内包
叫びたくなった。正確にいえば泣きたくなった。
だから誰にも聞こえない慟哭を、世界中に響き渡らせたくなった。実行できないその衝動は、思い切り殴り飛ばした破壊音になって現実に現れた。
けれど、流れるのは涙じゃなくて赤い鮮血。
痛みが強くなるとともに、その感情は掻き消されるように混濁する。透き通って消えてしまえば良かったのに、ただ輪郭がぼやけただけで、汚い残滓がいつまでも胸を詰める。
この気持ちをなんと呼ぼう。
名前なんて重要じゃない。
この気持ちをどう表そう。
抱いたままにはできそうになくて。
生暖かい血を舐めたら鉄の味に吐き気がした。
散らばった硝子はキラキラと輝いて
ただのガラクタよりよっぽど美しい。
白いタオルを自分の色に染めあげて
やっと体内に流れていたものを知るんだ。
変わらないはずなのに
いつもそこにあるのに
痛みを伴わないと確認することができない。
確認する必要もない
ただそこに脈脈とあるものを
わざわざ知らないといけない現状が
僕をいつも動かしている。
それを幸だ不幸だと論じるのはくだらない
と、僕はいつも先延ばしにして
創ることを拒否していく。
そこにあることを受け止めて
これからを描くことの苦しさを
僕の体内は知らぬふりして巡るけど、
それをいつか抱きしめなくちゃいけないときが
きてることを僕は知ってる。
気づかないふりを続けているけど
拒否する僕はいつまでも変わらない。
それが続くことが幸せでないことも
僕は知ってるはずなのに。
必ず変わらない真実と
僕が持ってる未来の意味を
掴まないのは
馬鹿げているよ。
だからこの気持ちを巡る血にのせて
すべての細胞に叩き込んで
創るのは自分自身だと
そっと身体に刻みつけて
鉄の味にも笑えるように
今の意味を知るんだ。