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異世界召喚だと!? ならば、俺は異世界召喚をする!

作者: 榊坂さかき

 


 気が付いた時には、オレの周りを黒いローブの集団がずらりと囲んでいた。


 なんだこれは!? さっきまで食っていたカツ丼定食はどこにいった!?


 黒ローブたちの長らしき人が前に歩み出てオレに頭を下げる。


 「勇者様、どうか私たちの世界をお救いください」


 オレは直前まで箸でつまんでいたカツの切れ端を食べながら考えた。


 これは異世界召喚だな、と。




 ーーーーーー




 「つまり魔王を倒して欲しいというわけだな」


 「はい、さようでございます。理解が早くて助かります」


 黒ローブの長は感心したようにうなずいていた。理解が早いのは当たり前だろう。異世界召喚なんて日本ではメジャーな出来事だ。たぶん。


 「オレはどこに行けばいいんだ? 魔王はどこにいるの?」


 「この国の南に魔族領がございます。その中心地に根城がございまして……」


 「ところで思ったんだが、オレ一人なのか?」


 「あ、はい。勇者様は一人で旅をしていただくことになるかと」


 それは珍しいタイプだ、と思った。最低でも案内役の一人でも付けてくれるかと思ったが。


 「複数人いたほうが効率いいと思うけど、何か理由あるの?」


 「ええ、勇者様の速度に皆が合わせていくことができないかと」


 「……なんだ、それ、オレ一体なんなの?」


 「それは、勇者ですから、勇者として呼ばれた者は凄まじい身体能力を持っていらっしゃいます」


 「チート的身体能力か、なるほどなあ、でも一人だと不安あるしなあ」


 「もし、どうしてもと申すのであれば、大魔道士たる私が一緒に……」


 「あ、そうだ。こうすればいいじゃん」


 「……何か名案が浮かびましたか?」


 「もう一人勇者を召喚すればいいじゃん」


 「……はい?」


 「だから、もう一人勇者を召喚すればいいじゃん」


 「………………はい?」




 ーーーーーー




 結果として勇者の召喚は可能だった。問題点はとてつもない魔力を持った契約者が必要というこの一点だけで、勇者としてのチート魔力を持つオレが契約者をやれば何も問題は無かった。


 勇者による勇者の召喚が成功したことによって「これって無限増殖コンボだ」ということに気付いたオレ達は、勇者の大量生産を始める。一人につき一回しか召喚できないが、召喚した勇者→次の勇者召喚を繰り返して勇者の数は500人を簡単に越えた。


 「まだまだいけるぜ!」ということで増やし続けた結果、1000人を越えたところで魔王のほうから土下座しに現れた。


 「ほんっと調子に乗ってすみませんでしたー!」


 「「「「えー!? まだ冒険もなにもしてないのにもう終わりー!?」」」」


 何人かの勇者はそんなことを叫んでいた。その気持ちは、まあ、わからんでもない。


 「ほんともう勘弁して下さい。いくらなんでも1000人とか無茶です」


 ……まあ、その気持ちもわからんでもない。しかし、せっかく異世界にチート能力を持って召喚されたんだ、何か歴史に残るようなことをしたいという気持ちはオレにもある。


 「そうだな、じゃあ、勇者で天下統一でもするか」


 「え? あの、どういうことです?」


 「ああ、大魔道士さん。オレ達はこれから、この腐った世の中を正すため、正義のために世界統一を果たす」


 「……えーと、それって、私達の国も乗っ取るってことですか?」


 「必要とあらば」


 「……わっふう」


 こうしてオレは後に魔王を越えた大魔王として、世界の歴史にその名を刻むことになった。




 ーーおまけーー



 「ま、魔王がやってきたぞー!」


 その叫び声を聞いてオレは急いで外に出た。


 そこには一目で魔王とわかるほど邪悪な威圧感を放つ存在が南の空に浮いていた。




 「馬鹿な!? もう、魔王が現れただと!?」オレは突如現れた魔王の姿に絶望を覚えた。


 「あらあら、魔王っていうのは随分せっかちな男だねえ」といいつつ、オレの隣で気の強そうな女勇者が聖剣を抜き放った。


 「さすがにこれは予想外でした。私の魔法が通じればよいのですが……」といいつつ、知的な勇者が偉大な魔導書を携え、オレの後を追って来ていた。


 「スタンバイ、オーケー。いつでも出撃できるよっ!」といいながら、巨大な魔道ロボットに乗った無邪気な女勇者が空を飛んで現れた。


 「眠りし者よ。今こそ我との盟約を果たせ」といいながら、深遠の雰囲気を持つ勇者がアストラルゲートを開き、中から異形の怪物を呼びだした。


 「ハッ? なんだこの騒ぎは? 魔王だって? ……しかたねえ、今回は俺もマジだぜ」といいつつ、いつもはふざけている勇者が、この時ばかりは真剣な表情で腰のダガーを引き抜いた。


 「射程内に入ったら狙撃する。アイツの意識をこちらから逸らしてくれ」といいつつ、優男の勇者が塔の上からスナイパーライフルの標準を合わせた。


 「おお神よ、どうか我らを守りたまえ……」と祈りつつ、神官姿の女勇者が手に持つ神噐とのシンクロを深め、神殿を構築しようとしていた。


 「魔王……そう……殺せばいいの……?」といいながら、小さな身体に似合わない禍々しい大鎌を肩にかけ、無表情で少女勇者は歩いてきた。


 「挟撃の形を取ればよい。吾輩の『聖戦』で魔王の背後を討つ」といいながら魔王の背後で、王者の覇気を纏った老勇者が光の軍勢を従えていた。


 「予定集束率50%にも満たないか。準備不足感は否めないが……やるしかねえ」と呟きながら、ゴーグルをかけた勇者が第三霊界の魔素をかき集めて撃つ、戦略級魔法陣を空中に展開していた。


 「私の未来視によると……なんてこと!? ダメよ! 攻撃しちゃ!」といいながら、エルフの女勇者は土下座する魔王に集中砲火が向かないように、戦いを止めに走った。


 「ぼぼ僕だって勇者だ。お前なんて怖くないぞ!」といいながら、足の震える自分を鼓舞しながら『真の騎士のみが持てる槍』を構えて少年勇者は魔王と対峙していた。


 「もー、みんな私がいないとダメダメなのに勝手なことをしてー! ……アンス・エル・メダロ・カエラ――」と呪文を唱えながら、ほうきに跨った魔女勇者が飛んできた。


 「あら、魔王って良い男じゃなーい」といいながら筋骨隆々としたオカマ勇者が魔王の尻に狙いを定めた。


 「ほんっと調子に乗ってすみませんでしたー!」と叫びながら、1000人の勇者に囲まれた魔王は頭を深く地面にこすり付け、土下座をした。



 

「べ、別に私が勇者だからって来てあげたわけじゃないんだからねッ! って、どうして誰もいないのよー!?」といいつつ、ツンデレ娘ツインテール勇者は盛大にタイミングを外していた。


レベル1

1000人くれば

レベル1000 by魔王(心の俳句)


後半のおまけについて:ようつべの『2ch「バカな・・・早すぎる・・・」のレスが面白い件について』という動画を見れば元ネタがあることがわかると思います。ただ、著作権ってこの場合どうなるんだろう? ということで少し調べたら「商売しなければ大丈夫」らしいのでたぶん大丈夫です。まあ、大きな問題になったら消そうと思いますが…(たぶん大きな問題にはならないだろう←)


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