狭まり路面が荒れており、左の道は幅こそ狭いものの路面は綺麗に慣らされていた。
「右は人の気配が無さそうな道なんどよな、ただ、左は…」
左の道はパニアケースのついているZZR400ではギリギリの幅になっていた。
「何でこんなに狭くなっているんだか? まあ、進むしかないよな。」
決断した修二はバイクを左の道に向けて発進させた。
「やっぱり狭いな、本当に道なのか?」
疑問を口にしつつも30㎞位で進んでいった。
一一一一一一一一一一一一
「おっ、広くなってきた。」
先程の分岐点から20分位走った所から徐々に道が広くなってきていた。
「これなら、もっと速度も出せそうだな……良し、飛ばすか!」
修二はアクセルを回し、どんどん加速していく。
幸い直線であるため夜間でも遠くまで見えている
ため速度を出していく。
ブォォォォォ
夜の闇の中にZZR400の排気音が鳴り響いていく。
メーターが130㎞を叩きだし、修二がアクセルを緩めていると、前方のライトに照らされた先に大きな動く物体が見えた。
「ん?何か前方にあるのか?」
修二はバイクを即座に減速させていく、そして修二に気付いた巨大な物体はゆっくりと振り返り。
「! 魔物か!」
減速していた修二はアクセルを捻り、魔物の横を滑る様にすり抜けていく。
ドガァァァン
振り抜いた魔物の腕がすり抜けたバイクの直ぐ後ろの地面に当たる。
ズサァァァ
バイクを横向きにして、滑らせながら止めた修二はバイクから降りベレッタを構える。
「ん?」
ベレッタを構えている修二の視界にキラリと光るものが見えた、気になった修二はベレッタを構えながらも、そちらに視線だけを向けた。
(鎧?いや、人か?)
視線の先には鎧を着た人らしきモノが道端にぐったりとした様子で倒れていた。
(無事か確認したい所だが、先にこいつを始末しないとな。)
地面に突き刺さった腕を引き抜いた魔物の頭部に修二は銃口を向け……
パァン
銃弾が命中した魔物は吹き飛んだ頭部から血を撒き散らしながら地面に倒れた。
(さて、この鎧を着た兵士?をどうしたものか。)
「おい、大丈夫か?」
兵士に傷が無いか確かめながら呼び掛ける。
「ううっ、あなたは?」
(右腕から出血しているな。)
「俺か?…ただの通りすがりの旅人だ。」
修二はそう言いながら鎧の右腕を外していく。
「ここには、魔物がいたはずですが?」
兵士は意識が朦朧としたまま修二に声をかける。
「ああ、その魔物ならそこでくたばってる、
それより手当てするから動くなよ?」
修二は腰に着けている、救急用のポーチから包帯を取り出し手当てする。
「くたばった??一体?」
兵士は首だけを魔物が倒れている方に向けた。
「‼あれほど強力な魔物を一体どうやって?」
混乱している兵士に対して修二は、
「おい、そろそろ良いか?手当も終わったんだが。」
手当も終わり、状況を把握したい修二は立ち上がりながら兵士に呼び掛ける、その呼び掛けに対して兵士は、
「はい!…っぅ」
急に起き上がった兵士は痛みに唸りながらふらついた所を修二に支えられる。
「すみません、ご迷惑をお掛けしました!」
兵士は慌てて修二から離れ、シュビッと音がなりそうな敬礼を行う。
「いやいや、別に気にしなくて良いから、状況を説明してくれないか?」
(この兵士、かなり小さいな。)
修二は状況の説明を頼みながら、そんなことを思う。
「すみません、自己紹介が遅れました。
自分はヴェリン砦 第4警戒班所属レーナ二等兵です。
先程は危ない所を助けて頂きありがとうございます」
そう言って兵士--レーナ二等兵は敬礼をした。
それに対し修二は、
「どういたしまして。俺は修二だ、それじゃあ続きを頼む。」
お互いの自己紹介を終えた修二達は本題に入っていく。
ついに?この世界の住人に遭遇!
今回もあっさり倒してしまいましたが、今後主人公が苦戦する敵も出てくる予定です。
ご期待下さい!