ダウト。
トランプゲームのダウトをご存知で無い方は、こちらをお読みになってから読んでくださった方がわかりやすいと思われます。
~ダウトの遊び方~
プレイヤーに均等にカードを配り、プレイ順を決めた後、プレイヤーは A, 2, 3, 4, ..., 10, J, Q, Kの順で、自分の番に対応したカードを裏向きで場に出す。手札をなくしたプレイヤーの勝ちとなる。
カードを出す際に、自分の番に対応したカードをあえて出す必要はなく、これが名称の由来である。他のプレイヤーは、出したカードが対応していないと思ったら「ダウト」コールをかける。かけられた場合は出したカードを表向きにし、対応したカードだった場合はコールしたプレイヤーが、そうでない場合はカードを出したプレイヤーが、場に出ているカードを全て引き取る。
パスは一切なし。
ゼロサムゲームなので理論上はいつまでも続けることができ、「終わらないゲーム」の代名詞として使われることがある。特に、3人以下でするとなかなか終わらないため、ダウトをして実際に正しくない場合、相手が自分の手札から2枚引き、正しい場合は自分が相手の手札から2枚引くという方法を使う場合がある。
(wikiより引用)
私の家の近所で歳が近い奴はアイツぐらいしかいなかったから、ちっちゃい頃はよく一緒にトランプばっかりしてた。ちっちゃい頃と言っても、確か小学5年生ぐらいまでだったけど。
よく考えると変な話だ。小5まで女の子とふたりっきりでトランプしちゃえる男子って、どんなだよ。チャリでもとばして、同級生の男子とサッカーやらゲームやらすることはいくらでも可能だったのに。それとも私が知らないところでやってたのだろうか。
まあ、結局は小6になってから流石に誘われなくなり、それからの自然消滅の早さといったら凄まじいものだった。フェードアウトなんてもんじゃなく、線香花火のごとく一瞬にして終わった。その後、アイツと一切トランプをしていない。
もう、あれから5年が経つ。
偶然同じ高校に入ったため、アイツの姿はたまに見かける。もはや小学校時代の面影はどこにもない。以前は私の方が背が高かったのに、今では多分15cmぐらい抜かれている。
そして、多分ヤツはかっこ良くなってる。
相変わらずふっわふわの髪は、以前ではクセのある天然パーマにしか見えなかったけど、今ではそれがとても似合っている。そして無邪気な性格ときたら、女子が騒ぐのも理解できなくはない。
アイツと幼馴染だと言うと、大抵の女子がほいほい喰いついてきた。どんな人なの、好きな人いるのかな、とか。
知るか、そんなの5年も疎遠じゃわかるはずないでしょ。
うんざりしつつも、適当に流す。それの繰り返しばかりやっている自分に何故か苛ついた。
「あのさ、ウチ…。やっぱり日野くんに告白しようと思うんだけどね…ユリ、手伝ってくんない?」
上目遣いで眉を下げながらこれでもかと甘えてくる友人の唯に、とうとう聞きたくなかった言葉を言われてしまった。
嫌だ、断りたい。面倒臭い。でも私には断る理由がない。
「善処します…」
私はつくづく意思の弱い人間だ。
家に帰ってきたところを狙おう。ていうか、その時ぐらいしか私にとってヤツと話せるタイミングが無い。
私と日野の家はお向かいである。だから、自宅の前あたりで待機しておけばまずそのうち必ず会えるはずだ。
そうこうしているうちに、日野が歩いてきたのが見えた。妙に緊張しながら私は日野の方へ近づいていく。話すのは多分中学以来だ。
「日野、あのさー」
もしかしたら苗字で呼ぶのはこれが初めてかもしれない。
日野は、私のことに気づくとあからさまに変な顔をした。
「…なに?」
声が低い。中学の時よりさらに低くなっている。日野ではない人と話しているみたいで、不思議と寂しくなった。
「単刀直入に聞くけど、今好きな人っている?」
我ながら本当に単刀直入過ぎておかしかった。でも、とっとと終わして帰ってしまいたいので仕方がない。
「…いないけど」
へー、そうなのか。良かったね唯。まず、これだけでもかなり喜んでくれるのでは。
「お前は?」
「え、」
「いるの、好きな人」
まさか自分も聞かれると思わなかった。なんで聞くんだそんなこと。
「いないよ」
「…ふーん」
顔が熱い。きっと赤くなってると思う。馬鹿みたいだ、こんなこと聞かれただけで赤くなってどうする。
「それで本題に入るけど、吉田唯って子知ってる?4組の」
顔を見られたくなかったため、うつむきながら早口で喋る。
日野はしばらく何か思い出そうと黙ったあと、
「なんとなくは、知ってると思う」
と、自信なさげにつぶやいた。
「わかった。ありがとうございました」
頭をペコっと下げて、足早にその場を立ち去る。日野の顔はほとんど見れなかった。私はどうやら自分が思っていたよりずっとヘタレだったらしい。
家に帰ってから突然、日野とやったトランプのことを思い出した。
やっぱりふたりっきりではできるゲームに限りがあって、主によくやるのがスピード、ページワン、神経衰弱。時間に余裕がある日はよくダウトをした。
ダウトは日野がやたらと強かった。対応していないカードを置いたのを見破るのが怖いぐらい上手いのだ。その時日野はいつも「ダウト」と普段より低く落ち着いた声で静かにコールする。その時だけはどきっとするぐらいかっこ良かったのを覚えてる。しかし、ダウト成功だった場合、その後したりとばかりに喜々として無邪気に笑ってしまうから、せっかくクールに見えたのが台無しになるのだった。
ふたりでやるダウトはなかなか終わらない。でも私はその時間がすごく好きで、いつまでもこのまま終わらずにずっと続けばいいのにといっつも思ってた。
それでも、お年頃というのは哀しい。ずっと純粋無垢なままではいられない。やっぱりいつかは終わらせるものなんだろう、こういうのは。
「好きな人いないってよ。あと唯のこと知ってるって」
その日の夜、電話で唯に報告した。受話器の向こうから甲高い黄色い声が聞こえて、耳が少し痛い。
まあ、あとは頑張って。
私はなんか、もう疲れたよ。
唯は翌日、日野に告白したらしい。
そしてそれを、日野は受け入れたらしい。
大事だったものを、取られてしまったような気がした。
胸の中いっぱいに今まで感じたことがないような不快感が広がる。
気持ち悪い。
なんで。気のせいでしょ、絶対。
だって、今までなんとも思ってなかったのに、なんで今頃こんな気持ちになるの?
気のせいってことにしよう。
それでも、さっきから無邪気に笑ってる日野の顔ばっかり思い出すのは何故だろう。
私はもう5年も疎遠だったんだから、遠くなって当然だ。確かに以前まで私は、日野にとって他より少し特別な存在だったかもしれない。でも、昔のことを掘り出したって、今更戻れるはずがないのだ。
いい加減、全部忘れてしまえ。
本調子に戻るのに約一週間かかった。もう唯のノロケにもスルーできる。順応性だけが私の取り柄だ。
季節はもうすぐ秋だ。蝉の鳴き声もすっかり少なくなっている。涼しげな風に背中を押されながら、私は家に向かって歩いていた。
その時だ。数メートル先に、日野が姿が見えた。
私は思わず目を見開いて、歩幅を小さくして躊躇した。
なんでこんな時に限って会ってしまうの。
日野は、立ち止まってメールをしているようだ。それまでに通り過ぎられるだろうか。
まるで競歩の選手かってぐらいに全速力で歩く。頼むからずっとメールしててと願いながら、もうすぐで日野のそばを通り過ぎれそうな時、日野はケータイを折りたたんだ。
ついてなさすぎる。
「よお」
日野とバッチリと目が合い、もう逃げようがなくなってしまった。
「どうも」
早々に退こうと思い、適当に交わして帰ろうとした。
「間宮って吉田と仲いいんでしょ」
「…うん」
多分ね。1番聞かれたくない話題が早速出されて、また私はうちのめされる。
「家とかわかる?」
そうきたか。
「まだ行ったことないからわかんない」
「そっか」
苛つく。もうその事に関して私を使うな。勝手にふたりで仲良くしてろよ。
「さっきのメールも唯あて?」
「まあ、はい」
日野が悪戯っぽく笑った。もうお前爆発しろ。
でもそうきたなら、私も意地の悪い自分が出てきた。もう自分でも止められそうにない。
「良かったね、告られて」
こんなの嘘だ、微塵も思ったことない。
「唯って本当いい子だから大切にしてあげてよ」
これも嘘だ。もういっそあのあつかましさを説教してやってほしい。そんで喧嘩とかなって別れてくれたって構わない。
「末長くお幸せに」
そう言ったあと、なんともいえない喪失感に襲われた。心の奥底でうまくいかなきゃいいのにと願ってる最低な自分がいて、しばらくは消えそうにないというのに、なんでこんな嘘ばかりついてるんだろう。でもここで、素直な気持ちをぶつけられるはずもない。そんな醜い姿は見せられない。
「…本当にそう思ってんの?」
日野が急に真面目な顔をして言った。怒っているように見えなくもない表情だ。
日野は多分、気づいてくれたんだ。
嬉しさとともに、寂しさがこぼれる。
思ってないよ、全然。私がそんなこと思うわけないでしょ。
でも、それを言う権利が今の私にはないんだ。
「思ってるよ…」
私はまたうつむいた。うしろめたくて日野の顔を見れないし、私の顔も見られたくなかった。
その時突然、日野のケータイから着信音らしき音が鳴った。きっと、唯の返信だ。
「それじゃっ」
思わずその場から走り出した。もう、なんかいろいろ苦しくなってどっかに逃げたくなった。
現実はどうしてこうも上手くいかない。そもそも自分にはなんの意欲も目的も無いから、嫌だと感じることから逃げるばっかりで、なんの進歩もしていない。置いていかれて当たり前じゃないか。
「バーカ…」
走るのをやめて、息も絶え絶えにつぶやく。目の奥が熱くて、視界が潤んだ。夕日で伸びた自分の影までがそのせいで光り出す。
ダウト。
日野のあの声を不意に思い出す。
私の心を見透かしてぽつりとつぶやくあの言葉が、いつまでも胸に余韻を残して消えなかった。
end.
3日前ぐらいにこの話をふと思いついてしまい、一気にガーッと書いてしまいましたw
しかし、書いてるうちに
ラストが3日前と全然違ってしまい、
悔いが残る話となっています…w
一体どこで間違ったんだろう。。
また、設定も曖昧だし、主人公何気に
ひどいやつだし、そしてなにより作者が
ダウトやったことないという←
ぐだぐだな感じです。
(必死にwikiを読みあさりましたw)
なんかごめんなさい!
ここまで読んでくださった方、
本当にありがとうございましたm(_ _)m
もし、よろしかったら
サイトの方もご覧ください!