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ウィィィ
ZZR400Nの調子の良いエンジン音を響かせながら、俺は今ドラゴンと戦った場所から20㎞程走った場所にいる。
取り敢えず、休憩が出来る様な場所を探しながらバイクで走っている最中だ。
「かなり走ったな、周りの風景も変わってきているし、止まれる場所を探してみるか。」
周囲は先程までの背の高い木々に覆われた森の中ではなく、少し大きめの川が流れる草原へと姿を変えていた。
「おっ、これは!」
俺の目の前に現れたのは対岸が小さくしか見えない程の大きな湖だった。
「綺麗な景色だな。」
湖は澄みわたった水で満たされ、底まで目視で見える程だ、湖の周囲には今走っている道と向日葵の様な花が咲いた花畑が景色を彩っている。
「草の高さも大分低くなってきた、これならバイク止めても大丈夫そうだな。」
俺はそう言ってバイクを湖の岸に近付ける。
カコッ
俺はギアをNにいれエンジンを切る。
「取り敢えずここで休憩にするか。」
バイクを降りた俺はヘルメットを脱ぎ、パニアケースに入っていたペットボトルを取り出す。
「ゴクッゴクッ プファ、流石に疲れたな。」
喉を潤した俺はペットボトルをパニアケースに仕舞うとスマホを取り出す。
「やっぱり、GPSは表示されていないか、……ん?圏外じゃない?」
スマホの電波表示を見ると、確かにアンテナが立っている。
「こういう時は圏外なのが普通だと思うんだが…まあ良い、ネットに繋いで見るか。」
俺はスマホを操作し、ブラウザを立ち上げる。
「どうやら使える様だな、書き込みも出来る。」
俺は確認した後スマホを仕舞おうとするが、ランプが光りメールの着信がある事に気付く。
「メール?一体誰から?」
メールの画面を表示するとそこには差出人に【神様】と書かれたメールが受信されていた。
「神様?誰かは知らんが見てみるか。」
そして開いたメールには、
『貴方は忘れていると思いますが、私とは、一度お会いしています。』
(神様と?一体何処で?)
『何処で、とお思いでしょう、貴方とはトンネルの中でお会いしています。
その証拠に、貴方はトンネルの中の記憶の一部を忘れているはずです。』
「確かに、少し思い出せない所がある。」
トンネルの中での数分間の記憶が抜け落ちていた。
『忘れている記憶は時間と共に思い出すでしょう。
ただ、貴方にした説明も忘れている筈なので、そのスマホ?と言う機械にもう一度説明を送らせて頂きました。
では、説明させて頂きますね。』
そこで一度区切ると
『まず、貴方が居る場所について、そこはユートピアと呼ばれる世界です。
その世界は様々な神々が集う世界で、魔法等が存在しています、貴方に与えた力もその魔法の一種です、その力は思い浮かべた物の創造です。
ただし、複雑な物はその構造を理解出来ていないと、創造出来ません、そしてその力を使用するには魔力と呼ばれる物を消費します。』
(成る程、だから武器が出現したのか。)
『そしてその消費量は創造する物の大きさによって決まります、形が複雑でも質量が少なければ使用する魔力は少ないと言う事ですね。
そして次に、ステータスプレートと呼ばれる物についてです。
ステータスプレートはこの世界の住人全てが所持している物です、使い方は半透明の板を思い浮かべステータスプレートと唱えて下さい、声に出さずに心の中で唱えるだけで大丈夫ですよ。』
(試してみるか…ステータスプレート)
俺が心の中でそう唱えると目の前に半透明の板が現れた。
「これがそうか」
現れたプレートを左手に抱え、神様のメールの続きを読む。
『これで一通りの説明は終わりました。他の事は記憶を思い出せば分かるでしょう、それでは、ご武運をお祈りしております。
親愛なる女神より。』
(終わりか…まだ分からない事だらけだが……)
「まずはステータスプレートを見てみるか。」
次回はプレートの内容の説明から入ります。