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僕は相方と出合った

この小説はフィクションです。

「異端児」

世間から、友達から、兄弟から、親から。

周囲という周囲のありとあらゆる人物からそう罵られて育った僕が、半ば強制的に連れて来られたのがこの学校だった。

「何故」「誰に」「どの様にして」連れて来られたのかは全くわからない。

このときの僕と言ったらもう、快晴の空を恨めしく感じてしまうほど、人を信じていなかったからだろうか。

鏡にうつる、自分ですら信じられず。

自分が異端児と呼ばれる理由は、主だって二つあった。

朱と青の瞳(オッドアイ)と、常識離れする身体能力。

相反するその二つの色を自分の瞳の色に共有するという人物は、自身の家系はおろか、何処をさがしても見つからなかった。

また、自分の力を制御できないほどに力が有り余り、たくさんの物を、人を、壊してしまった。

動けばなにか壊してしまう。動かなければ力は有り余るばかり。

何を信じたらいいか、どうすれば良いか、何もわからくなったときに此処へ来た。


だだっ広いエントランスの一角のソファ、さほど多くはない荷物を傍に、僕は誰かを待っていた。

誰の姿も見えなかったが、人気はあった。

暫くして、靴の音を鳴らしながら一人の男性と、それに続く一人の少年が現れた。

「やあ、君が雪咲蒼貴(ゆきざきそうき)君だね?」

「…はぁ」

白衣をまとうその男性は、何がおかしいのか笑みを浮かべて僕に名前を問うた。

何を信じていいかわからないけれど、何だか疑うのも面倒くさくなって相槌を打った。

その返答を聞いた途端、その男性の後ろから少年がひょこりと顔を出す。

「こいつが『ソウキ』なのか?先生!」

「そうだよ、君のバディだ」

「ソウキ!よろしくな!」

「…は?」

話についていけず、困惑してしまう。

「先生」と呼ばれた白衣の男性は僕の前のソファに腰掛け、何枚かの紙を差し出した。

受け取りつつ内容にざっと目を通す。

「全寮制 創武学院」「規約」「校則」「本校の仕組み」…

細かい字で、びっしりと書かれたその内容。学院?校則?意味がわからなかった。

僕が紙から目を逸らしたことを確認したのか、目の前にいる「先生」は話し出した。

「此処は創武学院(そうぶがくいん)、全寮制の学校だ。学校といっても君の通っていた学校とは少し違うかもしれないね」

「学校ならやめたんですけど」

「だから此処へ来た、だろう?」

「…わかりません」

「まぁ良いだろう。ごく簡単に、だけれどこの学校のことを説明しようか」

「……。」

返答ができなかったのも気にせず、「先生」は続けた。

「この学校はこの銀河系を守る人材を育てる為に作られた養育施設だ」

「…は?」

「君たちは今後一切の生活や人権がこの学校によって保障される。だがその対価に君たちはこの学校に尽くし、従わなければならない」

「ちょっと待ってください、なんですかそれ」

「此処では君の常識が通らないかもしれない。が、学校側から不必要とされた場合は脱落だ」

「脱落?」

先ほど渡された紙を見る。

【「脱落」学校側がある生徒はこの銀河系を守るだけの人材に成長できないと判断した際、その生徒の戸籍をこの学院から抹消し、生徒は処分を受ける。尚、生徒は学校側により選出された者だけがこの学校に入学することができ、本人・家族の了承を得るものとする。】

「僕、了承なんてした覚えが無いんですけど」

「此処にいると言うことは、了承を受けたということだ。記憶が飛んでいるのかもね」

力がないものは処罰を受ける。が、そんなリスクを負ってまでこの学校への入学希望をする者は、現在の状況から逃げ出したいと願う者ばかりだった。自分も、またその一人だったのかもしれない。

「脱落した者がどうなるかは、我々一般の教師ですらわからない。知るのは教師の上層部だけだ」

「…個人に差はあるもんでしょう。理不尽じゃないですか」

「だからこそ、バディ、パーティがある」

その単語は、聞いたことがあった。山登りや水泳なんかで、ペアを組んだりグループを組んだりして危険を回避するためのものということは、僕でも知っていた。

「バディ…」

「蒼貴くん、君のバディはこの子だよ」

「ソウキ!よろしく!俺、祐太!蓮瀬祐太(はすせゆうた)!」

「学校生活の詳しいことは、彼に教わるといいよ。どうせずっと一緒にいるバディだ。」

「ちょ…あの」

「君の属するパーティも紹介して貰うと良い。バディの次に時間を共有する人たちだからね」

話がいまいち理解できていないのに、どんどん話は進んでいく。

「祐太、では頼んだよ。今日、明日は学校も休みだから、生活に慣れるために使いなさい」

「はい、先生!」

蓮瀬祐太、と名乗る人物が元気に挨拶をしたのと同時に「先生」は立ち上がり、踵をかえして入ってきた透明すぎるガラスの自動ドアから出て行ってしまった。

「ちょっと…。えっと…蓮瀬、さん?」

「祐太!名前で呼んでよ、ソウキ」

「…祐太」

「うん!じゃ、行こう!」

「…え、何処へ」

状況は全くと言っていいほど理解できない。が、少年に腕を引かれて僕は立ち上がる。

これから展開される自分の未来に不安は残るけど、自分を恐れない少年に心が多少、動く。

少しばかり状況に身を任せてみようかと、僕は祐太にひかれるままに走り出した。

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