表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長政?はつらいよっ!! 静かなる逆襲!!  作者: 山田ひさまさ
~ 浅井はやっぱりハードだねっ!! ~
2/23

屈辱に耐えて

状況は似ていますが、話が変わりはじめます。

12日 


― 小谷城評定の間にて ―


「殿、いかがなされます!」

「どうか我らに下知を」


 俺はずーっと悩んでいた、皆の気持ちも判るがここは堪えるべきなのだ。

江北の発展のためには、江南との連携が欠かせない。

 独立はしたとしても、穏便でなければならないのだ……。


「すまん、六角家に従い出陣する!」


「なんですと!」

「そんな!」

「むざむざ、浅井の名を貶めてまで、あのバカ殿に従うのですか!!」

流石に皆、承伏しかねるのだろう、評定の間がざわめく」


「この度の出陣は私の本意ではないが、戦で高野瀬殿は救えまい。義治の馬鹿に付き合わねばなるまい、皆の者よろしく頼む」

俺は頭を下げた。


「頭をお上げ下さい、殿」

「我らどこまでも殿に付いていく所存です」


「判った!では、皆の者。明日、浅井軍は、出陣じゃ」


 『浅井は、江北の為に!』

 俺が、檄を飛ばす!


 「「「「「浅井は、江北の為に!」」」」」

 皆も、唱和してくれた。

 (決めゼリフはたいせつだ。)


「では、我らこれより出陣の準備をいたします。殿もご準備くだされ」

皆が、せわしなく座を立つ。


「まあ待て。当主は俺だ。皆に、ちと相談がある」


「はあ。」


「ごにょごにょごにょ、……という事で皆よろしく頼んだぞ」

そう言って、俺は軍議の席を後にした。


 雲雀山御殿に戻り、妻達としばしの別れを躱した。

俺は、つまらない迷信など気にはしない男だ。

 身重の妻が二人もいるのだ……。

泥水でも何でも啜ってでも、気に入らない奴に這い蹲って(はいつくばって)でも小谷を守りたい。






― 肥田城を攻める六角勢 ―


 配下の忍びを数多く放ち情報を得ていた。


「忍びにて敵を知れば、百戦百勝だ」

新当主となった義治が、家臣を前にうそぶく。


「浅井家動員令が出ました、六角家に御味方する由にございます」


「おおっ!浅井が来れば勝ったも同然!」 

「……」


13日

「浅井の軍、先軍が小谷を出た模様です」

「浅井の軍、久しぶりの動員なのか動きが鈍いです」


14日

「浅井勢、佐和山城に到着したとのこと」

「家老、赤尾清綱は、一色の動きを警戒し、『無理な後詰めを見合わせる』よう進言しているとの事」

「海北綱親、阿閉貞征らは、主戦派の模様」

「先陣、赤尾隊佐和山を出ました」

「雨森清貞は、『肥田城に説得の使者を立てる』ように直談判をしているらしいです。」

「浅井賢政殿に、あやしい動きありません」


15日朝

 六角軍の2万の軍勢は、遠巻きに肥田城を囲んでいる。

北は宇曾川、西は琵琶の海。

水攻めのための堤防が築かれ、一面が水浸しである。

ある意味、戦とは無縁そうな長閑な風景である。


南側に、第一軍、蒲生定秀・永原重興・進藤賢盛・池田景雄

東側に、第二軍、楢崎壱岐守・田中冶部大夫・木戸小太郎・和田玄蕃・吉田重政

中央の本陣に、六角義治・後藤賢豊


「浅井軍は、公称8千と謳っておりますが、そんなに軍が動かせたか不明です、およそ5千かと」

「先陣に、赤尾清綱・ 阿閉貞征・百々内蔵助・三田村国定・野村直隆2千」

「後陣は、海北綱親・上坂正信・今村掃部助・安養寺氏秀・弓削家澄・2千」

「本陣には、浅井賢政・赤尾清綱・雨森弥左衛門秋貞他、旗本衆1千あまり」

忍びから次々情報が入ってくる、浅井勢の行動は丸裸だ。




 浅井の軍勢はゆっくり進み、先ずは宇曾川北岸を目指す。

もちろん俺の指示だ。

いきなり襲われたらかなりキツイ、大丈夫だとは思うが、用心するに越したことはない。


「水攻めをしているように見えますが……」


 物見の報告では、義治は肥田城を水攻めにしているらしい。

なるほど史実の通りとはいえ、イヤな作戦だ。

城を蹂躙するにはあり余る兵力だし、水攻めにする必要などさらさらあるまい。

”城の周りをワザと水でぬかるませ、いざという時には、こちらと連携出来ないようにしている”

と思って良いのだろうか。




 城を取り囲む六角家の本陣では、諸将が軍議を開いていた。

というか、大将不在のために、世間話に花が咲いていた。

圧倒的な兵力だ、まあ仕方あるまい。


 六角義治(四郎)は、着陣するやすぐさま諸将に水攻めを命じた。

『肥田城を包囲するのみならず、水攻めをもつて(浅井と分断させ)攻めるのじゃ!』


 六角の諸将もこれには驚いた。

何故、そのような事をする必要があるのか?理解出来なかつた。

六角軍が浅井を誘っているのであれば、まあ意味があるが、浅井家は味方である。

承貞様より、「浅井を刺激するな」と言われているにも関らず、困ったものだ。


「高野瀬殿は、いつまで持ち堪えますかのう?」


 実際、”賢政は巻き込まれているだけ”という認識が、重臣たちには根強かった。


「四郎殿に目のかたきにされるとは、賢政殿もお気の毒だ」

「だいたい、あの高野瀬殿が謀反という事自体、いささか無理がありもうす」

「酒の上での戯れ言で済ませられぬというのが、義治殿の器であろうな」

「いやはや、賢政殿とは大違いじゃ」

「あれ(席次の件)には正直、肝が冷えたわ」

「大殿であればかような事はせぬものを、…あの席次で良く辛抱されたわ」

「左様、いらぬ争いの元にしかならんわ」

「とりあえず、双方の顔が立つよう。ひと戦せねばなりますまい」


「「「「堪らんですなあ~」」」」


 そこへ、六角側の斥候が物見から帰ってきた。

「待ちかねたわ」

「早う報告せい!!」

「先陣、赤尾清綱殿、浅井着陣の報告の為こちらに向かっております」


「は~、やれやれ」

「とりあえず一安心じゃわい」

「賢政殿と戦など御免じゃからな」

「左様左様」

「商売あがったりじゃ」

「まったくです、近江が一つになってこそですな」


― 重臣達が、ホッとひと息入れている頃 ―


 義治は苛ついていた。

じたんだを踏んで、辺りをうろつく姿は落ち着きがない。

その姿はまるで、檻に入れられた臆病な熊のようだ。


(なぜ、敵対せぬ?予定が狂ったではないか!!)

「今井の奴、やつらを上手く誘き出(おびきだ)せたであろうか?」



『ありえたはずのプロローグ』と対比させながらお楽しみください。

次回は、あの人が活躍いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ